営業外受取手形を割引した場合の会計処理

【手形の割引とは】
満期日前に銀行等に手形を買い取ってもらうこと

【営業外受取手形を割引した場合の
               会計処理】
 ①割引時
  (当座預金)XXX  (営業外受取手形)XXX
  (手形売却損)XXX    
  (貸倒引当金)XXX (貸倒引当金戻入)XXX
  (保証債務費用)XXX (保証債務)XXX

 ②割引手形決済時
  (保証債務)XXX (保証債務取崩益)XXX
手形は、取引銀行などに買い取ってもらうことで、満期日前に現金化することができます。

これを『手形の割引』といい、割引した手形を割引手形といいます。

手形を割引く際には、支払期日までの日数に相当する利息が手形金額から差し引かれて、代金が支払われます。

この利息相当額を、手形の『割引料』といいます。

割引料は、『手形売却損』等の勘定科目で、営業外費用に計上します。

手形の割引料は、一般的に下記の算定式で算出されます。
【手形の割引料の算定方法】

割引料=手形金額×割引率(%)
    ×割引日から満期までの日数(※)
    ÷365日

※日数は両端入れであり、割引日と支払期日
 の両方を含む。
営業外受取手形を割引いた場合、その権利は銀行等に移動するため、営業外受取手形の消滅を認識して、その帳簿価額を営業外受取手形勘定から直接減額します。

対象の営業外受取手形に貸倒引当金を計上している場合には、同時に、貸倒引当金の戻し入れも行います。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第8・9・56・57・58・62項・(注4)
ただし、割引いた手形が支払人から決済されなかった場合、割引側は手形を購入した銀行等に、支払人に代わって手形代金を支払わなければならないという遡及義務を負います。

そのため、営業外受取手形を割引いたときは、この遡及義務の時価評価額を偶発債務として計上します。

具体的には、保証債務の時価評価額を、『保証債務』等の勘定科目で負債認識すると同時に、相手勘定で『保証債務費用』等の勘定科目で保証費用をを計上します。

割引いた手形が決済された場合は、保証義務は消滅するため『保証債務』等の勘定科目で計上していた偶発債務を取崩し、その相手仕訳で『保証債務取崩益』等で戻入益を計上します。
下記では、営業外受取手形を割引く場合の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社は小売業を営んでおり、取引先銀行Bとの間で下記の取引を行った。

・X1年4月2日に得意先C社からの営業外受取手形1,000千円
 を、銀行Bに買い取ってもらった
・割引した営業外受取手形に対しては、5千円の
 貸倒引当金を設定していた
・手形の割引日から満期日までの期間は60日であった
・割引料の利率は年間8%であった
・割引時の保証債務の時価評価額は5千円であった
・X1年5月31日に割引した手形について、C社から銀行Bへの
 支払が全額完了した
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月2日(手形割引時)
借方 貸方
現金預金 987千円※3
手形売却損 13千円※2
貸倒引当金 5千円※4
債務保証費用 5千円※5
営業外受取手形 1,000千円※1

貸倒引当金戻入 5千円※4
保証債務 5千円※5
※1割引いた営業外受取手形の帳簿価額
※2割引いた営業外受取手形価額1,000千円×8%×60日÷365日
※3割引いた手形金額1,000千円-割引料13千円
※4対象の受取手形に対する貸倒引当金既計上額
※5保証債務の時価評価額
割引いた営業外受取手形を資産からマイナスする同時にと、割引料を手形売却損として計上し、差額を現金預金に計上します。同時に、対象の営業外受取手形に計上していた貸倒引当金を戻し入れます。さらに、保証債務を負債認識し、相手勘定で保証債務費用を費用計上します。
② X1年5月31日(割引手形決済時)
借方 貸方
保証債務 5千円※5 保証債務取崩益 5千円※5
※5保証債務帳簿価額
割引手形の決済時には、消滅した保証債務の帳簿価額をマイナスし、相手勘定で取崩益を計上します。
次のページでは、営業外取手形の更改を受けた場合の会計処理について具体的にご紹介します。