債務保証の履行請求を受けた場合の会計処理
(債務保証損失引当金を計上しているケース)
債務保証の履行請求を受けて場合には、主たる債務者に代わって支払の義務を負うため、負担すべき債務を未払金等に計上します。
同時に、主たる債務者の代わりに支払った金額については、主たる債務者に求償する権利(求償債権)があるため、その金額を未収入金等に計上します。
当該未収入金等のうち、回収不能見積額については、未収入金等から直接控除するか、貸倒引当金に計上することにより損失計上します。
その際に、当該債務保証が保証債務損失引当金を計上した保証先のものである場合には、同時に、債務保証引当金の目的取崩しを行います。
この求償債権に対する回収不能見込額の損失と債務保証引当金の取崩は一連の会計処理と考えられるため、原則として、両者の損益は相殺後の純額で表示しなければなりません。
この場合、相殺する対象は個別の相手先ごととします。
なお、引当金明細表については、両者を相殺した旨及び当該貸倒引当金繰入額を記載します。
同時に、主たる債務者の代わりに支払った金額については、主たる債務者に求償する権利(求償債権)があるため、その金額を未収入金等に計上します。
当該未収入金等のうち、回収不能見積額については、未収入金等から直接控除するか、貸倒引当金に計上することにより損失計上します。
その際に、当該債務保証が保証債務損失引当金を計上した保証先のものである場合には、同時に、債務保証引当金の目的取崩しを行います。
この求償債権に対する回収不能見込額の損失と債務保証引当金の取崩は一連の会計処理と考えられるため、原則として、両者の損益は相殺後の純額で表示しなければなりません。
この場合、相殺する対象は個別の相手先ごととします。
なお、引当金明細表については、両者を相殺した旨及び当該貸倒引当金繰入額を記載します。
【債務保証の履行請求を受けた場合の会計処理(債務保証損失引当金なし)】
負担すべき債務額
⇒未払金等にに計上
請求すべき求償債権
⇒未収入金等に計上
未収入金等のうち、回収不能見込額
⇒損失計上(未収入金から直接控除or貸倒引当金計上)
計上済みの保証債務損失引当金
⇒目的取崩
※回収不能見込みの損失計上額と保証債務損失引当金の目的取崩は個別の相手先ごとに相殺て純額表示
※引当金明細表では、両者を相殺した旨及び当該貸倒引当金繰入額を記載
負担すべき債務額
⇒未払金等にに計上
請求すべき求償債権
⇒未収入金等に計上
未収入金等のうち、回収不能見込額
⇒損失計上(未収入金から直接控除or貸倒引当金計上)
計上済みの保証債務損失引当金
⇒目的取崩
※回収不能見込みの損失計上額と保証債務損失引当金の目的取崩は個別の相手先ごとに相殺て純額表示
※引当金明細表では、両者を相殺した旨及び当該貸倒引当金繰入額を記載
以下では、債務保証の履行請求を受けた場合の会計処理(債務保証損失引当金を計上しているケース)について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件 |
---|
A社はB社に依頼されてZ銀行に対するB社の債務1,000千円について、X1年4月1日に債務保証契約を書面により締結した。 |
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(債務保証契約締結時)
① X1年4月1日(債務保証契約締結時)
借方 | 貸方 |
---|---|
債務保証見返 1,000千円※1 | 債務保証 1,000千円※1 |
※1債務保証の対象となるB社の債務残高
債務保証契約締結時には、備忘記録として債務保証見返勘定及び債務保証勘定を計上する。
追加前提条件 |
---|
X1年12月1日時点で、B社の財政状態が悪化しているため、債務保証の履行による損失の可能性が高くなった。債務保証損失の合理的な見積額は650千円である。 |
② X1年12月1日(B社の財政状態が悪化時)
借方 | 貸方 |
---|---|
債務保証損失引当金繰入 650千円※2 | 債務保証損失引当金 650千円※2 |
※2債務保証の履行による損失の見積額
債務保証の履行による損失の合理的な見積額を債務保証損失引当金に計上して、損失を認識する。
追加前提条件 |
---|
B社が債務を支払えない状態に陥ったため、Z銀行はX2年3月31日にA社に対してB社の債務1,000千円の債務保証の履行請求を行った。A社はこれに対して、X2年4月1日に全額をZ銀行に支払った。A社はB社に対する求償債権の回収不能額を650千円と見込んでいる。 |
③ X2年3月31日(履行請求時)
借方 | 貸方 |
---|---|
未収入金 350千円※3
債務保証引当金 650千円※4 債務保証 1,000千円※1 |
未払金 1,000千円※1
債務保証見返 1,000千円※1 |
※1履行請求されたB社の債務残高
※3B社への求償債権の内、回収見込額
※4B社への求償債権の内、回収不能見込額
※3B社への求償債権の内、回収見込額
※4B社への求償債権の内、回収不能見込額
Z銀行から請求された保証債務分を未払金に計上し、相手勘定でB社に対する求償債権のうち、回収可能見込額を未収入金に計上する。同時に、債務保証損失引当金の取崩を行う。その際、債務保証損失引当金と求償債権の回収不能見込額の差額が発生する場合は、損益として計上する。また、備忘記録である債務保証見返と債務保証勘定は取り消す。
④ X2年4月1日(Z銀行への支払時)
借方 | 貸方 |
---|---|
未払金 1,000千円※1 | 現金預金 1,000千円※1 |
※1履行請求されたB社の債務残高
Z銀行への支払いにより、債務として計上していた未払金が清算される。
追加前提条件 |
---|
X4年3月31日に求償債権に対してB社から350千円の支払いがあった。残高については回収可能であることが確定したため、A社は債権放棄を行った。 |
⑤ X4年3月31日(求償債権回収&残額放棄時)
借方 | 貸方 |
---|---|
現金預金 350千円※5 | 未収入金 350千円※6 |
※5B社からの回収額
※6B社に対する求償債権
※6B社に対する求償債権
B社から回収した金額をもって、B社への求償債権のうち回収可能として計上していた未収入金を清算します。その際に両者に差額がある場合は、損益として計上します。
(債務保証及び保証類似行為の会計基準及び表示に関する監査上の取扱い第4項(4)③④)
次のページでは、主たる債務者が債権者に担保提供している場合の債務保証の注記について具体的にご紹介します。