その他有価証券に分類される公社債の償却原価法
(利払日と決算日が一致しないケース)

【その他有価証券に分類される債権の会計処理】

対象 会計処理

取得差額が金利調整差額と認められる債券

【期末時】
ステップ1:償却額を計上し帳簿価額を償却原価に調整

ステップ2:償却原価と時価の差額を全部資本直入法、
      又は、部分資本直入法により会計処理

【翌期首時】
上記ステップ2の反対仕訳により洗替

上記以外

【期末時】
ステップ1:取得価額と時価の差額を全部資本直入法、
      又は、部分資本直入法により会計処理

【翌期首時】
上記ステップ1の反対仕訳により洗替
その他有価証券に分類される公社債のうち、債権の額面金額より低い価格又は、高い価格で取得した場合で、差額の性格が金利の調整と認められる場合には、償却原価法が適用されます。

そのため、期末の会計処理としては、まず、金利調整差額の償却額を計上して、公社債の帳簿価額を償却原価に調整します。

その後、償却原価と期末時価の差額で評価差額を算定し、全部資本直入法、又は、部分資本直入法により会計処理します。

翌期首においては、償却原価と前期末時価の評価差額を計上した仕訳の逆仕訳を計上することで、洗替を行います。

それに対して、取得差額が金利調整差額と認められるもの以外については、その他有価証券に区分された株式と同様に、取得価額と時価の差額を、評価差額として、会計処理を行います。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第74項・[設例6]
『差額の性格が金利の調整と認められる場合』とは、差額がクーポンレートと取得時の市場利子率との調整に基づくものである場合を言います。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第70項
【償却額の計算方法】
 原則:利息法
 例外:定額法

【償却額の会計処理】
 損益:金利調整差額として有価証券利息に計上
 資産:公社債の簿価に加算(償却原価でBS計上)
償却原価法では、その差額分を受渡日から償還日にわたって期間配分します。

償却原価法における各期の償却額の算定方法は、原則として利息法によりますが、継続適用を条件に、簡便法である定額法を採用することもできます。

利息法とは、債券のクーポン受取総額と金利調整差額の合計額を債券の帳簿価額に対し一定率となるように、複利をもって各期に配分する方法です。

それに対して定額法は、債券の金利調整差額を取得日から償還日までの期間で除して各期に配分する方法です。

いずれも、期間配分された償却額は、PLでは有価証券利息へ計上され、BSでは公社債の帳簿価額に加減されます。

満期保有目的の債権に該当する公社債は、基本的には取得価額でBS計上されますが、償却原価法を適用する場合は、償却原価(償却原価法に基づいて算定された価額)をもって、貸借対照表価額とされます。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第70項・[設例4]
【利払日≠決算日の利息法における各期の償却額の計算】

当期計上償却額=利払日を基準にして計算した償却額÷12カ月×当期月数
償却原価法の利息法を適用する際に、利払日と決算日が異なる場合、利払日を基準にして計算した償却額を月割して、各期に配分する金利調整差額を算定します。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針[設例4]・[設例6]
下記では、その他有価証券に分類される公社債に償却原価法を適用する場合の、利払日と決算日が一致しないケースの例を使用して、会計処理をご紹介します。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針[設例4]
前提条件
A社はB社社債について、下記の取引を行った。

・X1年1月1日にB社社債額面総額10,000千円を9,728千円で取得した
・B社社債の満期日はX3年12月31日である
・B社社債のクーポン利子率は4%である
・B社社債の利払日は毎年12月31日である
・B社社債の額面と購入価額の差額は金利の調整と認められる
・X1年3月31日におけるB社社債の時価は9,864千円であった
・X2年3月31日におけるB社社債の時価は9,805千円であった
・X3年3月31日におけるB社社債の時価は9,000千円であった
・B社社債はその他有価証券に区分されている
・その他有価証券の会計処理は全部資本直入法を適用している
・実効税率は40%である
・B社社債は満期保有目的の債権に区分されている
・A社の決算日は3月31日である
【原則:利息法での会計処理】
■実効利子率の算定
毎期のクーポン利子=額面10,000千円×4%=400千円

