その他有価証券に分類される上場株式の期末評価の会計処理

【その他有価証券の期末評価】

BS価額:期末時価に評価替

評価差額:①又は②により会計処理
      ①全部資本直入法
       (全額純資産計上)

      ②部分資本直入法
       (評価益は純資産、評価損は
       投資有価証券評価損計上)

     ※純資産計上する部分には、
      税効果会計が適用される

     ※いずれも洗替方式が適用される

     ※純資産計上時の勘定科目は
      『その他有価証券評価差額金』
      を使用

     ※評価損計上時の勘定科目は
      『投資有価証券評価損』を使用
『その他有価証券』は、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券です。

『その他有価証券』の代表的な具体例としては、取引先との関係強化のために相手方の株式を取得する場合や、業務提携のための株式相互持合い等が挙げられます。

ただし、その保有目的は多岐にわたっており、上記のような業務上の関係を有する企業の株式等から、市場動向によっては売却を想定している有価証券まで多様な性格を有しています。

そのため、売買目的有価証券と子会社株式及び関連会社株式との中間的な性格を有するものとして捉えられています。

会計処理についてもその性格が反映されており、売買目的有価証券と同様に時価をもって貸借対照表価額とするものの、その評価差額は全額純資産の部に計上する『全部資本直入法』又は、評価損のみを当期の損失とし評価益は純資産の部に計上する『部分資本直入法』によります。

純資産の部に計上される評価差額については、税効果会計が適用されます。

そのため、評価差額の内、税効果部分は繰延税金資産負債として計上し、残額を純資産の部に計上します。

純資産の部に計上する際には、『その他有価証券評価差額金』の勘定科目を使用します。

『部分資本直入法』における評価損を計上する際には、『投資有価証券評価損』の勘定科目を使用します。

『全部資本直入法』・『全部資本直入法』どちらを適用した場合であっても、洗替方式が適用され、期末における評価差額の計上仕訳は、翌期首に戻し入れます。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第18・75・76・77・78・79・80項
対象のその他有価証券が上場株式である場合、期末評価の基準とする時価は、その株式が登録されている金融商品取引所が公表する価額となります。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第6・54項・(注2)
下記では、その他有価証券に分類される上場株式の期末評価の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社は上場企業であるB社の株式について、下記の取引を行った。

・X1年3月31日時点でにB社株式10,000株を保有している
・B社株式のX1年3月31日における帳簿価額は5,000千円で
 あった
・X1年3月31日のB社株式の時価は一株当り@510円であった
・X2年3月31日期中にB社株式の売買取引は行っていない
・X2年3月31日のB社株式の時価は一株当り@490円であった
・B社株式はB社との取引関係強化の目的で保有している
・A社の法人税等の法定実効税率は40%である
・A社の決算日は3月31日である
【全部資本直入法を適用する場合の会計処理】
① X1年3月31日(決算時)
借方 貸方
投資有価証券 100千円※1 繰延税金負債 40千円※2
その他有価証券評価差額金 
        60千円※3
※1期末一株当り時価@510円×保有株式数10,000株期
  -末帳簿価額5,000千円
※2(期末一株当り時価@510円×保有株式数10,000株期
  -末帳簿価額5,000千円)×法定実効税率40%
※3期末一株当り時価@510円×保有株式数10,000株期
  -末帳簿価額5,000千円-税効果40千円
期末の時価で、その他有価証券を評価替えします。評価差額の内、税効果分は、繰延税金資産・負債に計上し、残額は『その他有価証券評価差額』として、純資産の部に計上します。
② X1年4月1日(翌期首時)
借方 貸方
繰延税金負債 40千円※2
その他有価証券評価差額金 
        60千円※3
投資有価証券 100千円※1
※1前期に計上した評価差額
※2前期に計上した繰延税金負債
※3前期に計上したその他有価証券評価差額金
前期末に計上した評価差額の仕訳の反対仕訳を計上します。
③ X2年3月31日(決算時)
借方 貸方
繰延税金資産 40千円※5
その他有価証券評価差額金 
        60千円※6
投資有価証券 100千円※4
※4期末帳簿価額5,000千円-期末一株当り時価@490円
  ×保有株式数10,000株
※5(期末帳簿価額5,000千円-期末一株当り時価@490円
  ×保有株式数10,000株)×法定実効税率40%
※6期末帳簿価額5,000千円-期末一株当り時価@490円
  ×保有株式数10,000株-税効果40千円
期末の時価で、その他有価証券を評価替えします。評価差額の内、税効果分は、繰延税金資産・負債に計上し、残額は『その他有価証券評価差額』として、純資産の部に計上します。
④ X2年4月1日(翌期首時)
借方 貸方
投資有価証券 100千円※4 繰延税金資産 40千円※5
その他有価証券評価差額金 
        60千円※6
※4前期に計上した評価差額
※5前期に計上した繰延税金資産
※6前期に計上したその他有価証券評価差額金
前期末に計上した評価差額の仕訳の反対仕訳を計上します。
【部分資本直入法を適用する場合の会計処理】
① X1年3月31日(決算時)
借方 貸方
投資有価証券 100千円※1 繰延税金負債 40千円※2
その他有価証券評価差額金 
        60千円※3
※1期末一株当り時価@510円×保有株式数10,000株期
  -末帳簿価額5,000千円
※2(期末一株当り時価@510円×保有株式数10,000株期
  -末帳簿価額5,000千円)×法定実効税率40%
※3期末一株当り時価@510円×保有株式数10,000株期
  -末帳簿価額5,000千円-税効果40千円
期末の時価で、その他有価証券を評価替えします。評価差額の内、税効果分は、繰延税金負債に計上し、残額は『その他有価証券評価差額』として、純資産の部に計上します。
② X1年4月1日(翌期首時)
借方 貸方
繰延税金負債 40千円※2
その他有価証券評価差額金 
        60千円※3
投資有価証券 100千円※1
※1前期に計上した評価差額
※2前期に計上した繰延税金負債
※3前期に計上したその他有価証券評価差額金
前期末に計上した評価差額の仕訳の反対仕訳を計上します。
③ X2年3月31日(決算時)
借方 貸方
投資有価証券評価損 
        100千円※4
投資有価証券 100千円※4
※4期末帳簿価額5,000千円-期末一株当り時価@490円
  ×保有株式数10,000株
期末の時価で、その他有価証券を評価替えします。評価損が出ている状態なので、評価差額は全額『投資有価証券評価損』として当期に損失計上します。
④ X2年4月1日(翌期首時)
借方 貸方
投資有価証券 100千円※4 投資有価証券評価損 
        100千円※4
※4前期に計上した評価差額
前期末に計上した評価差額の仕訳の反対仕訳を計上します。
次のページでは、その他有価証券に分類される上場株式の売却時の会計処理について具体的にご紹介します。