在外持分法適用会社の財務諸表項目の為替換算

在外持分法適用会社の財務諸表項目は、在外子会社の財務諸表項目と同じ為替相場により換算します。

具体的には、各財務諸表項目ごとに、下記の為替相場を適用します。
F/S項目 換算相場

資産及び負債

決算時の為替相場

資本
(親会社による株式の取得時における資本に属する項目)

株式取得時の為替相場

資本
(親会社による株式の取得後に生じた資本に属する項目)

当該項目の発生時の為替相場

収益及び費用及び当期純利益

原則:期中平均相場
例外:決算時の為替相場でも
   OK

※ただし、親会社との取引に
 よる収益及び費用の換算
 
 ついては、親会社が換算に
 用いる為替相場によ
 る。
 この場合に生じる差額は
 当期の為替差損益に
 計上。

換算によって生じた換算差額

持分相当額を為替換算調整勘定として連結上の資本の部に計上
その結果として算出された損益計算書上の円建当期純損益の持分相当額を、持分法による投資損益として連結損益計算書上の営業外損益の区分に計上するとともに、取得後の利益剰余金の持分相当額について、投資勘定と利益剰余金を修正します。

また、在外持分法適用会社の財務諸表項目の換算から生じた為替換算調整勘定の持分相当額は、連結上の為替換算調整勘定として純資産の部に計上します。
(外貨建取引等会計処理基準三
外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書三8
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第46項)
下記では、在外持分法適用会社の財務諸表項目の換算と連結方法について、具体例を使用してご紹介します。(参考:外貨建取引等の会計処理に関する実務指針設例15)
前提条件
A社は、X1年4月1日に設立された外国法人B社の株式20%を2,000千USDで取得した。

・X1年4月1日時点の為替相場は@120円/USDであった
・X1年4月1日設立時点のB社の純資産は資本金
 10,000千USDのみ
・A社及びB社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(出資時)
借方 貸方
関連会社有価証券 
      240,000千円※1
現金預金 240,000千円※1
※1B社株式取得価額2,000千USD
  ×取得時為替相場@120円/USD
B社株式を関連会社有価証券として資産計上します。
追加前提条件
X2年3月31日決算期のB社の状況は下記の通りであった。

・当期純利益2,000千USD
・期中平均為替相場@100円/USD
・X2年3月31日時点為替相場@125円/USD
・X2年3月31日時点のB社の外貨建BSは下記の通り
B社貸借対照表(単位:千USD)
資産 28,500 負債 16,500
資本金 10,000
利益剰余金 2,000
          28,500           28,500

X2年3月31日時点のB社の外貨建BSを円換算すると、下記のようになります。
B社貸借対照表(単位:千円)
資産 3,562,500※2 負債 2,062,500※2
資本金 1,200,000※3
利益剰余金 200,000※4
為替換算調整勘定 100,000※5
3,562,500 3,562,500
※2外貨建帳簿価額×期末為替相場@125円/USD
※3資本金外貨建帳簿価額10,000千USD
  ×持分取得時為替相場@120円/USD
※4外貨建当期純利益2,000千USD
 ×当期期中平均為替相場@100円/USD
※5貸借差額((資本金10,000千USD+利益剰余金2,000USD)
  ×期末為替相場@125円/USD
  
  -資本金円建簿価1,200,000千円
  -利益剰余金円建帳簿価額200,000千円)
【A社の会計処理】
② X2年3月31日(B社持分法による投資利益の計上)
借方 貸方
関連会社有価証券 
      40,000千円※6
持分法による投資利益 
      40,000千円※6
※6当期外貨建当期純利益2,000千USD
  ×当期期中平均為替相場@100円/USD×20%
B社の円建当期純利益の内、A社持分の20%を持分法による投資利益に計上するとともに、同額をB社株式の調整として関連会社有価証券に計上します。
③ X2年3月31日(B社為替換算調整勘定の計上)
借方 貸方
関連会社有価証券 
      20,000千円※7
為替換算調整勘定 
      20,000千円※7
※7B社期末為替換算調整勘定残高100,000千円×20%
B社の円建為替換算調整勘定の内、A社持分の20%を連結BSの為替換算調整勘定として計上するとともに、同額をB社株式の調整として関連会社有価証券に計上します。
追加前提条件
X3年3月31日決算期のB社の状況は下記の通りであった。

