在外子会社の資本連結におけるのれん又は負ののれんの計上額
在外子会社ののれんが、正ののれんである場合、その残高は外国通貨で把握し、取得後の各決算日の円建のれん残高は、外貨建のれん残高を決算時の為替相場で円換算して算定します。
正のれんは20年以内の任意の期間で償却しますが、各期の円建償却額は、のれんの外貨建価額を償却期間で除して、在外子会社の会計期間に基づく期中平均相場で換算することで計算します。
そのため、各決算期末の為替相場及び、償却費の計算に使用した期中平均相場の違いから、為替差額が生じます。
この為替差額は、為替換算調整勘定に計上します。
正のれんは20年以内の任意の期間で償却しますが、各期の円建償却額は、のれんの外貨建価額を償却期間で除して、在外子会社の会計期間に基づく期中平均相場で換算することで計算します。
そのため、各決算期末の為替相場及び、償却費の計算に使用した期中平均相場の違いから、為替差額が生じます。
この為替差額は、為替換算調整勘定に計上します。
【外貨建正ののれんの換算】
換算の対象 | 円換算方法 |
---|---|
支配獲得時におけるのれん |
外国通貨で把握 |
のれんの償却額 (20以内の任意の期間で償却) |
期中平均相場により円換算 |
決算時におけるのれん |
決算時の為替相場により円換算 ⇒為替差額は為替換算調整 勘定に計上 |
それに対して、負ののれんの場合、のれんは原則として在外子会社の支配を獲得した事業年度に全額特別利益として計上します。
そのため、のれんの期末残高、償却費、及び為替換算調整勘定は発生しません。
負ののれんを全額利益計上する際には、取得時又は発生時の為替相場で円換算します。
そのため、のれんの期末残高、償却費、及び為替換算調整勘定は発生しません。
負ののれんを全額利益計上する際には、取得時又は発生時の為替相場で円換算します。
【外貨建負ののれんの換算】
換算の対象 | 円換算方法 |
---|---|
支配獲得時におけるのれん |
外国通貨で把握 |
負ののれんの利益計上額 (支配獲得事業年度に全額利益計上) |
取得時又は発生時の為替相場で円換算 |
決算時におけるのれん |
のれん残高が残ることはない |
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第40項)
下記では、在外子会社ののれんの会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
(参考:外貨建取引等の会計処理に関する実務指針設例11)
前提条件 |
---|
日本法人であるA社はX1年3月31日に、アメリカに本社を置くZ社の株式80%を4,000千USDで取得し、連結子会社とした。
・簡略化のため在外子会社ののれんに係る部分を抜粋する ・取得時Z社純資産価額は3,880千USDであった ・のれんは10年で償却する ・X1年3月31日の為替相場は@100円/USDであった ・A社Z社ともに、決算日は3月31日である |
【連結修正仕訳】
① 資本連結の仕訳でのれんを計上
① 資本連結の仕訳でのれんを計上
借方 | 貸方 |
---|---|
資本金等 388,000千円※1
のれん 89,600千円※4 |
Z社株式 400,000千円※2
非支配株主持分 77,600千円※3 |
※1Z社資本項目帳簿価額
(簡略化のため資本金等でまとめて示す)
※2Z社株式取得価額4,000千USD×取得時為替相場
@100円/USD
※3取得時Z社純資産価額3,880千USD
×取得時為替相場@100円/USD×少数株主持分20%
※4(取得時Z社純資産価額3,880千USD×取得比率80%
-Z社株式取得価額4,000千USD)×決算時為替相場
@100円/USD
(簡略化のため資本金等でまとめて示す)
※2Z社株式取得価額4,000千USD×取得時為替相場
@100円/USD
※3取得時Z社純資産価額3,880千USD
×取得時為替相場@100円/USD×少数株主持分20%
※4(取得時Z社純資産価額3,880千USD×取得比率80%
-Z社株式取得価額4,000千USD)×決算時為替相場
@100円/USD
Z社株式の外貨建取得価額と、取得時Z社外貨建純資産額の持分相当額との差額をのれんとして認識します。のれんの円建計上額は、決算時の為替相場で換算して算定します。
翌期の会計処理は、下記のようになります。
追加前提条件 |
---|
・X2年3月31日期の期中平均レートは@110円/USD
・X2年3月31日期の期末レートは@120円/USD |
【連結修正仕訳】
② 開始仕訳
② 開始仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
資本金等 388,000千円※5
のれん 89,600千円※8 |
Z社株式 400,000千円※6
非支配株主持分 77,600千円※7 |
※5前期末における資本連結で相殺対象となるZ社資本項目
帳簿価額(簡略化のため資本金等でまとめて示す)
※6Z社株式取得価額4,000千USD×取得時為替相場
@100円/USD
※7前期末非支配株主持分残高
※8前期末のれん残高
帳簿価額(簡略化のため資本金等でまとめて示す)
※6Z社株式取得価額4,000千USD×取得時為替相場
@100円/USD
※7前期末非支配株主持分残高
※8前期末のれん残高
Z社の支配獲得が前期末のため、前期の投資と資本の相殺仕訳と同様の仕訳を計上します。
③ のれんの償却
借方 | 貸方 |
---|---|
のれん償却 9,856千円※9 | のれん 9,856千円※9 |
※9(取得時Z社純資産価額3,880千USD×取得比率80%
-Z社株式取得価額4,000千USD)
÷償却期間10年
×期中平均相場@110円/USD
-Z社株式取得価額4,000千USD)
÷償却期間10年
×期中平均相場@110円/USD
外貨建てののれん計上額を償却期間で按分した金額を、期中平均レートで円換算した金額で、円建てののれん償却費を計上します。
④ のれんの為替換算調整勘定の修正
借方 | 貸方 |
---|---|
のれん 17,024千円※10 |
為替換算調整勘定 17,024千円※11 |
※10外貨建のれん帳簿残高806.4千USD
×期末為替相場@120円/USD-(前期末のれん円建残高
89,600千円
-当期のれん償却費9,856千円)
×期末為替相場@120円/USD-(前期末のれん円建残高
89,600千円
-当期のれん償却費9,856千円)
のれんの帳簿残高を期末為替相場で換算替えし、換算差額は為替換算調整勘定に計上します。
次のページでは、在外子会社の資本連結における非支配株主持分計上額について具体的にご紹介します。