売価還元法を採用している場合の通常の販売目的で保有する棚卸資産の期末評価

Question
当社は小売業を営んでおり、販売目的で保有する期末棚卸資産の評価方法には、売価還元法を採用しています。売価還元法による期末棚卸資産の価額を算定する際に使用する”売価”は、商品の定価から期末日時点で見積もることができる値下額を控除しており、棚卸資産に関する将来の投資の回収額の下落については、売価還元法の中で加味されているように思うのですが、このような場合であっても期末における正味売却価額による判定が必要になるのでしょうか?
【Answer】
売価還元法を採用している場合であっても、期末における正味売却価額での評価減の判定を行い、正味売却価額を下回る帳簿価額については切り下げを行わなければなりません。

ただし、売価還元法を採用している企業は、単品ごとに帳簿価額と正味売却価額の比較を行うことが困難なケースがほとんどです。

さらに、売価還元法では棚卸資産期末残高の帳簿価額を『期末棚卸資産の売価×原価率』で計算するため、その計算方法によっては、収益性の低下をすでに反映しているとみなすことが可能であると考えられます。

そのため、会計基準上では売価還元法の計算において、①計算に使用する『売価』に値下額等が適切に反映されていること、②計算に使用する『原価率』の分母から値下額等が除外されていること、の2つの条件がそろった場合、売価還元法で決定された価額は、収益性の低下に基づく簿価切り下げ額を反映したものとみなし、正味売却価額での判定を省略することが認められています。
【売価還元法を採用している場合の期末棚卸資産評価】

≪原則≫
正味売却価額で評価減の判定を行い、評価減がある場合は簿価を切り下げる

≪例外≫
下記の条件を満たす場合は、正味売却価額での評価減の判定は不要

条件①:売価還元法の計算に使用する
    『売価』に値下額等が適切に
    反映されていること

    ⇒値下後の低い価額により算定する
     ため、棚卸資産期末簿価がより小
     さく算定される

条件②:売価還元法の計算に使用する『原価
    率』の分母から値下額等が除外され
    ていること

    ⇒値下を加味してないより高い売価
     で除するため、原価率が小さくな
     り、棚卸資産期末簿価がより小さ
     
     算定される

    【例外が認められる場合の売価還元法による期末棚卸資産価額の計算式】

    期末棚卸資産価額=売価(値下額及び値下取消
         額控除後)×(期首繰越商品
         原価+当期受入原価総額)
             
        ÷(期首繰越商品小売価額+当
        期受入原価総額+原始値入額
        +値上額-値上取消額)
    
(棚卸資産の評価に関する会計基準第13・54・55項)
次のページでは、通常の販売目的で保有する棚卸資産に関して正味売却価額がマイナスの場合の期末評価について具体的にご紹介します。