債務保証損失引当金計上の会計処理と表示

債務保証について、債務保証による損失発生の可能性が高く、かつ、その損失額を合理的に見積もることができる場合には、保証人は自己の負担に属する損失金額を債務保証損失引当金に計上しなければなりません。

ただし、債務保証による損失の発生可能性が高い場合で、その損失額を合理的に見積もることができない場合は、通常、極めて限られたケースであるため、実務的には債務保証による損失発生の可能性が高い場合は、必要額を債務保証損失引当金に計上することになります。
【債務保証損失引当金の計上が必要になる条件】

下記の2条件がそろっている場合は、債務保証損失引当金を要計上

①債務保証による損失発生の可能性が高い

②その損失額を合理的に見積もることが
 できる
 ※損失額を合理的に見積もることができな
  いケースは限定的
この『債務保証による損失発生の可能性が高い』状況には、主たる債権者が法的・形式的な経営破綻の状態にある場合だけではなく、深刻な経営難の状態であり再建の見通しがないなど実質的に経営破綻に陥っている場合、及び、経営破綻の状況にはないが経営難の状態にあり、今後経営破綻に陥る可能性が高いと認められる場合も含まれます。

この『債務保証による損失発生の可能性が高い』かどうかについては、個々の主たる債務者の財政状態等について、その状況、財政状態悪化の原因、再建計画による業績回復可能性、親会社等の支援状況、銀行等金融機関からの融資の状況、今後の資金繰りの見通し、担保の状況及びその処分見込み、他の保証人の負担能力等を総合的に判断しなければなりません。
【債務保証による損失発生の可能性が高い状況】

①主たる債権者が法的・形式的な経営破綻の
 状態にある場合

②主たる債権者が実質的に経営破綻に陥って
 いる場合

③主たる債権者が営破綻の状況にはないが
 経営難の状態にあり、経営破綻に陥る
 可能性が高い場合

上記に当てはまるかどうかは、下記のような条件を総合的に判断
・財政状態等の状況
・財政状態悪化の原因
・再建計画による業績回復可能性
・親会社等の支援状況
・銀行等金融機関からの融資の状況
・今後の資金繰りの見通し
・担保の状況及びその処分見込み
・他の保証人の負担能力
(債務保証及び保証類似行為の会計基準及び表示に関する監査上の取扱い第4項(1)(3)
会計制度委員会研究資料第3号我が国の引当金に関する研究資料(5)債務保証に関連する引当金)
債務保証損失引当金は、債務保証による最終的な損失見込額で計上します。

実際に債務保証を履行する際には、保証している債務総額の内、主たる債務者が返済不能な部分を一旦負担し、その負担に伴い、主たる債務者に対して求償債権が発生します。

債務保証の履行後は、この求償債権に対する返済を主たる債務者に求めることができます。

したがって、債務保証による最終的な損失見込額(=債務保証損失引当金計上額)は、債務保証の総額から主たる債務者の返済可能額、担保により保全される額等の求償債権についての回収見積額を控除して算定します。

この金額は、主たる債務者の財政状態、担保の評価額、他の保証人の負担能力等により上下し、見積りの要素が含まれる場合があります。

そのため、債務保証損失引当金の計上額は、その時点において最も合理的な金額で算定し、決算期ごとに、主たる債務者の財政状態等に対応して見直さなければなりません。
【債務保証損失引当金の計上額の算定】
債務保証損失引当金の計上額=債務保証の総額ー主たる債務者の返済可能額ー求償債権の回収見積額

※その時点で最も合理的な金額を算定
※決算期ごとに、主たる債務者の財政状態等
 に対応して見直し
(債務保証及び保証類似行為の会計基準及び表示に関する監査上の取扱い第4項(2))
債務保証損失引当金の繰入額は、その金額及び発生事由等に応じて営業外費用又は特別損失に計上します。

また、債務保証損失引当金のうち、不要となり取り崩す金額については、原則として特別利益に計上します。

債務保証損失引当金については、一般の引当金等同様にワンイヤールールに従い、流動負債又は固定負債に表示します。

債務保証の注記において、債務保証損失引当金を計上している場合は、債務保証の総額から債務保証損失引当金設定額を控除した金額を注記します。
【債務保証損失引当金の計上額の表示及び注記】

①引当金の繰入額
⇒営業外費用又は特別損失

②引当金の取崩額
⇒特別利益(原則)

③債務保証損失引当金
⇒流動負債又は固定負債

④債務保証の注記
⇒債務保証の総額から債務保証損失引当金
 設定額を控除した金額を注記
(債務保証及び保証類似行為の会計基準及び表示に関する監査上の取扱い第4項(4))
次のページでは、債務保証の履行請求を受けた場合の会計処理(債務保証損失引当金を計上していないケース)について具体的にご紹介します。