在外子会社の資本連結における資産・負債の時価評価差額

在外子会社の支配獲得時に、在外子会社の資産及び負債に時価評価差額がある場合、資本連結に際して在外子会社の外貨建財務諸表を円換算する前に、税効果会計を適用したうえでその評価差額を修正する仕訳を計上します。

例えば、在外子会社が保有している土地に時価評価益がある場合は、下記のような仕訳を計上して、評価差額を調整します。
【支配獲得時に在外子会社の土地に
    時価評価益がある場合の仕訳例】

 (土地)×××     (繰延税金負債)×××
           (評価差額)×××

※単位は現地通貨を使用
在外子会社の個別財務諸表上では、上記で計上する『評価差額』は資本の部に計上され、換算替えの際には、支配獲得時の為替相場で円換算されます。

それに対して、在外子会社の資産・負債は、決算時の為替相場で換算されるため、支配獲得時の時価で評価替された資産・負債(仕訳例でいうと土地勘定)及び繰延税金資産・負債は、決算時の為替相場で換算されます。

このように、両者は異なる為替相場で期末換算されており、それにより発生する差額は、為替勘定調整勘定として資本の部に計上します。
【在外子会社の個別財務諸表上の各項目の取扱】
対象 取扱い

評価替した資産・負債

他の資産・負債と同様、決算時の為替相場で換算

繰延税金資産・負債

他の繰延税金資産・負債と同様、決算時の為替相場で換算

評価差額

資本の部に計上し、支配獲得時の為替相場で換算

上記の為替差額

為替換算調整勘定として、資本の部に計上
また、連結財務諸表では、『評価差額』は資本連結の際に、在外子会社との投資と相殺されて、残高がゼロになるため、連結貸借対照表上に計上されることはありません。

それに対して、評価替の対象となった資産・負債及び、それに伴って計上した繰延税金資産・負債は、他の通常の資産・負債とともに、連結貸借対照表に計上されます。

在外子会社の個別貸借対照表で計上した『為替換算調整勘定』は、親会社持分相当額については『為替換算調整勘定』のままですが、非支配株主持分相当額については『非支配株主持分』に振替えられます。
【連結財務諸表上の各項目の取扱】
対象 取扱い

評価替えした資産・負債

他の資産・負債と同様、連結貸借対照表に計上

繰延税金資産・負債

他の繰延税金資産・負債と同様、連結貸借対照表に計上

評価差額

資本連結の際に、投資勘定と相殺消去

為替差額

親会社持分相当額
⇒為替換算調整勘定に計上

非支配株主持分相当額
⇒非支配株主持分に計上
また、この評価差額の計上は、非支配株主持分も含めて全面時価評価法により支配獲得時に一度だけ行うため、その後、親会社の持分比率の変動があったとしても、対象の在外子会社が子会社であり続ける限り固定され、『評価差額』の円換算額が変動することはありません。
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第36・37・72-2項)
下記では、在外子会社の支配獲得の資産・負債の時価評価差額の取扱いについて、具体例を使用してご紹介します。 (参考:外貨建取引等の会計処理に関する実務指針設例11)
前提条件
日本法人であるA社はX1年3月31日に、アメリカに本社を置くZ社の株式80%を×××千USDで取得し、連結子会社とした。

・簡略化のため在外子会社の支配獲得の資産・負債の時価
 評価差額に係る部分を抜粋する
・X1年3月31日におけるZ社の帳簿価額1,500千USDの土地の
 時価は、1,800千USDであった
・土地以外のZ社のX1年3月31日の資産及び負債については
 時価評価差額はない
・X1年3月31日の為替相場は@100円/USDであった
・A社Z社ともに、実効税率は40%である
・A社Z社ともに、決算日は3月31日である
【Z社の外貨建て財務諸表の修正】
① 土地の評価差額の計上
借方 貸方
土地 300千USD※1 繰延税金負債 120千USD※2
評価差額 180千USD※3
※1Z社土地の支配獲得時時価1,800千USD-Z社土地の帳簿価額
  1,500千USD
※2Z社土地評価差額300千USD×実効税率40%
※3Z社土地評価差額300千USD-繰延税金負債120千USD
Z社の資産及び負債をA社が支配獲得した時点の時価で評価替えします。
評価差額については、税効果を加味した金額で計上します。

