傷害保険の生存給付金を受取る場合の会計処理

【傷害保険の生存給付金とは】

治療や入院などの保険事故が生じた場合に受取人に支払われる、入院給付金や手術給付金など、被保険者が生存している間に受取ることができる給付金。

※満期保険金(生存保険金)とは異なる
傷害保険における生存給付金は、治療や入院などの保険事故が生じた場合に受取人に支払われる、入院給付金や手術給付金などをいいます。

これらの給付金は、被保険者が生存している間に受取ることができるものです。

満期があらかじめ定められておらず、保険期間中に複数回受取の機会が有るという点で、満期保険金(生存保険金)とは異なります。
【傷害保険の生存給付金の会計処理】
生存給付金の受取人 会計処理

法人

■給付金受取時
 雑収入として益金計上

 【仕訳イメージ】
 (現金預金)XXX (雑収入)


■従業員等への支給時
 見舞金・福利厚生費等で損金計上

 ※社会通念上妥当な金額を超
 える場合は、役員は
  損金不
 算入、従業員は給与となる

 【仕訳イメージ】
 (福利厚生費)XXX (現金預金)

被保険者

会計処理なし。

※個人の所得税課税対象と
 なる

 (心身に加えられた損害を補うものである場合は
 非課税)
傷害保険の生存給付金の受取人が法人である場合、給付金は雑収入として法人の益金に算入します。

法人が受取った生存給付金を被保険者に対する見舞金として支払った場合は、見舞金や福利厚生費の勘定科目で費用計上します。

ただし、見舞金が社会通念上、妥当な金額を超える金額は、被保険者に対する給与となり、役員の場合は、損金不算入となるケースがあるため、留意が必要です。

それに対して、被保険者が受取人である場合は、法人においては課税関係はなく、経理処理は不要です。

ただし、受取人である被保険者においては、所得税の課税対象(給付金が心身に加えられた損害を補うものである場合は、非課税。)となるので留意が必要です。

また、いずれのケースも、法人が資産計上している保険料(前払保険料等)が有る場合であっても、生存給付金受取後も保険契約が継続するため、資産計上している保険料の取崩しの経理処理は必要ありません。
【参考文献】
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第1章4(3)』一般財団法人大蔵財務協会山本英生(2019)
『「通達」から読み解く保険税務/第3章6⃣』税務研究会出版局
下記では、傷害保険の生存給付金を受取る場合の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章6⃣(3)』税務研究会出版局
前提条件
A社は、全従業員被保険者として傷害保険を契約している。
・令和2年3月31日に被保険者である従業員が事故で入院し、
 入院給付金を100千円受取った
・同日に被保険者である従業員に100千円を見舞金として支
 払った
①令和2年3月31日(入院給付金受取時)
借方 貸方
現金預金 100千円※1 雑収入 100千円※1
※1入院給付金受取額
受取った入院給付金を雑収入に計上します。
②令和2年3月31日(見舞金支払時)
借方 貸方
福利厚生費 100千円※2 現金預金 100千円※2
※2見舞金支払額
従業員に支払った見舞金を福利厚生費で損金計上します。
次のページでは、傷害保険が失効した場合の会計処理について具体的にご紹介します。