研究開発とは

研究開発の定義

研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探求をいう。

開発とは、新しい製品・サービス・生産方法についての計画もしくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することをいう。
(研究開発費等に係る会計基準一の1)

会計基準では上記のように、従来製品やサービスにない新たな製品・サービスを生み出すための調査・探究活動や、既存の製品・サービスに関する著しい改良をするための活動を、研究・開発と定義しています。 (研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する
実務指針26項
研究開発費に係る会計基準の設定に関する意見書三の1)
その上で、これらの活動により発生する研究開発費は、将来収益を獲得できるかが不明確であるため、会社の資産としては計上することはできず、発生時の費用として処理しなければならないと定めています。

場合によっては研究開発計画が進行し、将来の収益獲得期待が高まるようなケースがあるかもしれません。そのような場合でも、会計基準における研究開発費に該当する限り、資産計上は認められず全額費用計上しなければなりません。

それは、たとえ収益獲得の期待が高まったとしても依然としてその獲得が確実ではないこと、また、仮に一定の要件を持たすものについて資産計上を認める処理を採用しようとしても、実務上当該要件の設定が困難であり、抽象的な要件のもとで資産計上を認めると重要な情報である研究開発費の企業間の比較可能性が損なわれることから、現行のルールでは全額を費用計上するとされています。(研究開発費等に係る会計基準三
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A-Q1
研究開発費に係る会計基準の設定に関する意見書三の2)
一方で、財務諸表等規則第36条には、繰越資産として計上すべき支出の一つとして、開発費が掲げられています。

財務諸表等規則で掲げられている開発費は、新技術又は新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓等のために支出した費用と規定されており、これは、会計基準で定義されている開発を包含する、より大きな範囲の活動を指しています。

そのため、財務諸表等規則の「開発費」に該当するものは、基本的に繰延資産に計上するのですが、その中でも会計基準で定義された「開発」に該当するものについては資産性が低いため、発生時に一括で費用として処理しなければならいという整理になります。 (財務諸表等規則ガイドライン36-5
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する
実務指針27項)
支出した費用が会計基準で定義されている研究開発費に含まれるかどうかは、その活動の内容が実質的に研究開発活動に該当するかどうかで判断します。

具体的には、従来製造又は提供していた業務にはない、全く新しいものを生み出すための調査・探究活動や、現在製造又は提供している業務についての著しい改良を含んでいるかどうかで判定します。

したがって、現在製造又は提供している業務を前提とした場合で、著しい改良・改善に該当しない場合は、研究・開発に該当しないと判断されます。

会計基準では、研究・開発に含まれる典型例及び含まれない典型例として、下記を例示しています。
【研究・開発に含まれるもの】
(1)従来にはない製品、サービスに関する
 発想を導き出すための調査・探究

(2)新しい知識の調査・探究の結果を受け、
 製品化、業務化等を行うための活動

(3)従来の製品に比較して著しい違いを作り
 出す製造方法の具体化

(4)従来と異なる原材料の使用方法又は部品の
 製造方法の具体化

(5)既存の製品、部品に係る従来と異なる
 使用方法の具体化

(6)工具、治具、金型等について、従来と異な
 る使用方法の具体化

(7)新製品の試作品の設計・製作及び実験

(8)商業生産化するために行うパイロット
 プラントの設計、建設等の計画

(9)取得した特許を基にして販売可能な製品を
 製造するための技術的活動 (研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する
実務指針2項)
【研究・開発に含まれないもの】
(1)製品を量産化するための試作

(2)品質管理活動や完成品の製品検査に関する
 活動

(3)仕損品の手直し、再加工など

(4)製品の品質改良、製造工程における
 改善活動

(5)既存製品の不具合などの修正に係る設計
 変更及び仕様変更

(6)客先の要望等による設計変更や仕様変更

(7)通常の製造工程の維持活動

(8)機械設備の移転や製造ラインの変更

(9)特許権や実用新案権の出願などの費用

(10)外国などからの技術導入により製品を製造
 することに関する活動

(11)クレーム処理のための活動 (研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する
実務指針26項
研究開発費に係る会計基準の設定に関する意見書三の1)
次のページでは、費用計上される開発費と繰延資産計上される開発費の違いについて具体的にご紹介します。