社債における償却原価法の会計処理(割引発行&利払日と決算日が一致しないケース)

【償却原価法の社債への適用】

社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合、償却原価法に基づいて算定された価額をもって、貸借対照表価額とする


【償却額の計算方法】
 
原則:利息法
 
例外:定額法(要継続適用)


【割引発行の場合の償却額の会計処理】
 
損益:金利調整差額として社債利息に
    計上
 
資産:社債の簿価に加算
    (償却原価でBS計上)
 
※実効利子率はクーポン利子率よりも高く
 なる
社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など、社債発行による収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額をもって、貸借対照表価額としなければなりません。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第26・67項
旧商法では、社債の貸借対照表価額は債権額とされており、このような発行価額と額面金額との差額は、社債発行差金等の科目で資産(繰延資産)又は負債として計上し、償還期に至るまで毎期一定の方法により償却することされていましたが、現行基準上は、このような取扱いは廃止され、代わりに償却原価法が適用されています。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第90項
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第303項
負債として計上された社債に適用される償却原価法の実際の処理方法は、基本的に、有価証券として資産計上された公社債に適用される償却原価法と同様です。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第126項
償却原価法における各期の償却額の算定方法は、原則として利息法によりますが、継続適用を条件に、簡便法である定額法を採用することもできます。

利息法とは、社債のクーポン利子支払総額と金利調整差額の合計額を社債の帳簿価額に対し一定率(実効利子率)となるように、複利をもって各期に配分する方法です。

それに対して定額法は、社債の金利調整差額を取得日から償還日までの期間で除して各期に配分する方法です。

いずれも、期間配分された償却額は、PLでは社債利息へ計上され、BSでは負債である社債の帳簿価額に加減されます。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準(注5)
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第70項
割引発行の場合、額面金額よりも低い価額で社債を発行します。

そのため、実効利子率はクーポン利子率よりも高くなり、償却額を計上する際には、社債の帳簿価額及び社債利息に加算されます。
【利払日≠決算日の利息法における各期の償却額の計算】

当期計上償却額
=利払日を基準にして計算した償却額
 ÷12カ月×当期月数
償却原価法の利息法を適用する際に、利払日と決算日が異なる場合、利払日を基準にして計算した償却額を月割して、各期に配分する金利調整差額を算定します。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針[設例4]
下記では、負債としての社債に償却原価法を適用する場合の、利払日と決算日が一致しないケースの会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針[設例4]
前提条件
A社はX1年1月1日に、下記の条件で社債を発行した。
・額面総額10,000千円
・発行価額9,728千円
・満期日X3年12月31日
・クーポン利子率4%
・利払日毎年12月31日
・A社の決算日は3月31日である
【原則:利息法での会計処理】
■実効利子率の算定
毎期のクーポン利子=額面10,000千円×4%=400千円

クーポン利子400千円÷(1+r)+クーポン利子400千円÷(1+r)^2+(クーポン利子400千円+額面総額10,000千円)÷(1+r)^3
=9,728千円
r=5%
① X1年1月1日(発行時)
借方 貸方
当座預金 9,728千円※1 社債 9,728千円※1
※1社債発行価額
発行価額で社債を負債計上します。
② X1年3月31日(決算日)
借方 貸方
社債利息 122千円※3 未払社債利息 100千円※2
社債 22千円※4
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月
  ×3カ月=100千円
※3(社債帳簿価額9,728千円×実効利子率5%)÷12カ月
  ×3カ月=122千円
※4(社債帳簿価額9,728千円×実効利子率5%
  -額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月
  ×3カ月=22千円
当期に帰属する未払のクーポン利息を未払社債利息として計上すると同時に、利払日を基準にして計算した償却額の内、当期の期間に帰属する部分を償却額として社債に計上します。両者の合計額(=実効利子率で算定した利子額)を社債利息として計上します。
③ X1年4月1日(期首)
借方 貸方
未払社債利息 100千円※2 社債利息 100千円※2
※2前期計上未払社債利息
前期に計上した未払社債利息の再振替仕訳を計上します。
④ X1年12月31日(第一回利払日)
借方 貸方
社債利息 464千円※6 当座預金 400千円※5
社債 64千円※7
※5額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※6社債前期間帳簿価額9,728千円×実効利子率5%
  -前期計上済償却額22千円
※7(社債前期間帳簿価額9,728千円×実効利子率5%
  -額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月
  ×9カ月
支払ったクーポン利子を当座預金からマイナスすると同時に、実効利子率で計算した利子額から前期計上済みの償却額を控除した金額を、社債利息に計上します。利払日を基準にして計算した償却額の内、当期の月数に帰属する部分を社債に加算して帳簿価額を調整します。
⑤ X2年3月31日(決算日)
借方 貸方
社債利息 123千円※8 未払社債利息 100千円※2
社債 23千円※9
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月
  ×3カ月=100千円
※8(社債帳簿価額9,814千円×実効利子率5%)÷12カ月
  ×3カ月=123千円
※9(社債帳簿価額9,814千円×実効利子率5%
  -額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月
  ×3カ月=23千円
前回の決算日と同様の会計処理を行います。
⑥ X2年4月1日(期首)
借方 貸方
未払社債利息 100千円※2 社債利息 100千円※2
※2前期計上未払社債利息
前期に計上した未払社債利息の再振替仕訳を計上します。
⑦ X2年12月31日(第二回利払日)
借方 貸方
社債利息 468千円※10 当座預金 400千円※5
社債 68千円※11
※5額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※10社債前期間帳簿価額9,814千円×実効利子率5%
  -前期計上済償却額23千円
※11(社債前期間帳簿価額9,814千円×実効利子率5%
  -額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月
  ×9カ月
前回の利払日と同様の会計処理を行います。
⑧ X3年3月31日(決算日)
借方 貸方
社債利息 124千円※12 未払社債利息 100千円※2
社債 24千円※13
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月
  ×3カ月=100千円
※12(社債帳簿価額9,905千円×実効利子率5%)÷12カ月
  ×3カ月=124千円
※13(社債帳簿価額9,905千円×実効利子率5%
  -額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月
  ×3カ月=24千円
前回の決算日と同様の会計処理を行います。
⑨ X3年4月1日(期首)
借方 貸方
未払社債利息 100千円※2 社債利息 100千円※2
※2前期計上未払社債利息
前期に計上した未払社債利息の再振替仕訳を計上します。
⑩ X3年12月31日(第三回利払日&償還日)
借方 貸方
社債利息 471千円※14

