社債発行費の会計処理

社債発行費とは、社債を発行するために直接支出した費用のことを言います。
具体的には、下記のような支出が挙げられます。
【社債発行費となる支出】

●社債募集のための広告費

●金融機関の取扱手数料

●証券会社の取扱手数料

●目論見書の印刷費

●社債券の印刷費

●社債の登記の登録免許税

●その他社債発行のために直接支出したもの
社債発行費は、原則として支出時に営業外費用として費用計上しますが、例外として繰延資産計上することも認められています。
社債発行費の原則の会計処理 社債発行費の例外の会計処理

支出時に営業外費用として計上

支出時に繰延資産として計上し、償却により費用化(営業外費用)
繰延資産に計上した社債発行費は、社債発行の時から社債の償還までの期間にわたり、原則として利息法で償却しなければなりません。
ただし、継続適用を条件として、定額法を採用することも認められています。
社債発行費の原則の償却方法 社債発行費の例外の償却方法

利息法
(償却期間は社債発行の時から社債の償還まで)

定額法
(償却期間は社債発行の時から社債の償還まで)
(継続適用が条件)
(繰延資産の会計処理に関する当面の取り扱い第3項(2))
なお、支出の効果が期待されなくなった繰延資産については、その未償却残高を一時に償却しなければなりません。(繰延資産の会計処理に関する当面の取り扱い第3項(6))
社債発行費に適用した会計処理は、その後の社債発行費に対しても同一の会計処理を適用しなければなりません。

社債発行費を会計処理した年度の前事業年度に同じく社債発行費を会計処理している場合で、前年度と異なる会計処理を採用する場合は、原則として会計方針の変更として取り扱います。

ただし、支出内容に著しい変化がある場合には、新たな会計事実の発生として、会計方針の変更とせずに異なる会計方針を選択することができます。

この場合、異なる会計方針を採用した旨及び、同一の会計処理を採用した場合の想定値と比較した影響額、会計方針の変更として取り扱わなかった理由を追記情報として注記します。(繰延資産の会計処理に関する当面の取り扱い第3項(7))
下記では、社債発行費を繰延資産として計上するケースの会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社はX1年4月1日に社債発行のため広告費や株式印刷費を総額12,000千円支出し、繰延資産に計上した。

・社債発行費は社債の償還期限の3年間で月額均等償却する
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(社債発行費の支出時)
借方 貸方
社債発行費 12,000千円※1 現金 12,000千円※1
※1広告費・刷費等の支出総額
社債発行のために支出した費用を、”社債発行費”の費目で繰延資産として計上します。
② X2年3月31日(第1回決算日)
借方 貸方
社債発行費償却 4,000千円※2 社債発行費 4,000千円※2
※2 12,000千円÷36カ月×12カ月
資産として計上した社債発行費の内、当期の月数の分の金額を償却費として費用計上します。
③ X3年3月31日(第2回決算日)
借方 貸方
社債発行費償却 4,000千円※3 社債発行費 4,000千円※3
※3 12,000千円÷36カ月×12カ月
第1回決算日と同様の仕訳を行います。
④ X4年3月31日(第3回決算日)
借方 貸方
社債発行費償却 4,000千円※4 社債発行費 4,000千円※4
※4 12,000千円÷36カ月×12カ月
第2回決算日と同様の仕訳を行います。当該仕訳を完了すると社債発行費の帳簿価額はゼロとなり償却が完了します。
次のページでは、新株予約権発行費の会計処理について具体的にご紹介します。