上場株式の保有目的区分の変更

【上場株式の保有目的区分の変更要件】

上場株式の保有目的区分は、正当な理由なく変更することはできず、下記の場合のみ認められる。

・資金運用方針の変更又は特定の状況の発生
 に伴う変更

・持分比率等の変動による子会社株式又は
 関連会社株式化又は、その逆

・法令又は基準等の改正又は適用に伴う変更

・その他有価証券の売買を頻繁に繰り返した
 ことが客観的に認められる場合の売買目的
 有価証券への変更
上場株式を含む有価証券の保有目的区分は、正当な理由なく、変更することはできません。

会計基準上は、限られた場合のみ変更が認められるとし、それを列挙しています。

具体的には、資金運用方針の変更、又は、法令若しくは基準等の改正若しくは適用に伴い、売買目的有価証券のトレーディング取引を行わないことになった場合、又は、その他有価証券のトレーディング取引を開始することとした場合、売買目的有価証券とその他有価証券の間での区分の変更が認められます。

さらに、株式の追加取得又は売却により持分比率等が変動したことに伴い、子会社株式又は関連会社株式の持分比率が20%未満になった場合、又はその逆に、20%以上になった場合は、子会社株式又は関連会社株式と、売買目的有価証券又はその他有価証券との間での区分の変更が認められます。

また、その他有価証券に区分しているのにも関わらず、売買を頻繁に繰り返したことが客観的に認められる場合は、売買目的有価証券への区分変更を行わなければなりません。 【根拠資料】
金融商品会計に関する実務指針第80・85・86・87・88項
【上場株式の保有目的区分の変更の会計処理】
変更前区分 変更後区分 振替時会計処理
 売買目的有価証券  子会社株式
及び関連会社株式
【振替額】
 変更時時価

【評価差額】
 評価差額は『有価要件運用損益』等で
 振替時に損益計上
 
※変更を期中に実施しても、期首に
  あったものとみなして振替処理可
 その他有価証券 【振替額】
 変更時時価

【評価差額】
 評価差額は『有価要件運用損益』等で
 振替時に損益計上
 その他有価証券  売買目的有価証券 【振替額】
 変更時時価

【評価差額】
 『有価証券評価損益』等で振替時に
 損益計上
 子会社株式
及び関連会社株式
①全部純資産直入法の場合

【振替額】
 変更時帳簿価額
 ※洗替処理後

②部分純資産直入法で評価益の場合

【振替額】
 変更時帳簿価額
 ※洗替処理後

③部分純資産直入法で評価損の場合

【振替額】
 時価による評価後価額
 
※変更を期中に実施しても、期首に
  あったものとみなして振替処理可
 子会社株式
及び関連会社株式
 売買目的有価証券 【振替額】
 変更時帳簿価額
 
※変更を期中に実施しても、期首に
  あったものとみなして振替処理可
 その他有価証券 【振替額】
 変更時帳簿価額
 
※変更を期中に実施しても、期首に
  あったものとみなして振替処理可
売買目的有価証券として保有していた株式の追加取得により、持分比率が20%以上になった場合は、子会社株式又は関連会社株式へ振替を行います。

その際には、持分比率が増加した日の時価をもって、子会社株式又は関連会社株式を計上します。

時価評価差額については、『有価証券運用損益』等の勘定科目で、振替え時の純損益に計上します。

また、変更を期中に実施しても、期首にあったものとみなして振替処理をすることができます。 【根拠資料】
金融商品会計に関する実務指針第81・87項・[設例8]
売買目的有価証券への分類はその取得当初の意図に基づいて行われるものであるため、取得後におけるその他有価証券への振替は、原則として認められません。

ただし、資金運用方針の変更、又は法令若しくは基準等の改正若しくは適用に伴い、トレーディング取引を行わないこととした場合には、全ての売買目的有価証券をその他有価証券に振り替えることが認められます。

その際には、振替え時の時価をもって、その他有価証券を計上します。

時価評価差額については、『有価証券運用損益』等の勘定科目で、振替え時の純損益に計上します。 【根拠資料】
金融商品会計に関する実務指針第85項・[[設例8]
その他有価証券への分類はその取得当初の意図に基づいて行われるものであるため、取得後における売買目的有価証券への振替は、原則として認められません。

ただし、資金運用方針の変更、又は法令若しくは基準等の改正若しくは適用に伴い、トレーディング取引を開始することとした場合には、その他有価証券を売買目的有価証券に振り替えることが認められます。

また、その他有価証券に区分しているのにも関わらず、売買を頻繁に繰り返したことが客観的に認められる場合は、売買目的有価証券へ区分を変更しなければなりません。

その際には、振替え時の時価をもって、その他有価証券を計上します。

時価評価差額については、『有価証券評価損益』等の勘定科目で、振替え時の純損益に計上します。 【根拠資料】
金融商品会計に関する実務指針第86項・[設例8]
その他有価証券として保有していた株式の追加取得により、持分比率が20%以上になった場合は、子会社株式又は関連会社株式へ振替を行います。

その際には、基本的には、期首の洗替処理後の帳簿価額をもって、子会社株式又は関連会社株式を計上します。

ただし、その他有価証券の評価差額の会計処理として部分純資産直入法を採用しており、かつ、対象の有価証券について評価差損を計上している場合は、時価による評価後の価額で振替を行います。

部分純資産直入法で評価損が出ている場合については、変更を期中に実施しても、期首にあったものとみなして振替処理をすることができます。 【根拠資料】
金融商品会計に関する実務指針第81・88項・[設例8]
子会社株式又は関連会社株式として保有していた株式の売却により、持分比率が20%未満になった場合は、新たな保有目的に則って、売買目的有価証券又はその他有価証券へ振替を行います。

その際には、帳簿価額をもって、新しい保有目的区分の有価証券を計上します。

また、変更を期中に実施しても、期首にあったものとみなして振替処理をすることができます。

なお、持分比率の減少が、子会社又は関連会社を結合企業とする企業結合により起こったものである場合の、子会社株式又は関連会社株式からその他有価証券への振替の会計処理は、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」第288項又は第290項を適用して行います。 【根拠資料】
金融商品会計に関する実務指針第81・89項
次のページでは、上場株式の保有目的区分を売買目的有価証券から子会社株式及び関連会社株式に変更する場合の会計処理について具体的にご紹介します。