社債 10,000千円※16
当座預金 400千円※5
社債 71千円※15
当座預金 10,000千円※16
※5額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※14社債前期間帳簿価額9,905千円×実効利子率5%
  -前期計上済償却額24千円
※15(社債前期間帳簿価額9,905千円×実効利子率5%
  -額面金額10,000千円×クーポン利子率4%)÷12カ月
  ×9カ月
※16社債償還額
利息の計上については、前回の利払日と同様の会計処理を行います。同時に、償還された社債をマイナスし、相手勘定で支払った当座預金をマイナスします。

【例外:定額法での会計処理】
① X1年1月1日(発行時)
借方 貸方
当座預金 9,728千円※1 社債 9,728千円※1
※1社債発行価額
社債を発行価額で負債計上します。
② X1年3月31日(決算日)
借方 貸方
社債利息 100千円※2
社債利息 23千円※3
未払社債利息 100千円※2
社債 23千円※3
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月
  ×3カ月=100千円
※3(社額面総額10,000千円-社債帳簿価額9,728千円)
  ÷利息期間3年÷12カ月×3カ月=23千円
当期に帰属する未払のクーポン利息を未払社債利息及び社債利息として計上します。同時に、月割で算定した当期の償却額についても社債利息に計上し、相手勘定で社債の帳簿価額を調整します。
③ X1年4月1日(期首)
借方 貸方
未払社債利息 100千円※2 社債利息 100千円※2
※2前期計上未払社債利息
前期に計上した未払社債利息の再振替仕訳を計上します。
④ X1年12月31日(第一回利払日)
借方 貸方
社債利息 400千円※4
社債利息 68千円※5
当座預金 400千円※4
社債 68千円※5
※4額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※5(社額面総額10,000千円-社債帳簿価額9,728千円)
  ÷利息期間3年÷12カ月×9カ月=68千円
支払ったクーポン利子を当座預金からマイナスし、有価証券利息に計上します。同時に、月割で算定した当期の償却額についても社債利息に計上し、相手勘定で社債勘定を増加させます。
⑤ X2年3月31日(決算日)
借方 貸方
社債利息 100千円※2
社債利息 23千円※3
未払社債利息 100千円※2
社債 23千円※3
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月
  ×3カ月=100千円
※3(社債額面総額10,000千円-社債帳簿価額9,728千円)
  ÷利息期間3年÷12カ月×3カ月=23千円
前回の決算日と同様の会計処理を行います。
⑥ X2年4月1日(期首)
借方 貸方
未払社債利息 100千円※2 社債利息 100千円※2
※2前期計上未払社債利息
前期に計上した未払社債利息の再振替仕訳を計上します。
⑦ X2年12月31日(第二回利払日)
借方 貸方
社債利息 400千円※4
社債利息 68千円※5
当座預金 400千円※4
社債 68千円※5
※4額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※5(社債額面総額10,000千円-社債帳簿価額9,728千円)
  ÷利息期間3年÷12カ月×9カ月=68千円
前回の利払日と同様の会計処理を行います。
⑧ X3年3月31日(決算日)
借方 貸方
社債利息 100千円※2
社債利息 23千円※3
未払社債利息 100千円※2
社債 23千円※3
※2額面金額10,000千円×クーポン利子率4%÷12カ月
  ×3カ月=100千円
※3(社債額面総額10,000千円-社債帳簿価額9,728千円)
  ÷利息期間3年÷12カ月×3カ月=23千円
前回の決算日と同様の会計処理を行います。
⑨ X3年4月1日(期首)
借方 貸方
未払社債利息 100千円※2 社債利息 100千円※2
※2前期計上未払社債利息
前期に計上した未払社債利息の再振替仕訳を計上します。
⑩ X3年12月31日(第三回利払日&償還日)
借方 貸方
社債利息 400千円※4
社債利息 67千円※5
社債 10,000千円※6
当座預金 400千円※4
社債 67千円※5
当座預金 10,000千円※6
※4額面金額10,000千円×クーポン利子率4%
※5(社債額面総額10,000千円-社債帳簿価額9,728千円)
  ÷利息期間3年÷12カ月×9カ月=67千円(端数調整を含む)
※6社債償還額
利息の計上については、前回の利払日と同様の会計処理を行います。同時に、償還された社債をマイナスし、相手勘定で支払った当座預金をマイナスします。
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