外貨建債券等の回収により取得した外貨を非貨幣性資産等へ再投資する場合
の会計処理

外貨建債券、外貨建預金及び外貨建貸付金等の外貨建貨幣性資産(外貨建債券等という)の決済時の換算替えや決済に伴って生じる為替差額は、原則として、当期の為替差損益に計上します。 (外貨建取引等会計処理基準一2(1)(b)・一2(2)・一3
外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書二1(1))
ただし、外貨建金銭債権等を、それにより将来得られる外貨額を円転せずに有形固定資産等の非貨幣性資産の取得に再投資する目的で保有している場合で、下記の2点の要件をどちらも満たす場合は、換算差額を繰り延べて非貨幣性資産の取得価額に加減することができます。
【換算差額を繰り延べのための要件】
※下記の①②どちらも満たしていなければ
 ならない

① 外貨建債券等の取得当初から再投資が計画
 されていることが正式な文書により明確に
 なっている

② 同一通貨同士の取引である
上記の要件を満たさない場合は、外貨建債券等を一旦円転して、その円資金で外貨額の非貨幣性資産等を取得したものとみなされます。

そのため、外貨建債券等の決算時・決済時等に発生する換算差額は、発生した期の為替差損益として計上します。
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第24・67項
外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書二1(2))
下記では、外貨建債券等の回収により取得した外貨を非貨幣性資産等へ再投資する場合の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。(参考:外貨建取引等の会計処理に関する実務指針設例10)
前提条件
A社は下記の条件でB社社債及び土地Xの取引を行った

・X1年4月1日にB社社債10,000USDを購入した
・X1年4月1日のUSDの為替相場は1USD@100円であった
・B社社債の満期日はX2年1月31日である
・B社社債は取得当初より、償還額により土地X
 (販売価格10,000USD)を取得する目的で取得しており、
 
 その旨が取締役会議事録に記録されている
・X2年1月31日にB社社債が全額償還され、外貨建預金と
 した
・X2年1月31日のUSDの為替相場は1USD@105円であった
・X2年3月31日のUSDの為替相場は1USD@110円であった
・X2年5月31日に土地Xを10,000USDで購入し、保有して
 いた外貨建預金で支払った
・X2年5月31日のUSDの為替相場は1USD@103円であった
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(B社社債取得時)
借方 貸方
満期保有目的債権 1,000千円※1 現金預金 1,000千円※1
※1B社社債外貨建取得価額10,000USD
  ×取得時為替相場@100円/USD
B社社債を取得時の為替相場で換算して、資産計上します。
② X2年1月31日(B社社債満期日)
借方 貸方
現金預金 1,050千円※2 満期保有目的債権 1,000千円※1
繰延ヘッジ損益 50千円※3
※1B社社債円建帳簿価額
※2B社社債外貨建償還価格10,000USD
  ×償還時為替相場@105円/USD
※3貸借差額
B社社債の償還額を、償還時の為替相場で現金預金に振替えます。B社社債の取得時と決済時の為替相場変動の影響額が、貸借差額として生じますが、この金額は、繰延ヘッジ損益に計上し、予定している土地Xの購入時迄繰延ます。
③ X2年3月31日(決算日)
借方 貸方
現金預金 50千円※4 繰延ヘッジ損益 50千円※4
※4外貨建預金円建帳簿価額1,050千円
  -外貨建帳簿価額10,000USD
  ×決算時為替相場@110円/USD
保有している外貨建預金を決算時の為替相場で換算替えし、為替差額は繰延ヘッジ損益に計上し、予定している土地Xの購入時迄繰延ます。
④ X2年5月31日(土地X購入時)
借方 貸方
繰延ヘッジ損益 70千円※5
土地 1,030千円※7
繰延ヘッジ損益 30千円※8
現金預金 70千円※5
現金預金 1,030千円※6
土地 30千円※8
※5外貨建預金円建帳簿価額1,100千円
  -外貨建帳簿価額10,000USD
  ×購入時為替相場@103円/USD
※6外貨建預金外貨建帳簿価額10,000USD
  ×購入時為替相場@103円/USD
※7土地X外貨建取得価額10,000USD
  ×購入時為替相場@103円/USD
※8繰延ヘッジ損益累計額
保有している外貨建預金を取引時の為替相場で換算替えし、換算差額は繰延ヘッジ損益に計上します。
換算替えした外貨建預金を土地の支払い対価としてマイナスし、相手勘定で土地を取得時の為替相場で資産計上します。
最後に、これまで計上してきた繰延ヘッジ損益の残高を土地の取得価額に加減して調整します。
次のページでは、外貨建輸出取引(外貨建売上高&外貨建売上債権)の会計処理について具体的にご紹介します。