貸倒損失とは

【貸倒損失とは】
金銭債権の回収不能による損失
売掛金や貸付金、受取手形、未収入金、立替金等の金銭債権が回収できなくなることを貸倒と言います。

そして、このような金瀬債権の回収不能による損失を、貸倒損失といいます。
【法人税法で貸倒の事実有と判断されるケース】
要件 内容

法律上の貸倒

・更生計画認可の決定

・再生計画認可の決定

・特別清算に係る協定認可の
 決定

・債権者集会の協議決議での
 負債整理

・金融機関等の斡旋による
 当事者間の協議決定での
 
 債務整理

・債務超過の状態が相当期間
 継続しており、弁済可能
 
 がないと認められる債務者
 への書面による
 免除通知

事実上の貸倒

・金銭債権の全額が回収でき
 ないことが明らかな場合

 ※『全額』でなければなら
  ない

 ※担保は処分後でなければ
  ならない

形式上の貸倒

・取引停止後1年以上経過
 後、弁済が無い場合
 (継続取引に係る債権のみ
 が対象)

・取立費用が債権額を超え、
 催促しても弁済が無い
 場合
貸倒を損失として計上するには、『貸し倒れている』事実が必要です。

法人税法基本通達では、法人税法上で貸倒損失として計上できるケースとして、法律上の貸倒、事実上の貸倒、形式上の貸倒の3つが挙げられており、財務会計上でも貸倒の事実があると認められるか判断する際に参考になります。
法律上の貸倒では、法律的に金銭債権が消滅する事象が発生しているかどうかで、貸倒の事実を判断します。

具体的な事象としては、会社更生法の更生計画認可の決定、民事再生法の再生計画認可の決定、会社法の特別清算に係る協定認可の決定、などの法令の規定による整理手続き、及び、債権者集会の協議や金融機関等の斡旋による当事者の協議など、当事者間の取決めを行った等があります。

また、債務超過の状態が相当期間継続しており、債務者に弁済能力が無いと認められる場合は、債務免除を書面で通知することで、貸倒の事象有りと認められます。 【根拠資料】
法人税基本通達9-6-1
事実上の貸倒では、債務者の資産状況、支払い能力等から見て、その全額を回収できるかどうかで、貸倒の事実を判断します。

債務者の返済能力があるかどうかについては、相手先の決算書、信用調査会社のレポート、取引先から戻ってきた宛先不明郵便、債権督促の記録、議事録等社内資料等から、総括的に判断します。 【根拠資料】
法人税基本通達9-6-2
形式上の貸倒では、債務者との取引状況、又は、債権の取立費用から、形式に貸倒の事実を判断します。

具体的には、2つのケースに当てはまる場合に、貸倒の事実があると判断します。

1つ目は、売掛金等の継続的な取引の債権について、最後の取引から1年以上弁済が無いケースです。

この場合の債権の対象は、継続取引が前提となるため、不動産取引のように、単発で行った取引に係る債権は対象外です。

2つ目は、催促しても弁済が無く、遠隔地である等の理由により、取立費用が債権額を超えるケースです。

このような場合、取立を行うことで会社に損失が発生するため、貸倒損失の計上が認められています。 【根拠資料】
法人税基本通達9-6-3
下記では、貸倒損失の仕訳について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社は、得意先B社との間で下記の取引を行った。

・X1年4月1日に10,000千円を掛けで売り上げた
・X1年5月1日にB社が倒産し、売掛金10,000千円が全額貸倒
 となった
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(売上時)
借方 貸方
売掛金 10,000千円※1 売上高 10,000千円※1
※1B社への売上金額
通常の掛売上げの仕訳を計上します。
② X1年5月1日(貸倒時)
借方 貸方
貸倒損失 10,000千円※2 売掛金 10,000千円※2
※2貸倒となった売掛金金額
貸し倒れた売掛金をマイナスし、相手勘定で貸倒損失を計上します。
次のページでは、貸倒引当金とは何かについて具体的にご紹介します。