債務保証及び保証類似行為の損失発生の可能性がある程度予想される場合の注記

債務保証による損失の発生の可能性が高く、その金額を合理的に見積ることが可能な場合は、債務保証損失引手金を計上しますが、その金額を合理的に見積ることができない場合は、引当金の計上を行うことはできません。

そのため、損失発生の可能性が低い場合と同様に、自社のPLやBSの数字には影響することはなく、偶発債務としての注記で情報を提供するのみでの対応となります。

ただし、損失発生の可能性が低い場合の注記が、債務保証の種類、保証先、その金額(原則保証先ごとの総額で表示。債務保証の対象となっている遅延未払金利等も含む。保証類似行為も通常の債務保証に含めて総額で記載するが、内書や区分して記載で内容を示すことも可。)のみであるのに対して、債務保証による損失の発生の可能性が高くその金額を合理的に見積ることが不可能な場合は、追加情報の注記が必要になります。

追加情報の注記としては、損失の発生が高い旨、その金額を合理的に見積もることが不可能な旨及びその理由、主たる債務者の財政状態(大幅な債務超過等)、主たる債務者と保証人の関係(出資関係、役員の派遣、資金援助、営業上の取引等)、主たる債務者の債務履行についての今後の見通し等、現状を適切に説明するために必要な情報を記載します。
【債務保証による損失の発生の可能性が高くその金額を合理的に見積ることが不可能な場合の注記】

①債務保証の種類

②債務保証の金額

③債務保証の保証先

④損失発生の可能性が高い旨

⑤金額の見積もりが不可能である旨

⑥不可能な理由

⑦主たる債務者の財政状態等現状を適切に
 説明するために必要な情報
(債務保証及び保証類似行為の会計基準及び表示に関する監査上の取扱い第4(3)項
追加情報の注記について第8・11項)
下記では、債務保証による損失の発生の可能性が高くその金額を合理的に見積ることが不可能な場合の注記について、具体例を使用してご紹介します。(参考:追加情報の注記について第11項)
前提条件
A社は下記の各会社の借入金に対して保証を行っております。

・製造業を営んでるB社への債務保証の金額は10,000千円
・不動産業を営んでるC社への債務保証の金額は20,000千円
・債務保証の対象は全て金融機関からの借入金
・B社は資本欠損の状態であり、主力銀行の支援下で経営改善策を実施中
・B社の保証については今後の市場の動向により保証履行を求められる可能性が高い
・B社の保証債務の履行に伴う損失見積額の算定は困難
【追加情報の注記例】
下記の各会社の金融機関からの借入金に対して保証を行っております。

 B会社 10百万円 C会社 20百万円 計 30百万円

B社に対する保証債務の一部には、今後の製造業市況の動向により保証履行を求められる可能性が高いものが含まれております。B会社は資本の欠損の状況でありますが、主力銀行の支援下で経営改善策を実施中であることから、保証債務の履行に伴う損失見積額の算定は困難であります。
次のページでは、債務保証損失引当金計上の会計処理と表示について具体的にご紹介します。