クーポン利子400千円÷(1+r)+クーポン利子400千円÷(1+r)^2+(クーポン利子400千円+額面総額10,000千円)÷(1+r)^3
=9,728千円
r=5%
① X1年1月1日(取得時)
借方 貸方
投資有価証券 9,728千円※1 現金預金 9,728千円※1
※1B社社債購入価額
B社社債購入価額を投資有価証券として資産計上します。
② X1年3月31日(決算日)
借方 貸方
未収有価証券利息 100千円※2
投資有価証券 22千円※4
投資有価証券 114千円※5
有価証券利息 122千円※3

繰延税金負債 46千円※6
その他有価証券評価差額金 68千円※7
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月×3カ月=100千円
※3(B社社債帳簿価額9,728千円×実効利子率5%)÷12カ月×3カ月=122千円
※4(B社社債帳簿価額9,728千円×実効利子率5%-額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月×3カ月=22千円
※5B社社債期末時価9,864千円-償却原価(9,728千円+22千円)
※6評価差額114千円×実効税率40%
※7評価差額114千円-繰延税金負債46千円
当期に帰属する未収のクーポン利息を未収有価証券利息として計上すると同時に、利払日を基準にして計算した償却額の内、当期の期間に帰属する部分を償却額として投資有価証券に計上します。両者の合計額(=実効利子率で算定した利子額)を有価証券利息として計上します。償却額調整後の償却原価と時価の差額を税効果を加味したうえで評価差額として計上します。
③ X1年4月1日(期首)
借方 貸方
有価証券利息 100千円※2
繰延税金負債 46千円※6
その他有価証券評価差額金 68千円※7
未収有価証券利息 100千円※2
投資有価証券 114千円※5
※2前期計上未収有価証券利息
※5B社社債期末時価9,864千円-償却原価(9,728千円+22千円)
※6評価差額114千円×実効税率40%
※7評価差額114千円-繰延税金負債46千円
前期に計上した未収有価証券利息の再振替仕訳を計上します。同時に、評価差額について洗替処理を行います。
④ X1年12月31日(第一回利払日)
借方 貸方
現金預金 400千円※8
投資有価証券 64千円※10
有価証券利息 464千円※9
※8額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※9B社社債前期間帳簿価額9,728千円×実効利子率5%-前期計上済償却額22千円
※10(B社社債前期間帳簿価額9,728千円×実効利子率5%-額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月×9カ月
受領したクーポン利子を現金預金に計上すると同時に、実効利子率で計算した利子額から前期計上済みの償却額を控除した金額を、有価証券利息に計上します。利払日を基準にして計算した償却額の内、当期の月数に帰属する部分を投資有価証券に加算して帳簿価額を調整します。
⑤ X2年3月31日(決算日)
借方 貸方
未収有価証券利息 100千円※2
投資有価証券 23千円※12
繰延税金資産 13千円※14
その他有価証券評価差額金 19千円※15
有価証券利息 123千円※11

投資有価証券 32千円※13
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月×3カ月=100千円
※11(B社社債帳簿価額9,814千円×実効利子率5%)÷12カ月×3カ月=123千円
※12(B社社債帳簿価額9,814千円×実効利子率5%-額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月×3カ月=23千円
※13B社社債期末時価9,805千円-償却原価(9,814千円+23千円)
※14評価差額32千円×実効税率40%
※15評価差額32千円-繰延税金資産13千円
前回の決算日と同様の会計処理を行います。
⑥ X2年4月1日(期首)
借方 貸方
有価証券利息 100千円※2
投資有価証券 32千円※13
未収有価証券利息 100千円※2
繰延税金資産 13千円※14
その他有価証券評価差額金 19千円※15
※2前期計上未収有価証券利息
※13B社社債期末時価9,805千円-償却原価(9,814千円+23千円)
※14評価差額32千円×実効税率40%
※15評価差額32千円-繰延税金資産13千円
前期に計上した未収有価証券利息の再振替仕訳を計上します。同時に、評価差額について洗替処理を行います。
⑦ X2年12月31日(第二回利払日)
借方 貸方
現金預金 400千円※5
投資有価証券 68千円※17
有価証券利息 468千円※16
※5額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※16B社社債前期間帳簿価額9,814千円×実効利子率5%-前期計上済償却額23千円
※17(B社社債前期間帳簿価額9,814千円×実効利子率5%-額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月×9カ月
前回の利払日と同様の会計処理を行います。
⑧ X3年3月31日(決算日)
借方 貸方
未収有価証券利息 100千円※2
投資有価証券 24千円※19
その他有価証券評価差額金 929千円※20
有価証券利息 124千円※18

