先日付小切手を振り出した場合の会計処理

【先日付小切手とは】

実際の振出日よりも将来の日付を振出日として記載した小切手。

振出日前でも銀行に呈示されれば引き出されてしまうが、道義上、振出日前の引き出しは行われないため、支払手形としての性質を持つ。


【先日付小切手の会計処理】

■パターン1

実際の振出時に当座預金勘定からマイナスする。

※当座預金出納帳では振出小切手にマークを
 付けるなどして管理。

≪仕訳イメージ≫
①先日付小切手振出時
(買掛金)XXX (当座預金)XXX

②決算時先日付小切手が残っている場合
(当座預金)XXX (支払手形)XXX


■パターン2

『支払先日付小切手』勘定で負債計上

≪仕訳イメージ≫
①先日付小切手振出時
(買掛金)XXX (支払先日付小切手)XXX

②決算時先日付小切手が残っている場合
(支払先日付小切手)XXX (支払手形)XXX


■パターン3

『支払手形』勘定で負債計上

≪仕訳イメージ≫
①先日付小切手振出時
(買掛金)XXX (支払手形)XXX

②決算時先日付小切手が残っている場合
 仕訳なし
先日付小切手とは、実際の振出日よりも将来の日付を振出日として記載した小切手です。

通常、小切手の日付は実際の振出日を記入します。

しかしながら、実務では資金繰等の理由で、将来の日付を振出日とした小切手が振出されることがあります。

小切手の法律上の効力としては、小切手上の日付に関わらず、銀行に呈示すれば支払いを受けることができます。

とはいうものの、取引先の信頼関係や、業界の慣行などから、振出日として記載された日より前に呈示しないことが、一般的な建前になっています。

このように、先日付小切手に記載された振出日前に引き出されることはないため、振出人にとっては支払手形のような性質を持ちます。

先日付小切手の会計処理には、いくつかの方法がありますが、ここでは3つの方法をご紹介します。

一つ目は、通常の小切手と同様に、実際に振り出した時点で当座預金勘定をマイナスする方法です。

そのうえで、当座預金出納帳では、該当の振出小切手にマークを付けるなどして、先日付小切手であることを管理します。

二つ目は、当座預金勘定ではなく『支払先日付小切手』勘定を設定し、こちらに計上する方法です。

上記いずれの方法においても、期末時点で先日付小切手となっているものについては、『支払手形』勘定へ振替、貸借対照表上では『支払手形』として表示します。

そして三つ目は、先日付小切手を『支払手形』勘定に計上する方法です。

この場合は、貸借対照表上の勘定科目と仕訳の科目が一致しているため、期末勘定科目振替が必要ありません。
【参考文献】
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-預金31先日付小切手を振り出した』株式会社清文社
下記では、先日付小切手を振り出した場合の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-預金31先日付小切手を振り出した』株式会社清文社
前提条件
・A社はX1年3月1日に買掛金代金1,000千円を、
 振出日X1年6月30日と記載した小切手で支払った。
・A社の決算日は3月31日である。
【当座預金に計上するケース】
① X1年3月1日(先日付小切手引渡時)
借方 貸方
買掛金 1,000千円※1 当座預金 1,000千円※1
※1先日付小切手振出額
通常の小切手と同様に、振り出して相手に渡した時点で、当座預金からマイナスします。
② X1年3月31日(決算時表示の組替)
借方 貸方
当座預金 1,000千円※2 支払手形 1,000千円※2
※2先日付小切手期末残高
期末に先日付で残っている小切手を、支払手形勘定へ振替えます。
【支払先日付小切手に計上するケース】
① X1年3月1日(先日付小切手引渡時)
借方 貸方
買掛金 1,000千円※1 支払先日付小切手 1,000千円※1
※1先日付小切手振出額
振り出して相手に渡した時点で、支払先日付小切手として負債計上します。
② X1年3月31日(決算時表示の組替)
借方 貸方
支払先日付小切手 1,000千円※2 支払手形 1,000千円※2
※1先日付小切手期末残高
期末に先日付となっている小切手の金額を、支払手形勘定へ振替えます。
【支払手形に計上するケース】
① X1年3月1日(先日付小切手引渡時)
借方 貸方
買掛金 1,000千円※1 支払手形 1,000千円※1
※1先日付小切手振出額
振り出して相手に渡した時点で、支払手形として負債計上します。
② X1年3月31日(決算時表示の組替)
仕訳なし
期中帳簿上の勘定科目と貸借対照表上の勘定科目が一致しているため、仕訳は不要です。
次のページでは、当座預金への売掛金の振込入金が未記帳であった場合の会計処理について具体的にご紹介します。