その他有価証券に分類される公社債の減損時の会計処理

【その他有価証券に分類される公社債の
              減損の判定】

 下記2要件をどちらも満たす場合は、減損を認識する

  ■要件1:時価が著しく下落している
       ※基本的に、各企業で『合理的な
      基準』を設けて判断する

       ※下落率50%程度以上は「著しく
      下落した」に該当
        ⇒反証が無い限り減損損失を
       要計上

       ※下落率30%未満は一般的に「著
      しく下落した」に該当しない

       ※判定に用いる時価は、継続適用
      を条件に期末前一カ月の平均
      相場でもOK!


  ■要件2:回復する見込みがあると認められ
     ない

       ※下記の要因での下落の場合は、
      通常、回復する見込は認められ
      ない

        ・格付の著しい低下

        ・発行会社の信用リスクの増大
       (債務超過・連続赤字など)


       ※下記の要因での下落の場合は回
      復する可能性が有ると認めら
      れる

        ・一般市場金利の大幅な上昇


【時価のあるその他有価証券の
            減損の会計処理】

 BS価額:減損時の時価まで切り下げる

 評価損:減損損失として当期に損失計上

 翌期首の取得原価:減損損失計上後の金額
          ※減損損失の洗替は行
          わない
その他有価証券に分類される公社債について、時価が著しく下落しており、かつ、回復する見込があると認められる場合以外は、時価までBS価額を引き下げ、評価差額は減損損失として、当期に損失計上しなければなりません。

時価が著しく下落しているかどうかの判定は、必ずしも数値化できるものでは無いため、各企業で状況に応じて「著しく下落した」と判断するための合理的な基準を設け、その基準に基づいて判断しなければなりません。

ただし、個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合は、「著しく下落した」ときに該当するとされており、合理的な反証が無い限り、減損処理を行わなければなりません。

また、個々の銘柄の有価証券の時価の下落率がおおむね30%未満の場合には、一般的には「著しく下落した」ときに該当しないものと考えられるとされています。

その他有価証券の場合、判定に用いる時価については、期末前一カ月の平均相場を使用することもできます。

この期末前一カ月の平均相場は、原則として期末日以前1か月の各日の終値の単純平均値とされています。

この相場を判定基準に用いるかどうかは、株式、債券等の有価証券の種類ごとに判断することができますが、毎期継続して適用することが要件とされています。

時価の下落について、その下落が債権格付の著しい低下である場合や、債券の発行会社の債務超過や連続赤字決算に伴う信用リスクの増大に起因している場合、通常、「回復する見込みがある」とは認められません。

それに対して、単に一般市場金利の大幅な上昇によって時価が著しく下落した場合で、いずれ時価の下落が解消すると見込まれる場合は、「回復する見込みがある」と認められます。

その他有価証券の通常の評価差額には、洗替法が適用されるため、期首に戻入を行います。

それに対して、減損損失として計上した評価差額については、戻入は行わず、減損損失計上後の価額を翌期首の取得原価として、以降は当該修正後の取得原価と毎期末の時価とを比較して評価差額を算定します。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第20・22・83・84項
実務指針第14号金融商品会計に関する実務指針第91・283-2項
下記では、その他有価証券に分類される公社債の減損時の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社はB社社債について、下記の取引を行った。

・X1年3月31日時点でB社社債帳簿価額5,000千円を保有して
 いる
・X1年3月31日のB社社債の時価1,000千円であった
・X1年3月31日においてB社社債は取得価額に対して著しく
 下落しており、回復の見込は不明である
・X2年3月31日期中にB社社債の売買取引は行っていない
・X2年3月31日のB社社債の時価は1,100千円であった
・B社社債はその他有価証券に区分している
・A社の法人税等の法定実効税率は40%である
・A社の決算日は3月31日である
① X1年3月31日(決算時)
借方 貸方
投資有価証券評価損 
        4,000千円※1
投資有価証券 4,000千円※1
※1期末帳簿価額5,000千円-期末時価1,000千円
期末時点で時価が著しく下落しており、回復する見込みがあると認められないため、帳簿価額を時価まで切り下げ、評価差額は減損損失として投資有価証券評価損に計上します。
② X1年4月1日(翌期首時)
仕訳なし
減損損失を計上した翌期首は、減損損失計上後の価額を取得原価とするため、評価差額の戻入は行いません。
③ X2年3月31日(決算時)
借方 貸方
投資有価証券 100千円※2 その他有価証券評価差額金 
        60千円※4
繰延税金負債 40千円※3
※2期末時価1,100千円-期末帳簿価額1,000千円
※3(期末時価1,100千円-期末帳簿価額1,000千円)
  ×法定実効税率40%
※4期末時価1,100千円-期末帳簿価額1,000千円-税効果40千円
減損損失計上後の帳簿価額を基準に評価差額を計上します。
④ X2年4月1日(翌期首時)
借方 貸方
その他有価証券評価差額金 
        60千円※4
繰延税金負債 40千円※3
投資有価証券 100千円※2
※2前期に計上した評価差額
※3前期に計上した繰延税金負債
※4前期に計上したその他有価証券評価差額金
前期末に計上した評価差額の仕訳の反対仕訳を計上します。
次のページでは、その他有価証券に分類される外貨建公社債の会計処理について具体的にご紹介します。