純粋多通貨会計と準他通貨会計

多通貨会計は、PL項目を基本通貨(通常の記帳に使している通貨)へ換算替するタイミングの違いにより『純粋多通貨会計』と『準多通貨会計』に分かれます。

『純粋多通貨会計』では、PLもBSも期を通じて外貨建で記録され、一定時点の同じタイミングでその時の為替相場(PL/BSともに同じ相場を使用)により基本通貨に換算替します。

それに対して『準多通貨会計』では、PLのみ各月末等においてその期間の直物為替相場の平均値または末日の直物為替相場で基本通貨に換算替し、BSについては『純粋多通貨会計』と同様に、期を通じて外貨建で記録され、期末等のタイミングでその時の為替相場により基本通貨に換算替します。

『純粋多通貨会計』では、PLとBSを同じ為替相場で換算替するため、異通貨間取引が発生しない限り為替差損益が生じることはありません。

それに対して『準多通貨会計』では、PLとBSを異なる為替相場で換算替するため、その相場の差異から為替差損益が発生します。

『準多通貨会計』はPLを取引発生時の為替相場で換算する一通貨会計(全てを基本通貨建で記録する方法)とより調和する換算の方法であり、さらに、半期・四半期の開示において、既に公表されたPLを修正することを避けることができるため、一般的に公表用の財務諸表の作成において広く採用されています。
多通貨会計の種類 特徴

純粋多通貨会計

【PL/BS】
期を通じて外貨建で記録
⇒一定時点の同じタイミング
 でその時の為替相場で
 換算替

※異通貨間取引が無い限り
 為替差損益が生じることは
 無い

準多通貨会計

【PL】
各月末等にその期間の直物為替相場の平均値または末日の直物為替相場で換算替

【BS】
期を通じて外貨建で記録
⇒一定時点の同じタイミング
 でその時の為替相場で
 換算替

※PL/BSの換算相場の違いに
 より為替差損益が発生

※公表用の財務諸表において
 広く採用されている
(多通貨会計のガイドライン第3・4項)
下記では、多通貨会計における『純粋多通貨会計』と『準多通貨会計』の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。(参考:多通貨会計のガイドライン例示3・4)
前提条件
A社にはX事業部とY事業部の2つの事業部があり、X事業部は国内事業を行っているが、Y事業部においては海外向けの事業を行っており、恒常的にUSDのみを使用して事業を営んでいる。そのため、Y事業部の会計記録はUSD建てで行っており、A社は多通貨会計を採用している。
A社における当期中の取引は下記の通りであった。


①Y事業部において1,000USDを借入れて現金預金に計上した

②Y事業部は借入金に対する利息として2USDを支払った

③X年1月の直物為替相場の平均値は@100円/USDであった

④事業部は借入金に対する利息として2USDを支払った

⑤X年2月の直物為替相場の平均値は@95円/USDであった

⑥総合試算表作成時における為替相場は@105円/USDで
 あった。
上記の取引を『純粋多通貨会計』の試算表で表すと、下記のようになります。
No 勘定科目 USD建による記録 円建による記録(円) 円建総合試算表(円)
原通貨(USD) 円換算額(円)
現金預金
借入金
1,000
(1,000)
支払利息
現金預金
2
(2)
仕訳なし
支払利息
現金預金
2
(2)
仕訳なし
(合計)
換算
総合
現金預金
借入金
支払利息
996
(1,000)
4
104,580
(105,000)
420
104,580
(105,000)
420
それに対して、『純粋多通貨会計』の試算表で表すと、下記のようになります。
No 勘定科目 USD建による記録 円建による記録(円) 円建総合試算表(円)
原通貨(USD) 円換算額(円)
現金預金
借入金
1,000
(1,000)
支払利息
現金預金
2
(2)
支払利息
通貨振替勘定
(2)
2
200
(200)
支払利息
現金預金
2
(2)
支払利息
通貨振替勘定
(2)
2
190
(190)
為替差損
通貨振替勘定

30
(30)
(合計)
換算
総合
現金預金
借入金
通貨振替勘定
支払利息
為替差損
996
(1,000)
4

104,580
(105,000)
420



(420)
390
30
104,580
(105,000)

390
30
次のページでは、外貨建取引で換算に使用する期中平均相場について具体的にご紹介します。