定期保険契約の転換の
会計処理の概要

【保険契約の転換とは】

既契約の保険契約について、契約を解除せずに、新たな保険契約に変更すること

※既契約の保険の責任準備金を新契約の一時
 払保険料に充当することで保険契約内容を
 変更

※一般的に解約&新規契約よりも安く保証を
 変更できる

例)・保険金額の増額/減額
  ・保険内容の変更(養老保険から定期保険
   への変更等)
生命保険は長期にわたる契約であるため、生活の変化などから、その保険内容を見直すことがよく行われています。

保険を見直す場合において、既契約を解除せずに、既契約の権利を生かして新たな保険商品に変更することを、「保険契約の転換」といいます。

具体的には、既契約の養老保険、定期保険、第三分野保険、定期付養老保険に係る責任準備金を、新たな養老保険、定期保険、第三分野保険、定期付養老保険の一時払保険料に充当することで保険契約内容の変更を行います。

解約と新規契約の組み合わせではなく、転換を選択することで、一般的には安く新しい保障に変更することができます。
【保険契約の転換の会計処理】

法人税法上は、旧契約を解約して新契約を締結したとして取り扱う。

そのため、旧保険契約の既払保険料については、新契約の保険料に充当される部分と、されない部分に分けて、下記のように会計処理する。

■新契約の保険料に充当される部分(転換価額)

転換時に保険料の一時払いがあったものとして、転換後の保険種類(養老・定期・第三分野・定期付養老保険)に基づく支払保険料の取り扱により、会計処理。

※ただし、法人税法基本通達9-3-5の2の表の
 (注)は適用できない

■新契約の保険料に充当され無い部分(既払保
 険料と転換価額の差額)

転換時の損金の額に計上。

転換価額が既払保険料を上回る場合は、益金に計上。
契約上は既存契約の解約を伴わないものの、法人税法上の会計処理において、保険契約の転換は、旧契約を解約して新契約を締結した、すなわち、既契約の一種の清算が有ったものとして取り扱います。

具体的には、まず、既契約の既払保険料として前払保険料等で計上してる資産を取り崩します。

既契約の既払保険料の内、新規契約に充てられる金額は、『転換価格(下取り価格)』と呼ばれます。

この、転換価額により一時払いがあったものとして、転換後の保険種類(養老・定期・第三分野・定期付養老保険)に基づく支払保険料の取り扱により、会計処理を行います。

ただし、転換後の新契約が定期保険又は第三分野保険の場合、法人税法基本通達9-3-5の2の表の資産計上期間の欄の(注)で規定されている処理(解約返戻率85%超かつ保険期間が10年未満の場合に保険期間の100分の50の年数を資産計上期間とする・解約返戻率85%超かつ保険期間が10年超かつ資産計上期間が原則方で5年未満の場合に資産計上期間を5年とする)については、適用することができないことに留意が必要です。

そして、既契約の既払保険料の額と、転換価額の差額については、転換後の新契約の保険料に充当される部分以外の金額として、その転換時の損金の額に計上します。

この差額については、転換価額が既払保険料の資産計上額を上回ることもあり、その場合は、雑収入などの勘定科目で益金計上します。
【定期保険の転換方式のパターンと会計処理】
転換方式 会計処理
(定期保険から定期付養老保険への転換で、
保険金受取人は法人、かつ、
定期保険はいずれも解約返戻金が無いケースを想定)

基本転換
(転換価額を主契約のみに充当する)

■転換時
転換価額を全額、雑収入に計上し、相手勘定で新規契約の主契約である養老保険の保険積立金を資産計上。

【仕訳イメージ】
(保険積立金)XXX (雑収入)XXX


■転換後保険料支払時
通常の定期付養老保険と同様に、養老保険部分は保険積立金として資産計上し、定期保険部分は保険料等の科目で損金計上。ここで支払う養老保険の保険料は、転換価額が充当されている分、通常の新規契約よりも低く設定されている。

