外貨建取引で換算に使用する決算時の直物為替相場とは

【決算時の直物為替相場】

原則:為替取引市場における決算日の
   直物為替相場


例外:決算日の前後一定期間の直物為替相場
   に基づいて算出された平均相場

    ※決算日の直物為替相場が異常と認
     められる場合のみ使用可

    ※継続適用不要

    ※平均相場を用いた場合、下記を
     要注記
     ①決算日の実際の直物為替相場
     ②換算に使用した決算日の前後
      一定期間の直物為替相場に基づ
      いて算出された平均相場

※原則・例外どちらを用いた場合も、在外
 支店の財務諸表項目の換算は原則として
 本店等と同一のものを要適用
決算時の直物為替相場としては、原則として、為替取引市場における決算日の直物為替相場を使用します。

ただし、決算日前後の為替相場の変動状況から判断して、決算日の直物為替相場が異常と認められる場合は、決算日の前後一定期間の直物為替相場に基づいて算出された平均相場を用いることができます。

平均相場を使用する理由は、決算日の直物為替相場が”異常”であるためなので、平均相場は継続適用する必要ありません。

平均相場の算定期間として認められる「決算日の前後一定期間」は、決算日を含むおおむね1か月以内の期間の中で、為替相場の変動の推移、外貨建金銭債権債務残高及びその決済日等を考慮して合理的に判断して決定します。

また、決算時の為替相場として平均相場を用いた場合は、『決算日の実際の直物為替相場』と『決算日の前後一定期間の直物為替相場に基づいて算出された平均相場』を、財務諸表等に注記しなければならなりません。

また、原則・例外どちらの為替相場を用いた場合であっても、在外支店の財務諸表項目の換算にしようする決算時の為替相場は、原則として本店等において外貨建金銭債権債務等の換算に適用する為替相場と同一でなければならないという点に留意が必要です。
【参考文献】
外貨建取引等会計処理基準(注8)
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第11・55項
【3種類の為替相場】
為替相場の種類 内容/用途

T.T.S
(電信売相場)

仕入れその他の費用の換算に用いる。
銀行側から見て、外貨を”売る”相場である。

T.T.B
(電信買相場)

売上げその他の収入の換算に用いる。
銀行側から見て、外貨を”買う”相場である。

T.T.M
(電信売買相場の仲値)

法人税法において原則として換算に使用される。
上記で、直物為替相場と平均相場の2つの選択肢が登場しましたが、それぞれの相場において、さらにT.T.S(電信売相場)、T.T.B(電信買相場)、T.T.M(電信売買相場の仲値)の3種類の為替相場が存在します。

T.T.S(電信売相場)は、銀行側からみて外貨を売る取引に適用される相場です。

そのため、外貨建の債務・仕入高・その他費用など、企業の立場から外貨を支払わなければならない(=銀行から外貨を買わなければならない)取引の換算に使用します。

その反対に、T.T.B(電信買相場)は、銀行側からみて外貨を買う取引に適用される相場です。

そのため、外貨建の債権・売上高・その他収入など、企業の立場から外貨を受取る(=受取った外貨を銀行へ売る)取引の換算に使用します。

T.T.Mは電信売買相場の仲値であり、法人税法においては、原則としてこのレートを使用して換算しなければなりません。
【参考文献】
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-現金⒔外国通貨を受取った』株式会社清文社
次のページでは、為替差損益の損益計算書上の表示について具体的にご紹介します。