上場株式の保有目的区分をその他有価証券から子会社株式及び関連会社株式に
変更する場合の会計処理
(部分純資産直入法で評価損が出ているケース)


【その他有価証券である上場株式の
  子会社株式及び関連会社株式への変更】

その他有価証券に区分している上場株式の追加により持分比率が20%以上となった場合、子会社株式及び関連会社株式へ振り替える。

振替時の会計処理は、採用しているその他有価証券の評価方法及び評価差額の状況により異なる。

≪振替時会計処理≫
①全部純資産直入法の場合
 振替額 :変更時帳簿価額※洗替処理後
 ※変更を期中に実施しても、期首にあった
  ものとみなして振替処理可

②部分純資産直入法で評価益の場合
 振替額 :変更時帳簿価額※洗替処理後
 ※変更を期中に実施しても、期首にあった
  ものとみなして振替処理可

③部分純資産直入法で評価損の場合
 振替額 :時価による評価後価額
 ※変更を期中に実施しても、期首にあった
  ものとみなして振替処理可
その他有価証券として保有していた株式の追加取得により、持分比率が20%以上になった場合は、子会社株式又は関連会社株式へ振替を行います。

その際には、基本的には、期首の洗替処理後の帳簿価額をもって、子会社株式又は関連会社株式を計上します。

ただし、その他有価証券の評価差額の会計処理として部分純資産直入法を採用しており、かつ、対象の有価証券について評価差損を計上している場合は、時価による評価後の価額で振替を行います。

変更を期中に実施しても、期首にあったものとみなして振替処理をすることができます。 【根拠資料】
金融商品会計に関する実務指針第80・81・88項・[設例8]
下記では、上場株式の保有目的区分をその他有価証券から子会社株式及び関連会社株式に変更する場合で、部分純資産直入法で評価損が出ているケースの会計処理について、具体例を使用してご紹介します。 【根拠資料】
金融商品会計に関する実務指針[設例8]
前提条件
A社は上場企業であるB社の株式について、下記の取引を行った。

・X1年3月31日時点において、B社株式10,000株(期末評価前
 帳簿価額5,000千円)をその他有価証券
 して保有している
・X1年3月31日時点のB社株式の一株当り帳簿価額は@450円
 であった
・X1年4月2日にB社株式5,000株を1株当り@450円で追加
 取得した
・X1年4月2日の取得により、B社株式の持分比率は21%と
 なった
・その他有価証券の評価差額の会計処理については、
 部分純資産直入法を適用している
・A社の決算日は3月31日

① X1年3月31日(決算日)
借方 貸方
有価証券評価損益 500千円※1 投資有価証券 500千円※1
※1B社株式帳簿価額5,000千円-B社株式期末保有数10,000株
  ×1株当り時価@450円
期末評価損が発生しているため、評価損を有価証券評価損益に計上し、相手勘定で投資有価証券を減額します。

② X1年4月1日(期首時)
借方 貸方
投資有価証券 500千円※1 有価証券評価損益 500千円※1
※1前期末評価損計上額
前期末の評価損計上仕訳の反対仕訳を計上し、洗替処理を行います。

③ X1年4月2日(追加取得時)
借方 貸方
関係会社株式 2,250千円※2
関係会社株式 4,500千円※4
有価証券評価損益 500千円※
現金預金 2,250千円※2
投資有価証券 5,000千円※3
※2B社株式追加取得数5,000株×1株当り取得価額@450円
※3その他有価証券として計上している
  B社株式振替時帳簿価額
※4前期末B社株式時価による評価後価額
※5前期末計上B社株式評価損
追加取得によりB株の持分比率は20%以上となり、関連会社に該当するため、追加取得した関連会社株式を『関係会社株式』として資産計上します。同時に、その他有価証券で保有していたB株を、前期末の時価評価額で『関係会社株式』へ振替え、期首に洗替処理してマイナスした有価証券評価損益を、再び損失として計上します。
次のページでは、上場株式の保有目的区分をその他有価証券から子会社株式及び関連会社株式に変更する場合で、部分純資産直入法で評価損が出ているケース以外の会計処理について具体的にご紹介します。