養老保険から延長定期保険へ変更する場合の会計処理

【延長定期保険への変更とは】

養老保険等の契約途中において保険料の払込をストップし、その解約返戻金を一時払保険料として定期保険に変更すること。

※保険料の払込ストップ後も、定期保険とし
 ての保険期間が延長継続

※一般的に、変更前の養老保険等と同じ保障
 (死亡保険金)が受けられる

※変更後の保険期間は解約返戻金の金額に応
 じて算定

※保険期間は最長でも既契約の保険期間まで

※計算の結果既契約の保険期間を超える場
 合、超過分の保険料は保険期間満了時の生
 存保険金に充当
保険契約者が経済的事情等で、契約している養老保険の保険料払込が不可能になった場合、既存契約の解約返戻金(保険会社にとっての責任準備金)を一時払の保険料に充当し、定期保険に変更することで、保険料の払込をストップした後も、保障を受けることができます。

このようは変更を、延長定期保険への変更といいます。

変更後の定期保険の保証期間は、充当された解約返戻金の多寡に応じて決定され、通常、この期間内は変更前の養老保険等と同じ保障(死亡保険金)が受けられます。

ただし、変更後の保険期間は、最長でも既契約の養老保険等の保険期間までとされており、解約返戻金から算定した結果、その保険期間を超える場合は、超過分の保険料は、生存保険金に充当され、保険期間満了時に生存保険金として受取ることになります。
【延長定期保険への変更時の会計処理】
生存保険金の有無 会計処理

生存保険金なし

■変更時
変更時点の保険料の資産計上額と解約返戻金相当額の差額を、変更日の属する事業年度の益金又は損金の額に算入。
 
 【仕訳イメージ】
 (前払保険料)XXX 
     (保険積立金)XXX
          (雑収入)XXX

■変更後
変更後は、解約返戻金相当額を延長保険期間経過に応じて損金算入。
 
 【仕訳イメージ】
 (保険料)XXX 
     (前払保険料)XXX

生存保険金あり

■変更時
変更時点の保険料の資産計上額と解約返戻金相当額の差額を、変更日の属する事業年度の益金又は損金の額に算入。
 
 【仕訳イメージ】
 (保険積立金)XXX 
     (保険積立金)XXX
          (雑収入)XXX

■変更後
経理処理不要。
生死混合保険である養老保険を延長定期保険へ変更する際には、資産計上している既払保険料と、延長定期保険に充当される解約返戻金相当額の差額を、変更日の属する事業年度の損金又は益金の額に算入します。

定期保険の保険料充当額となった解約返戻金相当額については、生存保険金が無い場合と有る場合でその会計処理が異なります。

生存保険金が無い場合、解約返戻金相当額は変更時前払費用として計上し、延長保険期間の経過に応じて損金の額に算入します。

生存保険金が有る場合、解約返戻金相当額は資産計上し、延長保険期間の満了、又は、契約の失効までは損金となりません。
下記では、養老保険から延長定期保険へ変更する場合の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章3⃣(2)』税務研究会出版局
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第1章2(3)Q&A19』一般財団法人大蔵財務協会
前提条件
A社は全従業員を対象に養老保険(保険金受取人は法人)を契約していたが、令和2年3月31日において、下記の条件で延長定期保険に変更した
・変更時の保険料積立金残高1,200千円
・変更時の解約帰戻金相当額1,000千円
・変更後の保険期間は20年
・A社の決算日は3月31日
【生存保険金が支払われないケース】
①令和2年3月31日(延長定期保険への変更時)
借方 貸方
前払保険料 1,000千円※1
雑損失 200千円※3
保険積立金 1,200千円※2
※1変更時の解約帰戻金相当額
※2変更時の保険料積立金残高
※3貸借差額
変更時点の保険積立金を取り消すと共に、相手勘定で解約返戻金相当額を前払保険料として計上し、両者の差額を、雑損益に計上します。
②令和3年3月31日(決算時)
借方 貸方
保険料 50千円※4 前払保険料 50千円※4
※4前払保険料計上額1,000千円÷延長保険期間20年
変更時に前払保険料計上した金額を延長保険期間で除した額を、当期保険料として費用へ振替えます。
【生存保険金が支払われるケース】
①令和2年3月31日(延長定期保険への変更時)
借方 貸方
保険積立金 1,000千円※1
雑損失 200千円※3
保険積立金 1,200千円※2
※1変更時の解約帰戻金相当額
※2変更時の保険料積立金残高
※3貸借差額
変更時点の保険積立金を取り消すと共に、相手勘定で解約返戻金相当額を保険積立金として計上し、両者の差額を、雑損益に計上します。
②令和3年3月31日(決算時)
仕訳なし。
資産計上した解約返戻金相当額は、延長保険期間の満了、又は、契約の失効までは損金となりません。
次のページでは、養老保険の名義を法人から他法人へ有償で変更する場合の会計処理について具体的にご紹介します。