既発の譲渡性預金を満期保有目的債権として保有する場合の会計処理
(定額法/利払日と決算日が一致する)
既発の譲渡性預金を満期保有目的債権として保有する場合は、下記のように会計処理を行います。
タイミング | 会計処理 |
---|---|
取得時 |
取得価額で有価証券の資産勘定に計上 ≪仕訳イメージ≫ (満期保有目的債権)XXX (普通預金)XXX |
約定利息受取時 |
利息総額を有価証券利息として収益計上し、入金額を受け取った資産の勘定に、差し引かれた所得税及び復興特別所得税を仮払法人税に計上 ≪仕訳イメージ≫ (普通預金)XXX (有価証券利息)XXX (仮払法人税)XXX |
決算時 |
■約定利息の未収分を計上 ≪仕訳イメージ≫ (未収収益)XXX (有価証券利息)XXX ■取得価額と額面金額の差額を償却原価法で計上 ≪仕訳イメージ≫ (満期保有目的債権)XXX (有価証券利息)XXX |
満期償還時 |
有価証券の科目をマイナスし、相手勘定で償還の際に受け取った資産勘定を計上 ≪仕訳イメージ≫ (普通預金)XXX (満期保有目的債権)XXX |
取得時には、取得価額で『満期保有目的債権』や『投資有価証券』等の勘定科目で資産計上します。
約定利息は、所得税及び復興特別所得税の合計15.315%を差し引かれてた金額が入金されます。
約定利息受取時には、税控除前の利息総額を『満期保有目的債権利息』や『有価証券利息』等で収益計上し、相手勘定で入金額を普通預金等に、差し引かれた所得税及び復興特別所得税を仮払法人税に計上します。
約定利息受取時には、税控除前の利息総額を『満期保有目的債権利息』や『有価証券利息』等で収益計上し、相手勘定で入金額を普通預金等に、差し引かれた所得税及び復興特別所得税を仮払法人税に計上します。
決算時においては、当期の期間に帰属するものの、受取期日が到来していない利息を『未収収益』等で資産計上し、相手勘定で『満期保有目的債権利息』や『有価証券利息』等を収益計上します。
【償却原価法】
満期保有目的の債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得し、差額の性格が金利の調整と認められる場合、
償却原価法を適用
【償却額の計算方法】
原則:利息法
例外:定額法(要継続適用)
【償却額の会計処理】
損益:金利調整差額として有価証券の利息
に計上
資産:有価証券の簿価に加算
(償却原価でBS計上)
満期保有目的の債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得し、差額の性格が金利の調整と認められる場合、
償却原価法を適用
【償却額の計算方法】
原則:利息法
例外:定額法(要継続適用)
【償却額の会計処理】
損益:金利調整差額として有価証券の利息
に計上
資産:有価証券の簿価に加算
(償却原価でBS計上)
さらに、満期保有目的の債権に区分される譲渡性預金を、額面金額より低い価格又は、高い価格で取得した場合で、額面金額と取得価額の差額の性格が金利の調整と認められる場合は、決算時において、償却原価法を適用して、利息及び譲渡性預金の帳簿価額の調整を行います。
『差額の性格が金利の調整と認められる場合』とは、差額が約定利率と取得時の市場利率との調整に基づくものである場合を言います。
償却原価法では、その差額分を受渡日から償還日にわたって期間配分します。
償却原価法における各期の償却額の算定方法は、原則として利息法によりますが、継続適用を条件に、簡便法である定額法を採用することもできます。
利息法とは、債券の約定利息受取総額と金利調整差額の合計額を債券の帳簿価額に対し一定率(実効利子率)となるように、複利をもって各期に配分する方法です。
それに対して定額法は、債券の金利調整差額を取得日から償還日までの期間で除して各期に配分する方法です。
いずれの方法でも、期間配分された償却額は、有価証券の利息として益計上するとともに、譲渡性預金の有価証券の調整として『満期保有目的債権』や『投資有価証券』等の勘定に加算されます。
この償却額を加算された有価証券の帳簿価額は『償却原価』と呼ばれ、満期保有目的の債権はこの償却原価をもって、貸借対照表価額とされます。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第16・(注5)・71項
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第70項・[設例4]
『差額の性格が金利の調整と認められる場合』とは、差額が約定利率と取得時の市場利率との調整に基づくものである場合を言います。
償却原価法では、その差額分を受渡日から償還日にわたって期間配分します。
償却原価法における各期の償却額の算定方法は、原則として利息法によりますが、継続適用を条件に、簡便法である定額法を採用することもできます。