資産・負債の評価替え後のZ社の外貨建て貸借対照表(評価替関する部分の抜粋)は下記のようになります。
貸借対照表(単位:千USD)
土地(評価差額部分) 300 繰延税金負債 120
評価差額 180
【Z社の貸借対照表の円換算】
② Z社の外貨建て貸借対照表を円換算します。
貸借対照表(単位:千円)
土地(評価差額部分) 30,000※4 繰延税金負債 12,000※4
評価差額 18,000※5
※4決算時の為替相場@100円/USDで円換算
※5支配獲得時の為替相場@100円/USDで円換算
円換算したZ社の財務諸表をA社の財務諸表と合算します。
【資本連結仕訳】
③ Z社株式とZ社の資本を相殺消去します
借方 貸方
評価差額 18,000千円※6 Z社株式 14,400千円※7
非支配株主持分 3,600千円※8
※6Z社個別貸借対照表で計上した『評価差額』
※7A社個別財務諸表に計上したZ社株式帳簿価額の内、
 『評価差額』と相殺される部分を抜粋
※8非支配株式持分の内、『評価差額』と相殺される部分を
 抜粋
Z社の個別貸借対照表で計上した『評価差額』は、資本連結でZ社株式及び非支配株主持分に振替えられ、ゼロになります。

また、翌期の会計処理は、下記のようになります。
追加前提条件
・X2年3月31日の期末レートは@120円/USD
【Z社の外貨建て財務諸表の修正】
④ 土地の評価差額の計上
借方 貸方
土地 300千USD※1 繰延税金負債 120千USD※2
評価差額 180千USD※3
※1Z社土地の支配獲得時の時価1,800千USD-Z社土地の
  帳簿価額1,500千USD
※2Z社土地評価差額300千USD×実効税率40%
※3Z社土地評価差額300千USD-繰延税金負債120千USD
前期と同様の修正を行います。

資産・負債の評価替え後のZ社の外貨建て貸借対照表(評価替関する部分の抜粋)は下記のようになります。
貸借対照表(単位:千USD)
土地(評価差額部分) 300 繰延税金負債 120
評価差額 180
【Z社の貸借対照表の円換算】
⑤ Z社の外貨建て貸借対照表を円換算します。
貸借対照表(単位:千円)
土地(評価差額部分) 36,000※9 繰延税金負債 14,400※9
評価差額 18,000※10
為替換算調整勘定 3,600※11
※9決算時の為替相場@120円/USDで円換算
※10支配獲得時の為替相場@100円/USDで円換算
※11貸借差額
土地に計上した評価差額及び繰延税金負債は決算時の為替相場で換算しますが、『評価差額』は支配獲得時の為替相場で換算します。両者の換算相場の違いにより生じた貸借差額は、為替換算調整勘定に計上します。
円換算したZ社の財務諸表をA社の財務諸表と合算します。
【資本連結仕訳】
⑥ Z社株式とZ社の資本を相殺消去します
借方 貸方
評価差額 18,000千円※12

為替換算調整勘定 720千円※15
Z社株式 14,400千円※13
非支配株主持分 3,600千円※14
非支配株主持分 720千円※15
※12Z社個別貸借対照表で計上した『評価差額』
※13A社個別財務諸表に計上したZ社株式帳簿価額の内、
  『評価差額』と相殺される部分を抜粋
※14非支配株主持分の内、『評価差額』と相殺される部分を
  抜粋
※15評価差額から発生した為替換算調整勘定の内、
  非支配株主に属するの部分を『非支配株式持分』へ振替
Z社の個別貸借対照表で計上した『評価差額』は、資本連結でZ社株式及び非支配株主持分に振替えられ、ゼロになります。Z社個別貸借対照表で計上した『為替換算調整勘定』の内、非支配株主に属する部分は『非支配株主持分』へ振り替え、連結貸借対照表上では親会社に帰属する部分のみが『為替換算調整勘定』に残ります。
次のページでは、在外子会社の資本連結におけるのれん又は負ののれんの計上額について具体的にご紹介します。