荷為替手形の振出人における
会計処理

【荷為替手形とは】

運送中の商品の引渡請求権を表章する運送業者発行の運送証券が担保として添付された為替手形。
荷為替手形とは、運送中の商品の引渡請求権を表章する運送業者発行の運送証券が、担保として添付された為替手形です。
【為替手形の仕組み】
当事者 会計処理

振出人
(支払を指示する人)

為替手形を振り出すことで、名宛人に対する債権が消滅し、代わりに、受取人から債務の相殺や現金の支払等を受ける。

≪振出時仕訳イメージ≫
(現金預金)XXX (売掛金)XXX

名宛人
(支払いを指示される人)

為替手形を引き受けることで、振出人に対する債務が消滅し、代わりに、受取人への債務が発生する。

≪引受時仕訳イメージ≫
(買掛金)XXX (支払手形)XXX

受取人
(支払いを受ける人)

債権としての為替手形を受取る対価として、振出人への債務を相殺又は現金の支払等を行う。

≪受取時仕訳イメージ≫
(受取手形)XXX 
     (現金預金)XXX
為替手形とは、手形の振出人が、名宛人に対して、手形を受取った受取人への支払を指示するものです。

手形振出人は名宛人に対して債権を有しており、その債権を直接名宛人から回収する代わりに、為替手形を振り出して、手形の受取人へ支払を指示します。

為替手形を振り出すことで、振出人は受取人から、債務の相殺や現金の支払等を受けることができます。

荷為替手形の場合、通常の為替手形に、担保として貸物引換証・船荷証券などの運送証券添付されています。
【荷為替手形の取引の流れと振出人の会計処理】
取引内容 振出人(商品販売者)における会計処理

①商品販売者が商品を運送業者へ引き渡す

船積基準で船積完了時に売上及び売掛金を計上

≪仕訳イメージ≫
(売掛金)XXX (売上高)XXX

②運送業者が貨物代表証券を商品販売者へ渡す

仕訳なし。

③商品販売者が振出人となり、取引先銀行Aを受取人とした為替手形(荷為替手形)を銀行Aへ振出。手数料を差し引いた手形の代金を銀行Aより入手。貨物代表証券を為替手形の担保として銀行Aに引き渡し。

売掛金を受取手形(荷為替手形)へ振替え、その受取手形の代金として受取った現金と手数料と相殺する。

≪仕訳イメージ≫
(受取手形)XXX (売掛金)XXX
(現金)XXX   (受取手形)XXX
(手形売却損)XXX

④商品販売者の取引先銀行Aが、購入者の取引先銀行Bへ、為替手形(荷為替手形)と貨物代表証券を引き渡す。

仕訳なし。

⑤購入者の取引先銀行Bが購入者に荷為替手形を呈示し、引受を依頼する。

仕訳なし。

⑥購入者は荷為替手形を引受けることで、取引先銀行Bより運送証券を受け取る。

仕訳なし。

⑦購入者は運送証券と引き換えに運送業者より商品を受取る。

仕訳なし。

⑧購入者は、荷為替手形の受取人である商品販売者の取引先銀行Aへ、為替手形の支払を行う。

仕訳なし。
荷為替手形は、輸出取引等、商品を運送業者が配達する取引で用いられる手形です。

商品販売者は、注文を受けた商品を運送業者へ引き渡し、購入者への発送を依頼します。

商品販売者においては、一般的に船積基準で売上を計上していることが多いです。

その場合、運送業者への船積が完了した時点で、購入者への売上高と売掛金を計上します。

船積完了後、運送業者は、貨物代表証券を商品販売者へ渡します。

発送される商品は、この貨物代表証券と引き換えに受取ることができます。

荷為替手形により代金を回収する場合、商品販売者は、自らが振出人となり、取引先銀行を受取人とした為替手形を発行します。

この時点で、対象の売掛金を、受取手形に振替えます。

そして取引先銀行に、為替手形及び、その担保として貨物代表証券を引き渡します。

その対価として、手数料を差し引いた手形の代金を受取ります。

この時点で、計上していた受取手形をマイナスし、相手勘定で、手数料を差し引いた入金と手数料として手形売却損を計上します。

荷為替手形の振出人の会計処理は、この時点で完了します。


その後、商品販売者の取引先銀行は、受取った為替手形と貨物代表証券を、購入者の取引先銀行に引き渡します。

購入者の取引先銀行は、購入者に対して荷為替手形を呈示し、引受を依頼します。

購入者は荷為替手形を引受けることで、取引先銀行より運送証券を受け取ります。

そして、その運送証券と引き換えに運送業者より商品を受取ります。

最後に、購入者は、荷為替手形の受取人である商品販売者の取引先銀行へ、為替手形の支払を行います。
【参考文献】
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-現金⒔外国通貨を受け取った』株式会社清文社
下記では、荷為替手形の振出人における会計処理について、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-現金⒔外国通貨を受け取った』株式会社清文社
前提条件
A社は輸出業を営んでおり、得意先B社との間で下記の取引を行った。

・X1年4月1日にB社への商品売上1,000千円分の船積が
 完了し、貨物代表証券を受取った
・A社はX1年4月30日に、B社への売掛金に関して、
 取引先銀行Xに荷為替手形を振出て、
 手数料20千円を
 差し引いた残高が入金された
・A社の売上計上基準は船積基準である
【原則法(利息法)の場合】
① X1年4月1日(船積が完了時)
借方 貸方
売掛金 1,000千円※1 売上高 1,000千円※1
※1船積が完了した商品売上高
船積が完了した商品について売上高及び売掛金を計上します。
② X1年4月30日(荷為手形振出&入金時)
借方 貸方
受取手形 1,000千円※2
現金預金 980円※3
手形売却損 20円※4
売掛金 1,000千円※2
受取手形 1,000千円※5
※2為替手形に振替えた売掛金額
※3手数料差し引き後の入金額
※4銀行への手数料額
※5銀行に引き渡した為替手形額
為替手形に振替えた売掛金を受取手形勘定に振替えます。その後、銀行に引き渡した為替手形分を、受取手形勘定からマイナスし、相手勘定で入金と、差し引かれた手数料として手形売却損を計上します。
次のページでは、先日付小切手を受取った場合の会計処理について具体的にご紹介します。