社債の定時分割償還(抽選償還)の会計処理

【定時分割償還(抽選償還)とは】

契約により予め定められた償還日に一定額ずつ分割して償還する方法


【定時分割償還(抽選償還)に償却原価法が適用される場合の会計処理】

■利息法の場合

ステップ1:社債全体の発行価額と将来キャッ
      シュフローより実効利子率を
      算定

ステップ2:社債を償還日の異なる複数の社債
      として捉え、将来キャッシュフ
      ローを償還日ごとに切り分ける

ステップ3:償還日の異なる社債ごとに、将来
      キャッシュフローを実効利子率
      で割り戻し、発行価額を算定
      する

ステップ4:償還日の異なる社債ごとに、通常
      の満期償還社債と同様の会計
      処理を行う


■定額法の場合

ステップ1:社債を償還日の異なる複数の社債
      として捉え、額面金額を各社債
      に分割する

ステップ2:金利調整差額を額面金額及び発行
      から償還までの期間に比例させ
      て、各社債に割り振る

ステップ3:各社債の額面金額から割り振られ
      た金利調整差額を差引いて、各
      社債の発行価額を算定する

ステップ4:償還日の異なる社債ごとに、通常
      の満期償還社債と同様の会計
      処理を行う
定時分割償還とは、契約によりあらかじめ定められた償還日に、一定額ずつ分割して償還する方法を言います。

定められた償還日の償還が完了すると、最終償却期限までに全社債が額面金額で償還されます。

分割償還する際には、償還対象の社債を抽選により決定するため、別名、抽選償還とも呼ばれます。
定時分割償還に償却原価法が適用される場合、各期に配分される償却額の算定方法が、通常の満期償還のケースよりも複雑になります。

そこで、会計処理を行うに当たっては、償還日の異なる複数の社債を発行したと捉えることで、情報を整理しながら各期の償却額を算定します。

その情報整理の流れは、適用する方法が利息法か定額法かにより異なります。
利息法の場合、まず、社債全体の発行価額と、予定されているクーポン利息及び元本償還等の将来キャッシュフローより実効利子率を算定します。

次に、将来キャッシュフローを償還日の異なる各社債に切り分けます。

そして、各社債ごとに将来キャッシュフローを実効利子率で割り戻し、各社債の発行価額を算定します。

その後は、全体で算定した実効利子率及び、各社債ごとに算定した発行価額を使用して、各社債ごとに通常の満期償還社債と同様の会計処理を行います。
定額法の場合、まず、社債を償還日の異なる複数の社債として捉え、額面金額を各社債に分割します。

次に、社債全体の額面総額と発行価額との差額で算定した金利調整差額を、切り分けた各社債の額面金額及び発行から償還までの期間に比例させて、各社債に割り振ります。

そして、各社債の額面金額から割り振られた金利調整差額を差引いて、各社債の発行価額を算定します。

その後は、割り振られた額面金額及び発行価額を使用して、各社債ごとに通常の満期償還社債と同様の会計処理を行います。
【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第10・11・12・13・59・60・61・62・63項
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第44・45項
下記では、社債の定時分割償還の繰上償還の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社はX1年4月1日に、下記の条件で社債を発行した。
・社債額面総額10,000千円
・発行価額9,770千円
・X3年3月31日より毎年3月末に5,000千円ずつ償還する
・クーポン利子率4%である
・利払日毎年3月31日
・A社の決算日は3月31日である
【原則:利息法での会計処理】
■ステップ1:実効利子率の算定
クーポン利子(10,000千円×4%)÷(1+r)+クーポン利子(10,000千円×4%)÷(1+r)^2+(クーポン利子(5,000千円×4%)
+額面総額10,000千円)÷(1+r)^3
=9,770千円
r=5%

■ステップ2:将来キャッシュフローを償還日の異なる社債ごとに切り分け
①X3年3月31日償還分将来キャッシュフロー
 ・X2年3月31日支払クーポン利息:5,000千円×4%
  =200千円
 ・X3年3月31日支払クーポン利息:5,000千円×4%
  =200千円
 ・X3年3月31日元本償還:5,000千円

②X4年3月31日償還分将来キャッシュフロー
 ・X2年3月31日支払クーポン利息:5,000千円×4%
  =200千円
 ・X3年3月31日支払クーポン利息:5,000千円×4%
  =200千円
 ・X4年3月31日支払クーポン利息:5,000千円×4%
  =200千円
 ・X4年3月31日元本償還:5,000千円

■ステップ3:各社債の発行価額を算定
①X3年3月31日償還分発行価額
200千円÷(1+5%)+(200千円+5,000千円)÷(1+5%)^2
=4,907千円

②X4年3月31日償還分発行価額
200千円÷(1+5%)+(200千円)÷(1+5%)^2+(200千円+5,000千円)÷(1+5%)^3
=4,863千円
① X1年4月1日(発行時)
借方 貸方
社債 9,770千円※1 当座預金 9,770千円※1
※1社債発行価額
社債を発行価額で計上し、相手勘定で収受した当座預金を計上します。
② X2年3月31日(第一回利払日)
借方 貸方
社債利息 245千円※4
社債利息 243千円※5
当座預金 200千円※2
当座預金 200千円※3
社債 45千円※6
社債 43千円※7
※2X3年3月31日償還分額面金額5,000千円
  ×クーポン利子率4%
※3X4年3月31日償還分額面金額5,000千円
  ×クーポン利子率4%
※4X3年3月31日償還分社債帳簿価額4,907千円
  ×実効利子率5%
※5X4年3月31日償還分社債帳簿価額4,863千円
  ×実効利子率5%
※6X3年3月31日償還分実効利子245千円
  -クーポン利子200千円
※7X4年3月31日償還分実効利子243千円
  -クーポン利子200千円
償還日の異なる社債ごとに、支払ったクーポン利息を当座預金からマイナスすると同時に、実効利子率で社債利息を計上します。両者の差額は、各社債の帳簿価額に加算します。
③ X3年3月31日(第二回利払日&第一回償還日)
借方 貸方
社債利息 248千円※8
社債利息 245千円※9


