譲渡性預金を満期保有目的の
債権として会計処理
するための条件

譲渡性預金は、定期預金ではありますが、市場で自由に売買できる点で、通常の定期預金とは大きく異なり、有価証券的な性格を有しています。

金融商品取引法上では、外国法人が発行する譲渡性預金証書は有価証券に該当しますが、内国法人が発行する譲渡性預金はそれに該当しません。

しかしながら、どちらも同一の性質を有しているため、金融商品会計においては有価証券として会計処理するとされています。

そのため、渡性預金は満期保有目的の債権として保有することができます。 【参考文献】
会計制度委員会報告第14号金融商品に関する実務指針第8項・第58項
金融商品会計に関するQ&A-Q67
【満期保有目的の債権に分類する条件】

・『満期時まで保有する目的であること』
 を取得時に確認し得ること

・『満期時まで保有する目的であること』
 を取得時以降に継続して確認し得ること

・あらかじめ償還日が定められた債権
 であること

・額面金額による償還が予定されている
 債権であること

・信用リスクの高くない債券であること

※同一銘柄の有価証券を異なる保有目的区分
 で保有することはOK!
債券を満期保有目的の債券に分類するためには、いくつかの条件が規定されています。

まず一つ目は、『満期時まで保有する目的であること』を債券の取得時に確認し得ることが必要であるということです。

そのため、他の目的で取得した債権については、満期保有目的の債権に振替えることは認められません。

また満期保有目的の債券として取扱い続けるには、取得時以降も『満期時まで保有する目的であること』を継続して確認し得ることが必要です。

そのため、もしも取得後に保有目的が変更された場合には、当該変更後の保有目的区分へ会計処理を変更しなければなりません。

『満期時まで保有する目的であること』は、企業が償還期限まで所有するという積極的な意思とその能力に基づいていなければなりません。

そのため、保有期間が漠然と長期であるだけの債権や、市場金利や為替相場の変動等の将来の不確定要因の発生いかんによっては売却が予測される債権は、満期まで所有する意思があるとは認められず、満期保有目的の債権に分類できません。

また、企業の資金繰り計画や法律等の障害等により、継続的な保有が困難と判断される場合には、満期まで保有する能力があるとは認められず、満期保有目的の債権に分類できません。

さらに、対象の債権は、『あらかじめ償還日が定められた』ものでなければなりません。

それに加えて、『額面金額による償還が予定されている』ものでなければなりません。

そのため、信用リスクの高い債券については、満期保有目的の債権に分類することができません。

信用リスクの判定を行うために、各企業は原則として、信用格付業者による格付に基づいて「信用リスクが高くない」水準を決定し、これを満期保有目的の債券としての適格要件に関する合理的な判断基準として設定する必要があります。

ただし、格付を取得していない私募債を引き受ける場合等も想定されることから、上記の方法と同等程度の客観的な信頼性を確保し得る方法、例えば、発行者の財政状態及び経営成績等に基づいた合理的な判断基準を設定する方法によることも認められます。

いずれの方法によるにしても継続適用しなければならず、判断基準はあらかじめ文書をもって設定することが適当であるとされています。

なお、会社の資金運用方針等に基づき、同一銘柄の有価証券を異なる保有目的区分で保有することは認められます。
【参考文献】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第16・72項
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第59・68・69・272・273項
金融商品会計に関するQ&A-Q22
次のページでは、既発の譲渡性預金を満期保有目的の債権として保有する場合の会計処理(利息法/利払日と決算日が一致する)について具体的にご紹介します。