在外子会社等の配当金の
為替換算
在外子会社等の配当金は、下記のように為替換算を行います。
換算の対象 | 会計処理 |
---|---|
子会社で計上した支払配当金 (利益剰余金のマイナス) |
配当決議日の為替相場で換算 ⇒原資である剰余金の円換算 額との差額は為替換算調 整勘定となり、子会社株式 が売却又は清算される迄 存 |
親会社が計上する受取配当金 |
子会社の支払配当金の換算に使用した為替相場で換算 ⇒円換算額は子会社の支払配当金と一致 |
親会社が計上する未収配当金 |
【受取配当金計上時】 受取配当金と同じ円貨額で計上 【受取配当金計上後】 為替相場の変動の影響は為替差損益計上 |
子会社での支払配当金額と親会社の受取配当金額はどちらも、配当決議日の為替相場で換算します。
配当決議日の為替相場として使用する相場は、配当決議の方法、繰上方式の採用の有無により、下記のように決定します。
配当決議日の為替相場として使用する相場は、配当決議の方法、繰上方式の採用の有無により、下記のように決定します。
【配当決議日の為替相場】
①取締役会で配当決議を行う国に所在する
在外子会社等において決算日に配当宣言が
行われる場合
⇒当該決算日の為替相場
②株主総会で配当決議を行う国に所在する
在外子会社等で、親会社が繰上方式で配当
を計上する場合
⇒親会社の決算日の為替相場
③株主総会で配当決議を行う国に所在する
在外子会社等で、親会社が繰上方式を採用
しない場合
⇒剰余金の配当が確定した日の為替相場
①取締役会で配当決議を行う国に所在する
在外子会社等において決算日に配当宣言が
行われる場合
⇒当該決算日の為替相場
②株主総会で配当決議を行う国に所在する
在外子会社等で、親会社が繰上方式で配当
を計上する場合
⇒親会社の決算日の為替相場
③株主総会で配当決議を行う国に所在する
在外子会社等で、親会社が繰上方式を採用
しない場合
⇒剰余金の配当が確定した日の為替相場
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第44・77項)
下記では、在外子会社の支払配当金の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
(参考:外貨建取引等の会計処理に関する実務指針設例14)
前提条件 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
日本法人であるA社は、アメリカに本社を置くZ社の株式を100%保有している。
・ Z社はX1年6月1日取締役会の決議に基づき1,000千USDの 配当宣言を行い、即日、配当金を送金した ・A社はX1年6月1日入金した10千USDを当日円転し、現金預金 とした ・X1年6月1日の直物為替相場は@90円/USDであった ・Z社の期首貸借対照表は次のとおりであった
Z社配当金の収受のみであると仮定する ・前期末及び当期末の直物為替相場は@100円/USDであった ・A社及びZ社の決算日は3月31日 |
【Z社の会計処理】
X1年6月1日(配当決議&支払時)
X1年6月1日(配当決議&支払時)
借方 | 貸方 |
---|---|
支払配当金 90,000千円(1,000千USD)※1 |
現金預金 90,000千円(1,000千USD)※1 |
※1配当決議&支払時の相場@90円×1,000千USD
配当決議&支払時の為替相場で支払配当金を円換算します。
配当金支払後のZ社の株主資本等変動計算書(利益剰余金部分のみ)及び貸借対照表は下記のようになります。
株主資本等変動計算書(単位:千円(千USD)) | |
---|---|
期末利益剰余金 10,000(0)※2
支払配当金 90,000(1,000)※3 |
期首利益剰余金 100,000(1,000)※4 |
100,000(1,000) | 100,000(1,000) |
※2期首利益剰余金円換算額
※3配当金支払時の円換算額
※4貸借差額
※3配当金支払時の円換算額
※4貸借差額
貸借対照表(単位:千円(千USD)) | |
---|---|
貸付金 240,000(2,400)※5
為替換算調整勘定 10,000(0)※8 |
資本金 240,000(2,400)※6
利益剰余金 10,000(0)※7 |
250,000(2,400) | 250,000(2,400) |
※5期末貸付金残高2,400×期末直物為替相場@100円/USD
※6期首資本金円貨建残高
※7株主資本等変動計算書の期末利益剰余金残高を転記
※8貸借差額(配当金支払時の為替相場と利益剰余金発生時
の為替相場の差額により発生)
※6期首資本金円貨建残高
※7株主資本等変動計算書の期末利益剰余金残高を転記
※8貸借差額(配当金支払時の為替相場と利益剰余金発生時
の為替相場の差額により発生)
【A社の会計処理】
X1年6月1日(配当金受取時)
X1年6月1日(配当金受取時)
借方 | 貸方 |
---|---|
現金預金 90,000千円(1,000千USD)※9 |
受取配当金 90,000千円(1,000千USD)※9 |
※9配当受取時の相場@90円×1,000千USD
配当受取時の為替相場で受取配当金を円換算します。
【連結処理】
連結取引の相殺仕訳
連結取引の相殺仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
受取配当金 90,000千円(1,000千USD)※9 |
支払配当金 90,000千円(1,000千USD)※9 |
※9配当収受の円価額
配当収受時の円価額で相殺処理を行います。
連結後のZ社の株主資本等変動計算書(利益剰余金部分のみ)及び貸借対照表は下記のようになります。
※簡略化のためZ社単体の受取配当金以外の利益剰余金は
ゼロと仮定します。
連結株主資本等変動計算書(利益剰余金部分) | |||||
---|---|---|---|---|---|
子会社 | 親会社 | 連結修正 | 連結ベース | ||
千USD | 千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |
期首残高 | (1,000) | (100,000) | (100,000) | ||
支払配当 | 1,000 | 90,000 | (90,000) | ||
受取配当 | (90,000) | 90,000 | |||
期末残高 | 0 | (10,000) | (90,000) | 0 | (100,000) |
期末の連結利益剰余金には、配当金支払時に発生した為替換算調整額10,000千円で調整された部分も含みます。この為替換算調整額については、子会社株式の売却又は清算まで残り、子会社株式の売却又は清算により損益として実現されます。
次のページでは、在外子会社へ販売した棚卸資産の未実現損益の為替換算について具体的にご紹介します。