繰延税金資産 372千円※21
その他有価証券評価差額金 557千円※22
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月×3カ月=100千円
※18(B社社債帳簿価額9,905千円×実効利子率5%)÷12カ月×3カ月=124千円
※19(B社社債帳簿価額9,905千円×実効利子率5%-額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月×3カ月=24千円
※20B社社債期末時価9,000千円-償却原価(9,905千円+24千円)
※21評価差額929千円×実効税率40%
※22評価差額929千円-繰延税金資産372千円
前回の決算日と同様の会計処理を行います。
⑨ X3年4月1日(期首)
借方 貸方
有価証券利息 100千円※2
繰延税金資産 372千円※21
その他有価証券評価差額金 557千円※22
未収有価証券利息 100千円※2
その他有価証券評価差額金 929千円※20
※2前期計上未収有価証券利息
※20B社社債期末時価9,000千円-償却原価(9,905千円+24千円)
※21評価差額929千円×実効税率40%
※22評価差額929千円-繰延税金資産372千円
前期に計上した未収有価証券利息の再振替仕訳を計上します。同時に、評価差額について洗替処理を行います。
⑩ X3年12月31日(第三回利払日&償還日)
借方 貸方
現金預金 400千円※5
投資有価証券 71千円※24
現金預金 10,000千円※16
有価証券利息 471千円※23

投資有価証券 10,000千円※25
※5額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※23B社社債前期間帳簿価額9,905千円×実効利子率5%-前期計上済償却額24千円
※24(B社社債前期間帳簿価額9,905千円×実効利子率5%-額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月×9カ月
※25社債償還額
利息の計上については、前回の利払日と同様の会計処理を行います。同時に、償還された社債をマイナスし、相手勘定で受領した現金預金を資産計上します。

