市場販販売目的のソフトウェアの会計処理の概要

市場販売目的のソフトウェアは、製品マスターを制作してその複製を販売します。そのため、一連の活動は大きく、製品マスターに関する活動と、販売用の商品に関する活動に分類されます。
製品マスターに関する活動については、研究開発活動、資産としてのソフトウェアの制作活動、ソフトウェアの維持管理等のメンテナンス活動の3つに分かれます。

研究開発活動のための支出は、発生時に研究開発費として費用処理します。

ソフトウェアの制作活動のための支出は、無形固定資産として資産計上し、減価償却費を通じて費用化します。

製品マスターの維持管理活動のための支出は、発生した時に費用として原価に計上します。
【製品マスターに関する活動の分類と支出の会計処理】

(1)研究開発活動:発生時に研究開発t費として費用計上

(2)資産としてのソフトウェアの制作活動:無形固定資産として資産計上

(3)ソフトウェアの維持管理等のメンテナンス活動:発生時に費用として原価に計上
研究開発は、新しい知識を具体化するまでの過程と定義されています。そのため、市場販売目的のソフトウェアの制作過程においては、製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち「最初に製品化された製品マスター」が完成するまでの制作活動は全て研究開発活動に該当します。
最初に製品化された製品マスターの完成後は、当該マスターを改良・強化して本製品のための製品マスターを完成させます。また、本製品のための製品マスターの完成後についても、改良・強化活動が行われることが想定されます。このような改良・強化活動は、いずれもソフトウェアの制作活動に該当します。
ただし、改良・強化が著しいものである場合は、従来の製品マスターとは別個の新しいマスターの制作のための活動とみなされるため、研究開発活動に該当します。
また、バク取り等の機能維持の活動については、機能の改良・強化を行う制作活動ではないためソフトウェアの維持管理等のメンテナンス活動に該当します。
【製品マスターに関する活動の詳細と分類及び会計処理】
①最初に製品化された製品マスターの完成までの支出
 ⇒研究開発活動
 (研究開発費として発生時に費用処理)

②製品マスターの改良・強化のための支出
 ⇒ソフトウェアの制作活動
 (無形固定資産として資産計上・減価償却
  を通じて費用化)

③製品マスターの著しい改良のための支出
 ⇒研究開発活動
 (研究開発費として発生時に費用処理)

④ソフトウェアの機能維持やメンテナンスのための支出
 ⇒維持管理等のメンテナンス活動
 (発生時に費用として原価に計上)
(研究開発等に係る会計基準四の2・(注3)
研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書三の3(3)(4)
研究開発及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針
第8・9・10・18・19・32・33・34項)
製品マスターが完成したら、そのマスターをコピーして販売用の商品を製造します。

販売用のコピーを商品として制作するための支出は、当期製品製造費用として計上します。

その内、販売が完了したものについては売上原価としてPLに計上します。

それに対して、商品在庫もしくは仕掛品として残っているものは、商品や仕掛品などの棚卸資産として資産計上します。
また、販売用のコピーの販売が完了した時点では、売上原価と共に、収益として売上を計上します。
【販売用の商品に関する活動の会計処理】
ステップ①:商品製造のための支出の発生時
      ⇒支出した金額を当期製品製造
       費用に計上

ステップ②:当期に商品販売済みのもの
      ⇒当期の売上原価として計上
      ⇒同時に売上を計上

ステップ③:期末に残っている商品及び
      仕掛品
      ⇒期末棚卸高として棚卸資産に
       振替
(企業制度委員会報告第12号研究開発及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針第34項(4)・35項)
次のページでは、市場販販売目的のソフトウェアの最初に製品化された製品マスターの完成までの支出の会計処理について具体的にご紹介します。