収入保障保険の年金受取時の
会計処理

【収入保障保険の年金受取時会計処理】




受取人 年金払
約定時期
会計処理
法人 支払事由発生前 年金受取の都度、益金計上できる。
保険料積立金等の資産計上額が有る場合は、下記の計算で算定した金額を取崩す。

『保険積立金等取崩額
=保険積立金等残高×受取年金額
 ÷年金受取総額(見込)』

【仕訳イメージ】
(現金預金)XXX (保険積立金)XXX
        (雑収入)XXX

※ただし、上記で会計処理を行っている際に、
 年金の一部を一括受取した場合は、
 利益操作
 防止のため、その時の未払年金の現在価値を
 全額益金計上し、以降は年金受取時に
 時間価
 値相当額のみを益金計上。
支払事由発生以降 支払事由発生時に、年金額を全額益金計上。
保険積立金等の資産計上額が有る場合は、全額取崩して損金計上。
被保険者 法人に課税関係は生じないため、経理処理なし。
※個人の所得税・住民税課税対象
収入保障保険の保険金を法人が年金形式で受取る場合、その会計処理は、年金で支払う旨を約定したタイミングが、支払事由発生前か以降かで異なります。

約定したタイミングが支払事由発生前の場合、年金受取の都度、益金計上することができます。

その際に、保険料の資産計上額がある場合は、受取年金額に相当する金額を取崩します。

取崩し金額は、資産計上総額を、年金受取総額の見込額で除して、受取年金額を掛けて算定します。

ただし、年金支払開始時又は年金支払期間開始後に、一部を一括で受け取った場合には、利益操作を抑制する観点から、その時点の未払年金の現在価値を全額益金に計上します。

その場合、実際に一括で受取った年金額との差額は、未収金等で資産計上します。

以降の年金受取の際には、収受した現金預金を相手勘定に、該当する未収金等の額を取崩し、時間価値に相当する金額のみを益金として計上します。


保険金の受取人が被保険者である場合は、年金は被保険者である従業員が受取り、個人の所得・住民税課税対象となり、法人においては課税関係は発生しません。 【参考文献】
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第4章1⃣』税務研究会出版局
平成15年12月16日 国税庁連絡 収入保障保険、年金払特約付養老保険(法人受取契約)の税務取扱い
下記では、収入保障保険の年金受取時の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第4章1⃣(2)』税務研究会出版局
前提条件
A社は全従業員に対して収入保障保険を契約している。
・契約当初より、保険金を年金で支払う旨を約定いている
・死亡事故が発生し、令和2年3月31日に年金支払が開始
 された
・年金は、支払開始から毎年3月31日に500千円が10年間に
 わたって支払われる
・年金の受取人は法人である
・支払保険料の資産計上額はない
①令和2年3月31日(第一回年金支払日)
借方 貸方
現金預金 100千円※1 雑収入 100千円※1
※1支払われた年金金額
受取年金額を、雑収入として計上します。
追加前提条件
・令和3年3月30日に年金の一部一括支払として2,700千円が
 支払われることとなった
・以降は、毎年200千円が支払われる
・一部一括支払以降に支払われる年金の現在価値は1,710
 千円である
②令和3年3月30日(一部一括支払時)
借方 貸方
現金預金 2,700千円※2
未収金 1,710千円※3
雑収入 2,700千円※2
雑収入 1,710千円※3
※2一部一括支払年金金額
※3一部一括支払以降の年金現価
一括支払年金額と一部一括支払以降の年金現価を雑収入として益金計上します。一部一括支払以降の年金現価については、同時に、未収金に計上します。
③令和3年3月31日(第二回年金支払日)
借方 貸方
現金預金 200千円※4 未収金 190千円※5
雑収入 10千円※6
※4支払われた年金金額
※5未収金計上額1,710千円÷残年数9年
※6貸借差額
受領した現金預金を資産計上する相手勘定で、当年度分の未収金を取崩し、差額を雑収入として益金計上します。