定期保険の名義を法人から個人へで変更する場合の会計処理
【法人から個人への定期保険名義変更の会計処理】
変更時点の評価額を退職金等で費用計上し、保険料の資産計上額等との差額を、変更日の属する事業年度の益金又は損金の額に算入。
■仕訳イメージ
(退職金)XXX (前払保険料)XXX
(雑損失)XXX (配当積立金)XXX
変更時点の評価額を退職金等で費用計上し、保険料の資産計上額等との差額を、変更日の属する事業年度の益金又は損金の額に算入。
■仕訳イメージ
(退職金)XXX (前払保険料)XXX
(雑損失)XXX (配当積立金)XXX
法人が従業員を被保険者として契約している定期保険について、従業員の退職時などに、契約者名義を被保険者である従業員に変更するケースがあります。
このような場合、名義変更時の評価額を退職金等で費用計上し、相手勘定で資産計上している前払保険料や配当積立金を取崩します。
両者の差額は、変更時の雑収入、又は、雑損失に計上します。
このような場合、名義変更時の評価額を退職金等で費用計上し、相手勘定で資産計上している前払保険料や配当積立金を取崩します。
両者の差額は、変更時の雑収入、又は、雑損失に計上します。
【定期保険の名義変更時の評価額】
原則/例外 | 評価額 |
---|---|
原則 |
変更時解約返戻金額 |
例外1:低解約返戻金型保険 (下記の条件を全て満たすケース) ①変更時解約返戻金額 <資産計上額×70% ②令和3年7月1日以降の変更 ③法人税法基本通達9-3-5の2 の適用対象 |
変更時資産計上額 |
例外2:復旧可能な払済保険 (下記の条件を全て満たすケース) ①復旧することのできる 払済保険 ②令和3年7月1日以降の変更 ③元の契約が法人税法基本 通達9-3-5の2の適用対象 |
変更時資産計上額+法人税基本通達9-3-7の2による損金算入額(払済保険への変更時の雑損失計上額) |
名義変更時の評価額は、原則として、その変更する際の解約返戻金の額により評価することとされています。
ただし、定期保険及び第三分野保険については、例外的な評価額を用いなければならないケースが2つ存在します。
ただし、定期保険及び第三分野保険については、例外的な評価額を用いなければならないケースが2つ存在します。
例外の一つ目は、低解約返戻金型保険であるケースです。
低解約返戻金型保険とは、解約返戻金の額が著しく低いと認められる期間(低解約返戻期間)が設けられている保険契約です。
このような保険は、低解約返戻期間終了の前後では、一回の保険料支払で返戻率が極端に上昇することがあります。
そのため、返戻率が極端に上昇する保険料支払の直前に変更を行うことで、不当に低い価額で保険契約を評価することができてしまいます。
そのような状況を防止するため、令和3年7月に所得税基本通達の改正が行われ、定期保険及び第三分野保険の内、法人税法基本通達9-3-5の2の適用対象となるもので、かつ、変更時の解約返戻金額が保険料の資産計上額の70%に相当する金額未満の場合には、解約返戻金額ではなく、変更時点の譲渡側の資産計上額で評価するとされています。
なお、この規定は改正後に実施した名義変更のみに適用されるため、令和3年7月1日以降の変更について適用され、それ以前の変更については、原則通り変更時の解約返戻金額で評価します。
低解約返戻金型保険とは、解約返戻金の額が著しく低いと認められる期間(低解約返戻期間)が設けられている保険契約です。
このような保険は、低解約返戻期間終了の前後では、一回の保険料支払で返戻率が極端に上昇することがあります。
そのため、返戻率が極端に上昇する保険料支払の直前に変更を行うことで、不当に低い価額で保険契約を評価することができてしまいます。
そのような状況を防止するため、令和3年7月に所得税基本通達の改正が行われ、定期保険及び第三分野保険の内、法人税法基本通達9-3-5の2の適用対象となるもので、かつ、変更時の解約返戻金額が保険料の資産計上額の70%に相当する金額未満の場合には、解約返戻金額ではなく、変更時点の譲渡側の資産計上額で評価するとされています。