利息法とは、債券の約定利息受取総額と金利調整差額の合計額を債券の帳簿価額に対し一定率(実効利子率)となるように、複利をもって各期に配分する方法です。
それに対して定額法は、債券の金利調整差額を取得日から償還日までの期間で除して各期に配分する方法です。
いずれの方法でも、期間配分された償却額は、有価証券の利息として益計上するとともに、譲渡性預金の有価証券の調整として『満期保有目的債権』や『投資有価証券』等の勘定に加算されます。
この償却額を加算された有価証券の帳簿価額は『償却原価』と呼ばれ、満期保有目的の債権はこの償却原価をもって、貸借対照表価額とされます。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第16・(注5)・71項
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第70項・[設例4]
そして、満期償還された際には、『満期保有目的債権』や『投資有価証券』等の帳簿価額からマイナスします。
下記では、既発の譲渡性預金を満期保有目的債権として保有する場合で、償却原価法に定額法を適用し、かつ、利払日と決算日が一致するケースの会計処理をご紹介します。
【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針[設例4]
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-預金46既発の譲渡性預金(CD)を取得し、満期償還された』株式会社清文社
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針[設例4]
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-預金46既発の譲渡性預金(CD)を取得し、満期償還された』株式会社清文社
前提条件 |
---|
A社は内国法人発行の譲渡性預金証書について、下記の取引を行った。
・X1年4月1日に額面総額10,000千円を9,728千円で 取得した ・譲渡性預金の満期日はX4年3月31日である ・譲渡性預金の約定利率は4%である ・譲渡性預金の利払日は毎年3月31日である ・譲渡性預金の額面と購入価額の差額は金利の調整と認めら れる ・譲渡性預金は満期保有目的の債権に区分されている ・償却原価法は定額法を適用している ・A社の決算日は3月31日である |
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(取得時)
借方 | 貸方 |
---|---|
投資有価証券 9,728千円※1 | 現金預金 9,728千円※1 |
※1譲渡性預金購入価額
譲渡性預金購入価額を投資有価証券として資産計上します。
② X2年3月31日(第一回利払日)
借方 | 貸方 |
---|---|
現金預金 400千円※1
投資有価証券 91千円※2 |
有価証券利息 400千円※1
有価証券利息 91千円※2 |
※1額面金額10,000千円×約定利率4%=400千円
※2(額面総額10,000千円-取得価額9,728千円)÷利息期間3年
※2(額面総額10,000千円-取得価額9,728千円)÷利息期間3年
受取った約定利息を現金預金及び、有価証券利息として計上します。同時に、金利の調整部分についても、額面総額と取得価額の差額を利息期間で除した金額を有価証券利息に計上し、相手勘定で投資有価証券を調整します。
③ X3年3月31日(第二回利払日)
借方 | 貸方 |
---|---|
現金預金 400千円※1
投資有価証券 91千円※2 |
有価証券利息 400千円※1
有価証券利息 91千円※2 |
※1額面金額10,000千円×約定利率4%=400千円
※2(額面総額10,000千円-取得価額9,728千円)÷利息期間3年
※2(額面総額10,000千円-取得価額9,728千円)÷利息期間3年
第一回利払い日と同様の会計処理を行います。
④ X4年3月31日(第三回利払日&償還日)
借方 | 貸方 |
---|---|
現金預金 400千円※1
投資有価証券 90千円※2 現金預金 10,000千円※3 |
有価証券利息 400千円※1
有価証券利息 90千円※2 投資有価証券 10,000千円※3 |
※1額面金額10,000千円×約定利率4%=400千円
※2(額面総額10,000千円-取得価額9,728千円)
÷利息期間3年(端数調整を含む)
※3譲渡性預金償還額
※2(額面総額10,000千円-取得価額9,728千円)
÷利息期間3年(端数調整を含む)
※3譲渡性預金償還額
第一回・第二回利払い日と同様の会計処理で有価証券利息を計上します。同時に、償還した譲渡性預金をマイナスし、償還により受取った現金預金を資産計上します。
次のページでは、既発の譲渡性預金を満期保有目的債権として保有する場合の会計処理(利息法/利払日と決算日が一致しない)について具体的にご紹介します。