【例外:定額法での会計処理】
① X1年1月1日(取得時)
借方 貸方
投資有価証券 9,728千円※1 現金預金 9,728千円※1
※1B社社債購入価額
B社社債購入価額を投資有価証券として資産計上します。
② X1年3月31日(決算日)
借方 貸方
未収有価証券利息 100千円※2
投資有価証券 23千円※3
投資有価証券 113千円※5
有価証券利息 100千円※2
有価証券利息 23千円※3
繰延税金負債 45千円※6
その他有価証券評価差額金 68千円※7
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月×3カ月=100千円
※3(B社社額面総額10,000千円-B社社債帳簿価額9,728千円)÷利息期間3年÷12カ月×3カ月=23千円
※5B社社債期末時価9,864千円-償却原価(9,728千円+23千円)
※6評価差額113千円×実効税率40%
※7評価差額113千円-繰延税金負債45千円
当期に帰属する未収のクーポン利息を未収有価証券利息及び有価証券利息として計上します。同時に、月割で算定した当期の償却額についても有価証券利息に計上し、相手勘定で投資有価証券の帳簿価額を調整します。償却額調整後の償却原価と時価の差額を税効果を加味したうえで評価差額として計上します。
③ X1年4月1日(期首)
借方 貸方
有価証券利息 100千円※2
繰延税金負債 45千円※6
その他有価証券評価差額金 68千円※7
未収有価証券利息 100千円※2
投資有価証券 113千円※5
※2前期計上未収有価証券利息
※5B社社債期末時価9,864千円-償却原価(9,728千円+23千円)
※6評価差額113千円×実効税率40%
※7評価差額113千円-繰延税金負債45千円
前期に計上した未収有価証券利息の再振替仕訳を計上します。同時に、評価差額について洗替処理を行います。
④ X1年12月31日(第一回利払日)
借方 貸方
現金預金 400千円※8
投資有価証券 68千円※9
有価証券利息 400千円※8
有価証券利息 68千円※9
※8額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※9(B社社額面総額10,000千円-B社社債帳簿価額9,728千円)÷利息期間3年÷12カ月×9カ月=68千円
受領したクーポン利子を現金預金及び有価証券利息に計上します。同時に、月割で算定した当期の償却額についても有価証券利息に計上し、相手勘定で投資有価証券の帳簿価額を調整します。
⑤ X2年3月31日(決算日)
借方 貸方
未収有価証券利息 100千円※2
投資有価証券 23千円※3
繰延税金資産 15千円※11
その他有価証券評価差額金 22千円※12
有価証券利息 100千円※2
有価証券利息 23千円※3
投資有価証券 37千円※10
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月×3カ月=100千円
※3(B社社額面総額10,000千円-B社社債帳簿価額9,728千円)÷利息期間3年÷12カ月×3カ月=23千円
※10B社社債期末時価9,805千円-償却原価(9,819千円+23千円)
※11評価差額37千円×実効税率40%
※12評価差額37千円-繰延税金資産15千円
前回の決算日と同様の会計処理を行います。
⑥ X2年4月1日(期首)
借方 貸方
有価証券利息 100千円※2
投資有価証券 37千円※10
未収有価証券利息 100千円※2
繰延税金資産 15千円※11
その他有価証券評価差額金 22千円※12
※2前期計上未収有価証券利息
※10B社社債期末時価9,805千円-償却原価(9,819千円+23千円)
※11評価差額37千円×実効税率40%
※12評価差額37千円-繰延税金資産15千円
前期に計上した未収有価証券利息の再振替仕訳を計上します。同時に、評価差額について洗替処理を行います。
⑦ X2年12月31日(第二回利払日)
借方 貸方
現金預金 400千円※8
投資有価証券 68千円※9
有価証券利息 400千円※8
有価証券利息 68千円※9
※8額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※9(B社社額面総額10,000千円-B社社債帳簿価額9,728千円)÷利息期間3年÷12カ月×9カ月=68千円
前回の利払日と同様の会計処理を行います。
⑧ X3年3月31日(決算日)
借方 貸方
未収有価証券利息 100千円※2
投資有価証券 23千円※3
繰延税金資産 373千円※14
その他有価証券評価差額金 560千円※15
有価証券利息 100千円※2
有価証券利息 23千円※3
投資有価証券 933千円※13
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月×3カ月=100千円
※3(B社社額面総額10,000千円-B社社債帳簿価額9,728千円)÷利息期間3年÷12カ月×3カ月=23千円
※13B社社債期末時価9,000千円-償却原価(9,910千円+23千円)
※14評価差額933千円×実効税率40%
※15評価差額933千円-繰延税金資産373千円
前回の決算日と同様の会計処理を行います。
⑨ X3年4月1日(期首)
借方 貸方
有価証券利息 100千円※2
投資有価証券 933千円※13
未収有価証券利息 100千円※2
繰延税金資産 373千円※14
その他有価証券評価差額金 560千円※15
※2前期計上未収有価証券利息
※13B社社債期末時価9,000千円-償却原価(9,910千円+23千円)
※14評価差額933千円×実効税率40%
※15評価差額933千円-繰延税金資産373千円
前期に計上した未収有価証券利息の再振替仕訳を計上します。同時に、評価差額について洗替処理を行います。
⑩ X3年12月31日(第三回利払日&償還日)
借方 貸方
現金預金 400千円※8
投資有価証券 67千円※9
現金預金 10,000千円※16
有価証券利息 400千円※8
有価証券利息 67千円※9
投資有価証券 10,000千円※16
※8額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※9(B社社額面総額10,000千円-B社社債帳簿価額9,728千円)÷利息期間3年÷12カ月×9カ月=67千円(端数調整を含む)
※16社債償還額
利息の計上については、前回の利払日と同様の会計処理を行います。同時に、償還された社債をマイナスし、相手勘定で受領した現金預金を資産計上します。
次のページでは、その他有価証券に分類される公社債の償却原価法(利払が半年毎のケース)について具体的にご紹介します。