なお、この規定は改正後に実施した名義変更のみに適用されるため、令和3年7月1日以降の変更について適用され、それ以前の変更については、原則通り変更時の解約返戻金額で評価します。
例外の二つ目は、復旧することのできる払済保険であるケースです。
一部の保険契約では、解約返戻金が低い段階で払済保険に変更し、その後保険料を支払うことで復旧することができます。
払済保険に変更する際には、資産計上額は解約返戻金相当額で評価されます。
そのため、このような契約の場合、名義変更前に払済保険に変更することで損失を計上し、不当に低い評価額で変更した後に、保険料を支払うことでもとの保険契約に復旧することができます。
そのような状況を防止するため、令和3年7月に所得税基本通達の改正が行われ、定期保険及び第三分野保険の内、復旧することのできる払済保険で、元の契約が法人税法基本通達9-3-5の2の適用対象となるものである場合には、解約返戻金額ではなく、変更時点の譲渡側の資産計上額に譲渡側が払済保険に変更した際に計上した損金算入額(法人税法基本通達9-3-7の2で規定)をプラスした金額で評価するとされています。
なお、この規定についても改正後に実施した名義変更のみに適用されるため、令和3年7月1日以降の変更について適用され、それ以前の変更については、原則通り変更時の解約返戻金額で評価します。
一部の保険契約では、解約返戻金が低い段階で払済保険に変更し、その後保険料を支払うことで復旧することができます。
払済保険に変更する際には、資産計上額は解約返戻金相当額で評価されます。
そのため、このような契約の場合、名義変更前に払済保険に変更することで損失を計上し、不当に低い評価額で変更した後に、保険料を支払うことでもとの保険契約に復旧することができます。
そのような状況を防止するため、令和3年7月に所得税基本通達の改正が行われ、定期保険及び第三分野保険の内、復旧することのできる払済保険で、元の契約が法人税法基本通達9-3-5の2の適用対象となるものである場合には、解約返戻金額ではなく、変更時点の譲渡側の資産計上額に譲渡側が払済保険に変更した際に計上した損金算入額(法人税法基本通達9-3-7の2で規定)をプラスした金額で評価するとされています。
なお、この規定についても改正後に実施した名義変更のみに適用されるため、令和3年7月1日以降の変更について適用され、それ以前の変更については、原則通り変更時の解約返戻金額で評価します。
下記では、定期保険の名義を法人から個人へで変更する場合の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。
【参考文献】
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章5⃣』税務研究会出版局
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章5⃣』税務研究会出版局
前提条件 |
---|
A社は全従業員を対象に定期保険(保険金受取人は法人)を契約しているが、従業員Xの退職に伴い、Xを被保険者とした定期保険契約の名義を、令和2年3月31日にX本人に変更した。
・変更時の前払保険料残高は1,200千円であった ・変更時の配当金積立金残高は200千円であった ・変更時の解約返戻金相当額は1,000千円であった ・この保険は平成23年3月31日より契約を開始している |
【譲渡側:A社の会計処理】
①令和2年3月31日(名義変更時)
①令和2年3月31日(名義変更時)
借方 | 貸方 |
---|---|
退職金 1,000千円※3
雑損失 400千円※4 |
前払保険料 1,200千円※1
配当金積立金 200千円※2 |
※1変更時前払保険料
※2変更時配当金積立金
※3変更時解約返戻金相当額
※4貸借差額
※2変更時配当金積立金
※3変更時解約返戻金相当額
※4貸借差額
変更時の解約返戻金相当額を退職金として計上し、相手勘定で前払保険料と配当金積立金を取り消し、両者の差額を雑損益に計上します。
次のページでは、定期保険の名義を個人から法人へ有償で変更する場合の会計処理について具体的にご紹介します。