営業外取引で約束手形を受取った場合の会計処理

【約束手形とは】
振出人が名宛人に対して、一定金額を一定期日に支払うことを約束した証券
約束手形は、支払う側(振出人)が受け取る側(名宛人)に対して、一定金額を一定期日に支払うことを約束した証券です。

名宛人は指定された期日になったら金融機関に手形を取り立てに出し、現金に換金することができます。

約束手形は、裏書や割引が無ければ、登場する当事者が『振出人』と『名宛人』の2名義だけであり、シンプルで一般的な手形取引であると言えます。
【約束手形の振出目的と勘定科目】
目的分類 勘定科目
  ・商業手形(営業)   ・受取手形
  ・支払手形
  ・商業手形(営業外)   ・営業外受取手形
  ・営業外支払手形
  ・金融手形   ・手形借入金
  ・手形貸付金
約束手形は、その振出し目的により、商取引により生じる『商業手形』と、金融取引により生じる『金融手形』に分かれます。

『商業手形』はさらに、商品売買などの通常の営業取引で生じる『営業手形』と、固定資産や有価証券の売買で生じる『営業外手形』に分かれます。

『営業手形』は、営業債権債務に該当し、『受取手形/支払手形』の勘定科目を使用して会計処理します。

『営業外手形』は、営業債権債務に該当しないため、『営業手形』とは区別して、『営業外受取手形/営業外支払手形』の勘定科目を使用して会計処理します。

『金融手形』は、貸付・借入の手段として手形を用いている取引であるため、”手形”勘定ではなく『手形貸付金/手形借入金』の勘定科目を使用します。
このように約束手形は、その振出し目的により計上する勘定科目が異なり、『営業外受取手形』の勘定科目で会計処理を行うのは、『営業外手形』に該当する約束手形のみです。
下記では、営業外取引で約束手形を受取った場合の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社は小売業を営んでおり、得意先B社との間で下記の取引を行った。

・X1年3月31日にB社へ設備Xを1,000千円(帳簿価額900千円)
 で売却し、代金として
 約束手形1,000千円を受領した
・X1年5月31日にB社から受領した約束手形1,000千円が
 満期日となり当座預金に振り込まれた
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年3月31日(約束手形受領時)
借方 貸方
営業外受取手形 1,000千円※1 設備 900千円※2
固定資産売却益 100千円※3
※1約束手形の受領金額
※2設備Xの帳簿価額
※3設備Xの売却価額1,000千円-設備Xの帳簿価額900千円
受領した約束手形を営業外受取手形として資産計上し、その相手勘定で売却した設備Xの帳簿価額をマイナスします。両者の差額は、固定資産売却損益として計上します。
② X1年5月31日(入金日)
借方 貸方
当座預金 1,000千円※4 営業外受取手形 1,000千円※4
※4決済された約束手形金額
入金された金額を当座預金勘定に計上し、相手勘定で決済された営業外受取手形をマイナスします。
次のページでは、営業外取引で他人宛為替手形を受取った場合の会計処理について具体的にご紹介します。