裏書譲渡した営業外受取手形が不渡りとなった場合の会計処理

【裏書手形の遡及義務】

裏書譲渡した手形が不渡りになった場合、裏書人は支払人に代わって手形代金を被裏書人に支払う義務を負う


【裏書した手形が不渡りになった場合の
               会計処理】
 ①裏書譲渡時
  (諸勘定)XXX    (営業外受取手形)XXX
  (保証債務費用)XXX (保証債務)XXX

 ②裏書手形不渡時
  (不渡手形)XXX (当座預金)XXX
  (保証債務)XXX (保証債務取崩益)XXX

 ③支払拒絶証書作成費用等支払時
  (不渡手形)XXX (現金)XXX

 ④不渡手形回収時
  (当座預金)XXX (不渡手形)XXX
          (受取利息)XXX
自身が裏書人となっている手形が支払人から決済されなかった場合、裏書人は支払人に代わって被裏書人に、手形代金の支払いを行わなければなりません。

そのため、営業外受取手形を裏書したときは、この遡及義務の時価評価額を偶発債務とし計上します。

具体的には、保証債務の時価評価額を『保証債務』等の勘定科目で負債認識すると同時に、相手勘定で『保証債務費用』等の勘定科目で保証費用を計上します。

そして実際に、裏書手形が不渡りになった場合には、裏書人は被裏書人に対して手形代金を支払います。

この支払いを行うことにより、裏書人には支払人に対する償還請求権が発生します。

そのため、裏書手形を支払人に代わって支払った際には、キャッシュアウトの仕訳の相手勘定で、支払人に対する償還請求権として『不渡手形』を資産計上します。

また、裏書時に計上していた保証債務については、支払と同時に遡及義務が消滅するため、『保証債務取崩益』等を相手勘定にして取り崩します。

営業外受取手形が不渡りになった場合、手形金額だけでなく、不渡りに伴って発生する支払拒絶証書作成費用や、通信費、支払期日以後の法定利息についても、償還請求できる金額に加算されます。

不渡りに伴って支出した費用については、不渡手形勘定で資産計上します。

支払期日以後の法定利息については、受取利息として収益計上します。
下記では、裏書譲渡した営業外受取手形が不渡りとなった場合の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社は小売業を営んでおり、仕入先B社との間で下記の取引を行った。

・X1年4月1日にB社への未払金1,000千円の支払いとして、
 得意先C社からの営業外受取手形1,000千円を
 裏書譲渡した
・裏書譲渡時の保証債務の時価評価額は5千円であった
・X1年5月31日に裏書した手形が不渡りとなり、C社に
 代わって支払いを行った
・X1年5月31日にC社に対して償還請求を行い、
 支払拒絶証書の作成費用3千円を支払った
・X1年6月30日にC社から不渡手形1,000千円、
 支払拒絶証書の作成費用3千円及び、法定利息5千円の
 
 支払いを受けた
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(手形裏書時)
借方 貸方
未払金 1,000千円※1
債務保証費用 5千円※3
営業外受取手形 1,000千円※2
保証債務 5千円※3
※1裏書により支払った未払金額
※2裏書した営業外受取手形金額
※3保証債務の時価評価額
裏書により譲渡した営業外受取手形と支払対象である未払金を相殺消去します。同時に、保証債務を負債認識し、相手勘定で保証債務費用を費用計上します。
② X1年5月31日(不渡&手形代金支払時)
借方 貸方
不渡手形 1,000千円※4
保証債務 5千円※3
現金預金 1,000千円※4
保証債務取崩益 5千円※3
※3保証債務帳簿価額
※4裏書手形に対する支払額
裏書手形に対する支払額を現金預金からマイナスし、相手勘定で不渡手形を資産計上します。同時に、支払により消滅した保証債務の帳簿価額をマイナスし、相手勘定で取崩益を計上します。
③ X1年5月31日(支払拒絶証書の作成費用支払時)
借方 貸方
不渡手形 3千円※5 現金預金 3千円※5
※5支払拒絶証書の作成費用
不渡手形の償還請求のための支出については、支出時に不渡手形勘定で資産計上します。
④ X1年6月30日(回収時)
借方 貸方
現金預金 1,008千円※8 不渡手形 1,003千円※6
受取利息 5千円※7
※6回収した不渡手形帳簿価額
※7受領した法定利息額
※8回収した不渡手形帳簿価額1,003千円
 +受領した法定利息額5千円
受領した現金預金の相手勘定で、決済された不渡手形をマイナスし、同時に法定利息分を受取利息として収益計上します。
次のページでは、営業外受取手形の裏書譲渡を受けた場合の会計処理について具体的にご紹介します。