市場販販売目的のソフトウェアの減価償却具体例4
(見込販売収益に基づき配分する方法/見積りの変更無し/残存有効期間の均等配分額の制限有りのケース)



無形固定資産に計上した市場販売目的のソフトウェアは、そのソフトウェアの性格に応じて、見込販売数量や見込販売収益に基づき配分する方法など、最も合理的と考えられる減価償却方法を採用すべきであるとされています。

ただし、いずれの減価償却方法であっても、毎期の償却額は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ることはできません。

したがって、毎期の減価償却費としては、見込販売数量等に基づく償却額と残存有効期間に基づく均等配分額とを比較して、いずれか大きい金額を計上することになります。

これには見込み販売数量等の将来の見積りが困難であることから、償却期間が長期化することを防止するという意図があります。
(研究開発費等に係る会計基準四の5
研究開発費に係る会計基準の設定に関する意見書三の3(4)
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針
第18・42項)
市場販売目的のソフトウェアの減価償却方法についての詳細は、下記のページをご参照下さい。
市場販売目的のソフトウェアの減価償却
下記では、資産計上した市場販売目的のソフトウェアを見込販売収益に基づき減価償却する方法において、残存有効期間の均等配分額の制限を受けるケースの会計処理を具体例を使用してご紹介します。(※各期における見込販売収益の見積りの変更がないケースを使用) (参考:会計制度委員会報告第12号研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針【設例2】)
前提条件
A社はX1年4月1日に市場販売目的のソフトウェアYを無形固定資産として計上し、商品としてのソフトウェアの販売を開始した。

・ソフトウェアの資産計上額は12,000千円
・販売開始時におけるソフトウェアの販売可能な見込有効
 期間は3年
・償却方法は見込販売収益に基づき配分する方法を採用
・販売開始時における各期の見込販売数量及び見込販売収益
 は下記の通り
年度 各期の見込販売数量 見込販売単価 見込販売収益
X1年度 500個 24千円 12,000千円
X2年度 300個 16千円 4,800千円
X3年度 400個 18千円 7,200千円
※各年度において見込販売収益及び見込み有効期間の見直し
 の検討を行ったが、変更はなかった。
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X2年3月31日(第1回決算日)
当期の販売実績は、販売開始時点の見込み通りであった。
借方 貸方
減価償却費 6,000千円※1 減価償却累計額 6,000千円※1
※1下記の(1)と(2)の内大きい方の金額を適用

 (1)見込販売収益に基づく減価償却費
 ソフトウェアYの制作価額12,000千円÷当期以降の見込販売
 収益(12,000千円+7,200千円+4,800千円)
 ×販売収益実績12,000千円=6,000千円

 (2)残存有効期間に基づく均等配分償却額
 ソフトウェアYの制作価額12,000千円÷残存有効期間3年間
 =4,000千円
ソフトウェアYの減価償却費として、見込販売収益に基づく減価償却費と残存有効期間に基づく均等配分償却額の内、高い方の金額を計上します。
② X3年3月31日(第2回決算日)
当期の販売実績は、販売開始時点の見込み通りであった。
借方 貸方
減価償却費 3,000千円※2 減価償却累計額 3,000千円※2
※2下記の(1)と(2)の内大きい方の金額

 (1)見込販売収益に基づく減価償却費
 ソフトウェアYの期首未償却残高(12,000千円-6,000千円)÷
 当期以降の見込販売収益(4,800千円+7,200千円)
 ×販売収益実績4,800千円=2,400千円

 (2)残存有効期間に基づく均等配分償却額
 ソフトウェアYの期首未償却残高(12,000千円-6,000千円)÷
 残存有効期間2年間
 =3,000千円
第1回決算日と同様の仕訳を行います。ただし、見込販売収益に基づいて算定した減価償却費が、残存有効期間に基づく均等配分額を下回るため、残存有効期間に基づく均等配分額が当期の減価償却費となります。
② X年4月31日(第3回決算日)
当期の販売実績は、販売開始時点の見込み通りであった。
借方 貸方
減価償却費 3,000千円※3 減価償却累計額 3,000千円※3
※3ソフトウェアYの期首未償却残高(12,000千円-6,000千円-3,000千円)
期首の未償却残高を全額減価償却費として計上します。
次のページでは、市場販販売目的のソフトウェアの減価償却の具体例(見込販売数量/販売開始1年目の年度末に見積りの変更有りのケース)をご紹介します。