売買目的有価証券に分類される上場株式の株式無償割当て時の会計処理

【株式無償割当てとは】


 発行済株式数に応じて、新株又は自己株式
 の交付を行うこと。
 下記の2点で株式分割とは異なる。

  相違点1:異なる種類株や自己株を交付
       可能
  相違点2:自己株式には交付されない

 メリット :株式の流通性が上がる

 デメリット:発行会社の株式管理コストが
       増加する
株式無償割当てとは、既に発行されている株式に応じて、新株又は自己株式の交付を行うことを言います。

新規の払込なく、新しい株式が割り当てられるという点では、株式分割と同様です。

そのため、株式分割と同様に、株式分割により株式をより小さい単位とすることで、株式の流通性が上がるというメリットがある半面、株式を発行している会社においては、株式管理の事務手続が煩雑になり、管理コストが増加していまうというデメリットがあります。

ただし、株式無償割当てでは、株式分割と異なり、異なる種類株や自己株を割り当てることができます。

さらに、株式発行会社が保有している自己株式については、割り当ての対象とはならないという点も、株式分割との相違点として挙げられます。
【保有している株式の株式無償割当ての
               会計処理】
 仕訳処理なし

 ※帳簿管理上で持ち株数を修正

 (持ち株数は増えるが、価値総額は変わらな
 いため)
株式無償割当てが実施されると、株式数が増えるため、既に株式を保有している投資家には、分割された株式が割り当てられます。

このように株式数は増えるものの、会社の価値は変わらないので、基本的には分割された分だけ1株当たりの価格が修正され、理論上は、保有株式の価値は分割前と同額となります。

そのため、保有している株式について株式無償割当てが行われた場合であっても、帳簿管理上で持ち株数を修正するのみで、会計仕訳は何も計上しません。
下記では、売買目的有価証券に分類される上場株式の株式無償割当て時の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社は上場企業であるB社の株式について、下記の取引を行った。

・X1年4月1日時点で、B社株式10,000株を保有している
・X1年4月1日におけるB社株式10,000株の帳簿価額は
 5,000千円であった
・X1年4月2日にB社株式1株に1株を割り当てる、株式無償
 割当てが行われ、新たに10,000株を
 割り当てられた
・X1年4月2日にの無償割当て前のB社株式の株価は@490円
 であった
・X1年4月30日にB社株式10,000株を一株当り@260円で
 売却した
・B社株式は将来の値上がりにより利益を得る目的で取得
 している
・売買目的有価証券の評価損益については洗替法により
 処理する
・A社の決算日は3月31日
① X1年4月2日(割当時)
仕訳なし
新たに割り当てられた株式を取得しますが、資金の移動も実質価値の増加もなく、株式数が増加したにすぎないため、会計処理は行いません。
② X1年4月30日(売却時)
借方 貸方
現金預金 2,600千円※1 有価証券 2,500千円※2
有価証券売却益 100千円※3
※1B社株式一株当り売却価額@260円×売却株式数10,000株
※2B社株式帳簿価額総額5,000千円÷持ち株数20,000株
  ×売却株式数10,000株
※3貸借差額
無償割当て後の一株当帳簿価額を基に、売却したB社株式の売却原価と売却損益を計上します。
次のページでは、売買目的有価証券に分類される上場株式の株式併合時の会計処理について具体的にご紹介します。