介護保険の解約又は終了時の会計処理

【介護保険の解約又は終了時の会計処理】

■法人が解約返戻金を受取った時
 
前払保険料や配当積立金等の資産計上額を取崩し、解約返戻金受取額との差額を雑収入に計上

 【仕訳イメージ】
 (現金預金)XXX (配当積立金)XXX
         (前払保険料)XXX
         (雑収入)XXX
 
■法人が受取った解約返戻金を被保険者に支払った時
 
支払額は被保険者の役員報酬又は給与・賞与等として費用
 
※役員の場合は損金不算入になる可能性有

 【仕訳イメージ】
 (給与)XXX (現金預金)XXX
保険事故が発生する前に被保険者が死亡した場合、介護保険は終了し、解約返戻金が支払われます。

また、途中解約した場合も、同様に、解約返戻金が支払われます。

解約返戻金は契約者に支払われるため、法人が自己の役員又は使用人を被保険者として介護保険を契約していた場合、解約返戻金は法人が受取ります。

受取の際には、前払保険料や配当積立金等、解約した契約に関して計上している資産を取り崩します。

そして、解約返戻金との差額を、雑損益として計上します。
法人が受取った解約返戻金を、被保険者である役員使用人等に支払う場合は、その支払額は被保険者の役員報酬又は給与・賞与等となり、給与課税の対象となります。

保険金の受取人が被保険者である役員・使用人の遺族である介護保険で、被保険者が役員または部課長その他特定の使用人の場合は、普遍的加入の要件を満たさないため、支払保険料の計上に際して、すでにその保険料は、被保険者の役員報酬又は給与となり、給与課税の対象となっていますが、法人からの解約返戻金相当額の受取を行う際にも、再び給与課税されます。

しかしながら、保険料を支払った際に給与課税されておきながら、解約返戻金を受取った際にも給与課税されてしまうため、実務的には問題があるのではないかといわれています。
【参考文献】
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第5章7Q&A48』一般財団法人大蔵財務協会
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第4章3⃣』税務研究会出版局
下記では、支払保険料が給与課税された介護保険の解約時の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第5章7Q&A48』一般財団法人大蔵財務協会
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第4章3⃣』税務研究会出版局
前提条件
A社は役員のみを対象に介護保険を契約している。
・保険金の受取人は役員の遺族である
・令和2年3月31日に保険契約を解約して10,000千円の
 解約返戻金を受取った
・令和2年3月31日時点で、配当金積立金を400千円資産計上
 してる
・受取った解約返戻金は、全額、令和2年3月31日に被保険者
 である役員に支払った
①令和2年3月31日(解約返戻金受取)
借方 貸方
現金預金 10,000千円※1 配当金積立金 400千円※2
雑収入 9,600千円※3
※1解約返戻金受取額
※2配当金積立金残高
※3貸借差額
配当金積立金残高を取崩し、解約返戻金受取額との差額を、雑収入として計上します。
②令和2年3月31日(役員への支払時)
借方 貸方
給与 10,000千円※4 現金預金 10,000千円※4
※4被保険者への支払額
被保険者である役員に支払った解約返戻金額を、給与として費用計上します。
次のページでは、介護保険に関連する会計基準を一覧でご紹介します。