解約不能の買付契約に関する期末評価

Question
当社は製造業を営んでおり、材料の買付価格を安定させるため、あらかじめ仕入先と仕入価格の決まった解約不能な買付契約を締結しています。しかしながら、今期においてその材料価格が大幅に下落し、棚卸資産の評価に関する会計基準で定められた期末における正味売却価額を試算したところ、買入価格を大きく下回っていることがわかりました。このような場合も、通常の棚卸資産と同様に評価損を計上すべきでしょうか?
【Answer】
買付契約については、購入までは買手側の棚卸資産とならなないため、『棚卸資産の評価に関する会計基準』の適用対象外となり、この基準で定められる棚卸資産の期末における簿価の切り下げは行いません。

しかしながらこのようなケースは、過去の事象に起因する将来の損失に該当しますので、引当金による損失計上を検討しなければなりません。

具体的には、買付契約の履行に伴って生じる損失が、当期以前の解約不能な買付契約の締結及び当期末までの事業環境の変化に起因しており、損失の発生の可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができるかを判定し、その条件に当てはまる場合には、『買付契約評価引当金』を繰り入れ、損失を計上します。
【解約不能の買付契約に関する評価損の会計処理】

下記の要件を全て満たす場合は、評価損失見込額を買付契約評価引当金に計上

~引当金の計上要件~
①買付契約の履行に伴って将来損失が発生す
 るおそれがある
②その損失が当期以前の事象に起因している
③損失の発生の可能性が高い
④損失額を合理的に見積もることができる
(『棚卸資産の評価に関する会計基準の会計基準案(平成18年7月5日公表)』に対するコメント『範囲ついて』
企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書「棚卸資産の評価について」注解(注8)
会計制度委員会研究資料第3号我が国の引当金に関する研究資料ケース9)
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