【仕訳イメージ】
(保険積立金)XXX (現金)XXX
(保険料)XXX

定期転換
(転換価額を定期保険特約部分のみに充当する)

■転換時
転換価額を全額、雑収入に計上し、相手勘定で新規契約の定期保険特約に対する前払保険料を資産計上。

【仕訳イメージ】
(前払保険料)XXX (雑収入)XXX


■転換後保険料支払時
養老保険部分については、転換価額の充当が無いため全額現金で支払い、保険積立金として資産計上。定期保険特約部分については、前払保険料の取り崩し額と、現金での支払が発生する場合はその支払額の内、当期に帰属する金額の合計を保険料として費用計上。

【仕訳イメージ】
(保険積立金)XXX (現金)XXX
(保険料)XXX (前払保険料)XXX
       (現金)XXX

比例転換
(転換価額を主契約と定期保険特約部分に按分して充当する)

■転換時
転換価額を全額、雑収入に計上。相手勘定で、転換価額の内、新規契約の養老保険に充当される部分は保険積立金として、定期保険特約に充当される部分は前払保険料として計上。

【仕訳イメージ】
(前払保険料)XXX (雑収入)XXX
(保険積立金)XXX 


■転換後保険料支払時
養老保険部分の当期分支払保険料は保険積立金として資産計上。ここで支払う養老保険の保険料は、転換価額が充当されている分、通常の新規契約よりも低く設定されている。
定期保険特約部分については、前払保険料の取り崩し額と、現金での支払が発生する場合はその支払額の内、当期に帰属する金額の合計を保険料として費用計上。

【仕訳イメージ】
(保険積立金)XXX (現金)XXX
(保険料)XXX (前払保険料)XXX
       (現金)XXX

前納方式
(転換価額を前納保険料と同様に処理する)

■転換時
転換価額を全額、雑収入に計上し、相手勘定で前納保険料として前払保険料を計上。

【仕訳イメージ】
(前払保険料)XXX (雑収入)XXX


■転換後保険料支払時
当期に帰属する前払保険料を取り崩し、その金額と、保険料として新たに支払った当期分支払保険料の合計額について、養老保険部分は保険積立金として資産計上し、定期保険特約部分については、保険料として費用計上。

【仕訳イメージ】
(保険積立金)XXX 
     (前払保険料)XXX
(保険料)XXX (現金)XXX
契約転換において、転換後の新規保険契約が定期付養老保険であるような場合、転換価額が新契約のどの部分に充当されるかといった取扱いは、保険会社によって異なります。

そして、その取扱いにより、転換及びその後の保険料の会計処理が異なります。

転換方式には大きく、4つのパターンがあります。

一つ目は、『基本転換』と呼ばれ、転換価額は主契約にのみ充当されます。例題を使用した具体的な会計処理については、下記のページをご参照下さい。
定期保険契約の転換の会計処理(基本転換)

2つ目は、『定期転換』と呼ばれ、転換価額は定期保険特約にのみ充当されます。例題を使用した具体的な会計処理については、下記のページをご参照下さい。
定期保険契約の転換の会計処理(定期転換)

3つ目は、『比例転換』と呼ばれ、転換価額は主契約と定期保険特約に按分して充当されます。例題を使用した具体的な会計処理については、下記のページをご参照下さい。
定期保険契約の転換の会計処理(比例転換)

そして最後は『前納方式』と呼ばれ、転換価額は全額、前納保険料として取り扱われます。例題を使用した具体的な会計処理については、下記のページをご参照下さい。
定期保険契約の転換の会計処理(前納方式)
【参考文献】
法人税基本通達9-3-7
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第1章2(1)』一般財団法人大蔵財務協会
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第2章⒒』税務研究会出版局
次のページでは、定期保険契約の転換の会計処理(基本転換)について具体的にご紹介します。