売買目的有価証券に分類される上場株式の期末評価の会計処理

【売買目的有価証券の期末評価】

BS価額:期末時価に評価替

評価差額:『有価証券評価損益』又は
     『有価証券運用損益』等の
     勘定科目で当期に損益計上
     ※切放法又は洗替法で会計処理
『売買目的有価証券』は、時価の変動により利益を得ることを目的として保有する株式です。

このような目的で保有する有価証券について、投資者にとっての有用な情報は有価証券の期末時点での時価に求められると考えられます。

また、売却することについて事業遂行上等の制約が無く、時価の変動による評価差額は、企業にとっての財務活動の成果と考えられます。

そのため、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理します。

当期の損益として計上する際には、期末評価損益を計上する『有価証券評価損益』等の勘定科目の他に、有価証券売却損益と一括された『有価証券運用損益』等の勘定科目を用いることができます。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第15・70項
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第66・270項・[設例3]
対象の売買目的有価証券が上場株式である場合、期末評価の基準とする時価は、その株式が登録されている金融商品取引所が公表する価額となります。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第6・54項・(注2)
売買目的有価証券の評価損益の会計処理方法は、期末に計上した評価損益を翌期首に戻入る『洗替法』と、戻し入れない『切放法』の2つが有ります。
下記では、売買目的有価証券に分類される上場株式の期末評価の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針[設例3]
前提条件
A社は上場企業であるB社の株式について、下記の取引を行った。

・X1年3月31日時点でにB社株式10,000株を保有している
・B社株式のX1年3月31日における帳簿価額は5,000千円で
 あった
・B社株式は将来の値上がりにより利益を得る目的で保有
 している
・X1年3月31日のB社株式の時価は一株当り@510円であった
・A社の決算日は3月31日である
【洗替法を適用する場合の会計処理】
① X1年3月31日(決算時)
借方 貸方
有価証券 100千円※1 有価証券評価損益 100千円※1
※1期末一株当り時価@510円×保有株式数10,000株期
  -末帳簿価額5,000千円
有価証券を期末評価額で時価評価し、評価差額は『有価証券評価損益』に計上します。
② X1年4月1日(翌期首時)
借方 貸方
有価証券評価損益 100千円※1 有価証券 100千円※1
※1前期末に計上した評価差額
前期末に計上した評価差額の仕訳の反対仕訳を計上します。

【切放法を適用する場合の会計処理】
① X1年3月31日(決算時)
借方 貸方
有価証券 100千円※1 有価証券評価損益 100千円※1
※1期末一株当り時価@510円×保有株式数10,000株期
  -末帳簿価額5,000千円
有価証券を期末評価額で時価評価し、評価差額は『有価証券評価損益』に計上します。
② X1年4月1日(翌期首時)
仕訳なし
切放法のため、翌期首での洗替は行いません。
次のページでは、売買目的有価証券に分類される上場株式の売却時の会計処理について具体的にご紹介します。