定期保険の死亡保険金を受取る場合の会計処理

【定期保険の死亡保険金受取る際の法人における会計処理】
死亡保険金受取人 会計処理

法人

死亡保険金を受取保険金等に計上し、資産計上額を全額取り崩して雑損失に計上。

 【仕訳イメージ】
 (現金預金)XXX 
     (受取保険金)XXX
 (雑損失)XXX 
     (前払保険料)XXX

※死亡保険金と資産計上額を
 雑益に計上する方法で
 
 OK!

 【仕訳イメージ】
 (現金預金)XXX (雑益)XXX
         (前払保険料)XXX

被保険者の遺族

資産計上額を全額取り崩して雑損失に計上。

 【仕訳イメージ】
 (雑損失)XXX 
     (前払保険料)XXX

※遺族側ではみなし相続財産
 となる。
法人が自社の従業員等を被保険者として加入している生命保険の保険事故が発生して、保険金が支払われた場合の取扱いについては、個人年金保険の場合を除き、現状の規定では明らかにされていません。

そのため、一般に公正妥当な会計処理として認識されている方法を適用します。

具体的には、死亡保険金を法人が受取った場合は、受取った保険金は受取保険金等で益金として計上するとともに、資産計上している前払保険料等がある場合には、それを全額取崩し、損金の額に算入します。

なお、両者の差額を益金の額に算入する方法も認められます。
それに対して、死亡保険金の受取人が被保険者の遺族である場合は、契約者である法人では死亡保険金の益金計上は不要です。

ただし、遺族が死亡保険金を収受することにより、保険契約が終了するため、前払保険料等を資産計上している場合は、全額取崩し、損金の額に算入します。

受取人である遺族においては、死亡保険金はみなし相続財産となり、相続税の対象となります。
【死亡保険金の計上時期と会計処理】
計上時期 会計処理

死亡日

■死亡日
死亡保険金を受取保険金及び未収金に計上。

 【仕訳イメージ】
 (未収金)XXX 
     (受取保険金)XXX

■入金日
現金預金を相手勘定に未収金を取崩し。

 【仕訳イメージ】
 (現金預金)XXX (未収金)XXX

支払通知日

■支払通知日
死亡保険金を受取保険金及び未収金に計上。

 【仕訳イメージ】
 (未収金)XXX 
     (受取保険金)XXX

■入金日
現金預金を相手勘定に未収金を取崩し。

 【仕訳イメージ】
 (現金預金)XXX (未収金)XXX

入金日

■入金日
死亡保険金の入金を計上し、相手勘定で受取保険金を計上。

 【仕訳イメージ】
 (現金預金)XXX 
     (受取保険金)XXX
法人が定期保険の死亡保険金を受取る際の、保険金の計上時期についても、いくつかの方法が議論されている点です。

満期保険金については、満期日に経理処理することが明らかになっていますが、死亡保険金については明確になっておらず、益金計上のタイミングは、死亡日、支払通知日、保険金受取日の3つの考え方が存在しています。
死亡保険金については、死亡事由の発生により死亡保険金の受取の蓋然性がかなり高くなるため、権利確定主義をとっている法人税法上は、死亡の時点で死亡保険金を益金と認識すべきではないかともいわれています。

また、生命保険会社側の取扱いでは、死亡保険金は死亡日に負債計上することとされており、それを勘案すると、受取側でも死亡日で計上することが原則であるようにも考えられます。

しかし、被保険者の死亡だけでは死亡保険金の受取権利は確定しているわけではなく、稀にではありますが、報告義務違反があった場合や、受取人が被保険者を殺害している場合は、約款の規定で死亡保険金の支払が行われ無いケースもあります。

また、死因が災害によるものか、事故によるものかで保険金の受取額が異なるケースもあり、このように、死亡時点では死亡保険金の金額が確定していないケースも発生します。
そのため、保険会社の調査後、確定した死亡保険金の支払通知を受けた日に、死亡保険金を益金と認識すべきではないかとも、考えられています。

また、支払通知書類が到着してから支払迄の期間は5営業日以内とされていることが多く、支払期日を過ぎると延滞利息が発生し、さらに、特別な調査や照会が無い場合は法律上も速やかに支払いを行うこととなっていることから、入金日に計上する方が理解がされやすいという考え方もあります。

しかしながら、支払通知日又は入金日を基準日とする場合、死亡保険受取人が保険金請求を遅らせることで、死亡保険金の益金計上時期を故意に遅らせることができてしまいます。

保険法では、死亡を知った場合は過ぎに連絡することを求めていますが、実務上、上記の方法を利用する目的で、死亡保険請求書の提出を遅らせ、法人税課税を調整するケースが後を絶たない状況です。
下記では、定期保険の死亡保険金を法人が受取る場合の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第1章4(1)Q&A23』一般財団法人大蔵財務協会
前提条件
A社は、全従業員被保険者として定期保険を契約している。
・保険金の受取人は法人である
・令和2年3月31日に社員の死亡事故が発生した
・契約に基づく死亡保険金は10,000千円である
・令和2年3月31日時点で死亡事故が発生した保険について
 300千円の前払保険料を資産計上していた
・死亡保険金は、死亡日に会計処理を行う
①令和2年3月31日(死亡事故発生日)
借方 貸方
未収金 10,000千円※1 前払保険料 300千円※2
雑益 9,700千円※3
※1死亡保険金額
※2前払保険料資産計上額
※3貸借差額
死亡保険金額を未収金に計上し、相手勘定で前払保険料を取り崩すとともに差額を雑益(又は受取保険金等)に計上します。
次のページでは、法人が受取った定期保険の死亡保険金を役員退職金に充てた場合の会計処理について具体的にご紹介します。