定期保険契約の転換の会計処理(基本転換)

【保険契約の転換の会計処理】

法人税法上は、旧契約を解約して新契約を締結したとして取り扱う。そのため、旧保険契約の既払保険料については、新契約の保険料に充当される部分と、されない部分に分けて、下記のように会計処理する。


■新契約の保険料に充当される部分(転換価額)

転換時に保険料の一時払いがあったものとして、転換後の保険種類(養老・定期・第三分野・定期付き養老保険)に基づく支払保険料の取り扱により、会計処理。

※ただし、法人税法基本通達9-3-5の2の表の
 (注)は適用できない

■新契約の保険料に充当され無い部分

転換時の損金の額に計上。
生命保険は長期にわたる契約であるため、生活の変化などから、その保険内容を見直すことがよく行われており、既存の契約を解約せずに、その権利を生かして新たな保険契約に変更することがあります。

これを、「保険契約の転換」といいます。

既契約の既払保険料の内、新規契約に充てられる金額は、『転換価格(下取り価格)』と呼ばれます。

保険契約の転換は、この転換価額が新契約のどの部分に充当されるかによって、大きく4つのパターンに分けられますが、その内、主契約にのみ充当されるものを『基本転換』といいます。

定期保険の転換の概要については、下記のページをご参照ください。
定期保険契約の転換の会計処理の概要
保険契約の転換は、契約上は既存契約の解約を伴わないものの、法人税法上の会計処理において、保険契約の転換は、旧契約を解約して新契約を締結した、すなわち、既契約の一種の清算が有ったものとして取り扱います。

既契約が定期保険の会計処理は、具体的には、まず、既契約の既払保険料として前払保険料等で計上してる資産を取り崩します。

そして、新規保険契約に対して転換価額で一時払いがあったものとして、転換後の保険種類(養老・定期・第三分野・定期付き養老保険)に基づく支払保険料の取り扱により、会計処理を行います。

ただし、転換後の新契約が定期保険又は第三分野保険の場合、法人税法基本通達9-3-5の2の表の資産計上期間の欄の(注)で規定されている処理(解約返戻率85%超かつ保険期間が10年未満の場合に保険期間の100分の50の年数を資産計上期間とする・解約返戻率85%超かつ保険期間が10年超かつ資産計上期間が原則方で5年未満の場合に資産計上期間を5年とする)については、適用することができないことに留意が必要です。

そして、既契約の既払保険料の額と、転換価額の差額については、転換後の新契約の保険料に充当される部分以外の金額として、その転換時の損金の額に計上します。

この差額については、転換価額が既払保険料の資産計上額を上回ることもあり、その場合は、雑収入などの勘定科目で益金計上します。

また、既契約の定期保険が、保険料を全額損金計上する契約である場合は、既払保険料の資産計上額が無いため、転換価額は全額、転換時の雑収入となります。
【基本転換の場合の会計処理】

※仕訳イメージは、定期保険から定期付養老
 保険への転換で、保険金受取人は法人、
 かつ、定期保険はいずれも
 解約返戻金が無
 いケースを想定

■転換時

転換価額を全額、雑収入に計上し、相手勘定で新規契約の主契約である養老保険の保険積立金を資産計上。

【仕訳イメージ】
(保険積立金)XXX (雑収入)XXX



■転換後保険料支払時

通常の定期付養老保険と同様に、養老保険部分は保険積立金として資産計上し、定期保険部分は保険料等の科目で損金計上。ここで支払う養老保険の保険料は、転換価額が充当されている分、通常の新規契約よりも低く設定されている。

【仕訳イメージ】
(保険積立金)XXX (現金)XXX
(保険料)XXX
基本転換の場合、転換価額は主契約にのみ充当されるため、既契約の定期保険を転換する場合は、その定期保険に対して資産計上している前払保険料等を取崩し、転換価額で新規契約の主契約について一時払したとして、会計処理を行います。

そして、両者の差額は、転換時の損益として計上します。

既契約の定期保険が、保険料を全額損金計上する契約である場合は、既払保険料の資産計上額が無いため、転換価額は全額、転換時の雑収入となります。

転換後の保険料支払い時においては、新規契約の保険種類に応じて、通常通り会計処理を行いますが、主契約の保険料については、転換価額が充当されている分、全く新規で契約した同様の保険契約よりも支払保険料の額は低く設定されています。
【参考文献】
法人税基本通達9-3-7
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業のほけんをめぐる税務/第1章2(1)』一般財団法人大蔵財務協会
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第2章⒒』税務研究会出版局
下記では、定期保険契約の基本転換の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業のほけんをめぐる税務/第1章2(1)Q&A15』一般財団法人大蔵財務協会
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第2章⒒(1)⑤』税務研究会出版局
前提条件
A社は全従業員を対象に契約していた定期保険を、令和2年3月31日において、下記の条件で定期付養老保険に転換した。
・転換価額は10,000千円であり、全額、新契約の主契約で
 ある養老保険に充当される
・既契約及び新契約の定期保険は、解約返戻金のないもので
 ある
・新契約の定期付養老保険の保険期間20年である
・既契約及び新規契約の保険金受取人は、全て法人である
・転換後の新契約については、毎年3月31日に年額200千円
 (養老保険部分180千円
 +定期保険特約部分20千円)を後払
 する
【A社の会計処理】
① 令和2年3月31日(転換時)
借方 貸方
保険積立金 10,000千円※1 雑収入 10,000千円※1
※1転換価額
既契約の定期保険は解約返戻金が無く、支払保険料を『時の経過に応じて損金計上』する保険契約であるため、既払保険料の資産計上額はなく、転換価額は全額雑収入に計上し、相手勘定で新規契約の主契約である養老保険の保険積立金を計上します。
② 令和3年3月31日(新契約保険料支払時)
借方 貸方
保険積立金 180千円※3
保険料 20千円※4
現金 200千円※2
※2支払保険料
※3養老保険部分の支払保険料
※4定期保険部分の支払保険料
転換後の支払保険料は、通常の定期付養老保険と同様に会計処理を行います。
次のページでは、定期保険契約の転換の会計処理(定期転換)について具体的にご紹介します。