傷害保険契約の契約者配当の会計処理(相殺方式)

【傷害保険契約の契約者配当の会計処理(相殺方式)】

通知を受けた事業年度の益金の額に算入。現金方式で支払われた契約者配当を、現金で保険料として支払った場合と同様に取扱う。(実務では、下記の現金預金勘定は省略可。)

 【仕訳イメージ】
 (現金預金)XXX (雑収入)XXX
 (保険料)XXX (現金預金)XXX
生命保険の保険料の額は、保険事故の発生割合、保険料の運用益、生命保険会社の経費の額の見積もり等の予定率(基礎率)に基づいて決定されています。

実際の運用状況がこれらの予定を上回った場合、保険会社はその乖離分を契約者に分配することで調整します。

このような分配を、契約者配当といいます。

契約者配当の受取方法には、いくつか種類が有りますが、支払保険料から配当を相殺するケースを『相殺方式』といいます。

傷害保険の契約者配当を受取る場合、その通知を受けた日の属する事業年度の益金として計上します。

相殺方式で契約者配当を受取る場合は、契約者配当が一旦、金銭で支払われ、それを保険料として支払った場合と同様の会計処理を行います。

そのため、理論上は現金預金を資産計上し、相手勘定で雑収入を計上し、その現金預金をマイナスして、保険料の支払の仕訳を計上することになりますが、実務上は、現金預金勘定の仕訳は省略しても問題ありません。
下記では、傷害保険契約の契約者配当を相殺方式で受取る場合の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章1⃣(3)』税務研究会出版局
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第1章3Q&A21』一般財団法人大蔵財務協会
前提条件
A社は全従業員を対象に傷害保険を契約している。
・令和2年3月31日に、契約者配当の支払1,000千円の通知を
 受けた
・契約者配当は、令和2年3月31日支払の支払保険料10,000
 千円と相殺する形で受取る
・傷害保険の最高解約返戻率は20%である
① 令和2年3月31日(契約者配当通知受取&保険料支払時)
借方 貸方
保険料 10,000千円※1 現金預金 9,000千円※3
雑収入 1,000千円※2
※1支払保険料額
※2契約者配当通知額
契約者配当の通知額を雑収入すると同時に、支払保険料額を保険料として費用計上します。実際の現金支出額は、契約者配当額を差引いた金額であるため、支払保険料から契約者配当額を差引いた金額で、現金預金をマイナスします。
次のページでは、傷害保険契約の契約者配当の会計処理(保険金買増方式)について具体的にご紹介します。