社債 5,000千円※12
当座預金 200千円※2
当座預金 200千円※3
社債 48千円※10
社債 45千円※11
当座預金 5,000千円※12
※2X3年3月31日償還分額面金額5,000千円
  ×クーポン利子率4%
※3X4年3月31日償還分額面金額5,000千円
  ×クーポン利子率4%
※8X3年3月31日償還分社債帳簿価額4,952千円
  ×実効利子率5%
※9X4年3月31日償還分社債帳簿価額4,906千円
  ×実効利子率5%
※10X3年3月31日償還分実効利子248千円
  -クーポン利子200千円
※11X4年3月31日償還分実効利子245千円
  -クーポン利子200千円
※12X3年3月31日償還分額面金額
前回の利払い日と同様に償却原価法及びクーポン利息の仕訳を計上します。償還期限が到来した社債については、額面金額を社債及び支払った当座預金からマイナスします。
④ X4年3月31日(第三回利払日&第二回償還日)
借方 貸方
社債利息 249千円※13

社債 5,000千円※15
当座預金 200千円※3
社債 49千円※14
当座預金 5,000千円※15
※3X4年3月31日償還分額面金額5,000千円
  ×クーポン利子率4%
※13X4年3月31日償還分社債帳簿価額4,951千円
  ×実効利子率5%(端数調整を含む)
※14X4年3月31日償還分実効利子249千円
  -クーポン利子200千円
※15X4年3月31日償還分額面金額
前回の利払い日と同様に償却原価法及びクーポン利息の仕訳を計上します。償還期限が到来した社債については、額面金額を社債及び支払った当座預金からマイナスします。

【例外:定額法での会計処理】
■ステップ1:額面金額を各社債に分割
①X3年3月31日償還分
額面金額=5,000千円

②X4年3月31日償還分
額面金額=5,000千円

■ステップ2:金利調整差額を各社債に割り振る
①X3年3月31日償還分
金利調整差額
=(額面総額10,000千円-発行価額9,770千円)÷(5,000千円×2年+5,000千円×3年)×(5,000千円×2年)
=92千円

②X4年3月31日償還分
金利調整差額
=(額面総額10,000千円-発行価額9,770千円)÷(5,000千円×2年+5,000千円×3年)×(5,000千円×3年)
=138千円

■ステップ3:各社債の発行価額を算定する
①X3年3月31日償還分
発行価額
=額面総額5,000千円-金利調整差額92千円
=4,908千円

②X4年3月31日償還分
発行価額
=額面総額5,000千円-金利調整差額138千円
=4,862千円
① X1年4月1日(発行時)
借方 貸方
社債 9,770千円※1 当座預金 9,770千円※1
※1社債発行価額
社債を発行価額で計上し、相手勘定で収受した当座預金を計上します。
② X2年3月31日(第一回利払日)
借方 貸方
社債利息 200千円※2
社債利息 200千円※3
社債利息 46千円※4
社債利息 46千円※5
当座預金 200千円※2
当座預金 200千円※3
社債 46千円※4
社債 46千円※5
※2X3年3月31日償還分額面金額5,000千円
  ×クーポン利子率4%=200千円
※3X4年3月31日償還分額面金額5,000千円
  ×クーポン利子率4%=200千円
※4X3年3月31日償還分(社債額面金額5,000千円
  -社債発行価額4,908千円)÷2年
※5X4年3月31日償還分(社債額面金額5,000千円
  -社債発行価額4,862千円)÷3年
償還日の異なる社債ごとに、支払ったクーポン利息を当座預金から減額し、社債利息として計上します。同時に、金利の調整部分についても、額面総額と取得価額の差額を利息期間で除した金額を社債利息に計上し、相手勘定で社債の帳簿残高に加算します。
③ X3年3月31日(第二回利払日&第一回償還日)
借方 貸方
社債利息 200千円※2
社債利息 200千円※3
社債利息 46千円※4
社債利息 46千円※5
社債 5,000千円※6
当座預金 200千円※2
当座預金 200千円※3
社債 46千円※4
社債 46千円※5
当座預金 5,000千円※6
※2X3年3月31日償還分額面金額5,000千円
  ×クーポン利子率4%=200千円
※3X4年3月31日償還分額面金額5,000千円
  ×クーポン利子率4%=200千円
※4X3年3月31日償還分(社債額面金額5,000千円
  -社債発行価額4,908千円)÷2年
※5X4年3月31日償還分(社債額面金額5,000千円
  -社債発行価額4,862千円)÷3年
※6X3年3月31日償還分額面金額
第一回利払い日と同様の会計処理を行います。償還期限が到来した社債については、額面金額を社債及び支払った当座預金からマイナスします。
④ X4年3月31日(第三回利払日&第二回償還日)
借方 貸方
社債利息 200千円※3
社債利息 46千円※5
社債 5,000千円※7
当座預金 200千円※3
社債 46千円※5
当座預金 5,000千円※7
※3X4年3月31日償還分額面金額5,000千円
  ×クーポン利子率4%
※5X4年3月31日償還分(社債額面金額5,000千円
  -社債発行価額4,862千円)÷3年
※7X4年3月31日償還分額面金額
第二回利払い日と同様の会計処理を行います。償還期限が到来した社債については、額面金額を社債及び支払った当座預金からマイナスします。
次のページでは、社債の定時分割償還(抽選償還)の繰上償還の会計処理について具体的にご紹介します。