・当期純利益2,500千USD
・期中平均為替相場@110円/USD
・X3年3月31日時点為替相場@105円/USD
・X3年2月28日に4,400USDの配当を決議し未払配当金を計上
 している
・X3年2月28日時点為替相場@90円/USD
・X3年3月31日時点のB社の外貨建BSは下記の通り
B社貸借対照表(単位:千USD)
資産 33,500 未払配当金 4,400
負債 19,000
資本金 10,000
利益剰余金 100
          33,500           33,500

X3年3月31日時点のB社の外貨建BSを円換算すると、下記のようになります。
B社貸借対照表(単位:千円)
資産 3,517,500※7 未払配当金 462,000※7
負債 1,995,000※7
資本金 1,200,000※8
利益剰余金 79,000※9
為替換算調整勘定 
      ▲218,500※10
3,517,500 3,517,500
※7外貨建帳簿価額×期末為替相場@105円/USD
※8資本金外貨建帳簿価額10,000千USD
  ×持分取得時為替相場@120円/USD
※9前期外貨建当期純利益2,000千USD
  ×前期期中平均為替相場@100円/USD
  +当期外貨建当期純利益2,500千USD
  
  ×当期期中平均為替相場@100円/USD
  -当期期中外貨建配当金計上額4,400千USD
  
  ×配当金計上時為替相場@90円/USD
※10貸借差額((資本金10,000千USD+利益剰余金100USD)
  ×期末為替相場@105円/USD
  
  -資本金円建簿価1,200,000千円
  -利益剰余金円建帳簿価額79,000千円)
【A社の会計処理】
④ X3年3月31日(開始仕訳)
借方 貸方
関連会社有価証券 
      40,000千円※6
関連会社有価証券 
      20,000千円※7
利益剰余金期首残高 
      40,000千円※6
為替換算調整勘定 
      20,000千円※7
※6前期計上済みB社の持分法による投資利益
※7前期計上済みB社の為替換算調整勘定
前期計上済みのB社の持分法適用による調整を計上します。
⑤ X3年3月31日
 (当期純利益分のB社持分法による投資利益の計上)
借方 貸方
関連会社有価証券 
      5,500千円※11
持分法による投資利益 
      5,500千円※11
※11当期外貨建当期純利益2,500千USD
  ×当期期中平均為替相場@110円/USD×20%
B社の円建当期純利益の内、A社持分の20%を持分法による投資利益に計上するとともに、同額をB社株式の調整として関連会社有価証券に計上します。
⑥ X3年3月31日(B社配当金の修正)
借方 貸方
受取配当金 79,200千円※12 関連会社有価証券 
      79,200千円※12
※12B社外貨4,400USD×配当金計上時為替相場@90円/USD
  ×A社持分比率20%
A社に計上されているB社からの受取配当金を消去し、同額をB社株式である関連会社有価証券勘定で調整します。
⑦ X3年3月31日(B社為替換算調整勘定の計上)
借方 貸方
為替換算調整勘定 
      63,700千円※13
関連会社有価証券 
      63,700千円※13
※13B社期末為替換算調整勘定残高▲218,500千円×20%
  
  -前期末までに計上済みのB社の為替換算調整勘定
  20,000千円
B社の円建為替換算調整勘定の当期増減額の内、A社持分の20%の当期増減額を連結BSの為替換算調整勘定として計上するとともに、同額をB社株式の調整として関連会社有価証券に計上します。
次のページでは、為替差損益の消費税法上の取扱いについてご紹介します。