小口現金の会計処理

【小口現金とは】
小口経費支払のために前渡ししている、若干の現金

【小口現金の勘定科目】
帳簿上:『小口現金』勘定
BS上 :『現金』勘定
小口現金とは、日々の小口経費の支払に充てるために前渡ししている、若干の現金のことを言います。

小口現金は、貸借対照表上では『現金』勘定に含まれますが、記帳時には通常、『小口現金』勘定に計上されます。
【小口現金の管理方法】
●小口現金への入金時
 会計帳簿上:『現金』から『小口現金』へ
        振替る仕訳を計上
 小口現金出納帳上:入金を記録


●小口現金からの出金時
 会計帳簿上:仕訳計上なし
 小口現金出納帳上:出金を記録


●一定期間の末時点
 会計帳簿上:期間中の出金の仕訳を
       一括計上
 小口現金出納帳上:記帳なし
『小口現金』の入出金は小口現金の担当者により『小口現金出納帳』に記録され、残高管理されます。

小口現金への入金は、その都、仕訳計上を行います。

それに対して小口現金からの出金は、出金の都度仕訳計上するのではなく、この『小口現金出納帳』の記録に基づいて、一定期間の期末に一括して仕訳を計上します。
【小口現金の補給方法の種類】
方法名称 補給方法&特徴

定額資金前渡制度
(インプレスト・システム)

一定期間ごとにその定額まで小口現金を補充
⇒補充できる上限額が明確
⇒実務で広く採用されている

臨時補給制度
(随時補給制度)

必要に応じて随時適当額を補充
⇒小口現金残高が絶えず変動
⇒管理面で不便
小口現金の補給方法には、定額の基準を設定して、一定期間ごとにその定額まで補充する『定額資金前渡制度(インプレスト・システム)』と、必要に応じて随時適当額を補充する『臨時補給制度(随時補給制度)』の2種類があります。

『定額資金前渡制度(インプレスト・システム)』は、小口現金の管理者が補充できる上限額が明らかであり、その金額が絶えず変動する『臨時補給制度(随時補給制度)』に比べて管理上有効な方法とされています。

また、『定額資金前渡制度(インプレスト・システム)』では、現金手元有高と領収書の合計額が、理論上、常に定額前渡額と一致するため、収支の正確性を検証しやすいです。

そのため、一般的には、『定額資金前渡制度(インプレスト・システム)』が広く実務で採用されています。
【参考文献】
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第15条1号
財務諸表等規則ガイドライン15-1-1
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-現金4⃣小口現金制度(定額資金前渡制度)を採用している』株式会社清文社
『小口現金』への入金は、他の取引と混合しないように、売上や債権回収での入金取引と区別して記帳管理した方がよいでしょう。

また、『小口現金』から支払を行える支出につては、あらかじめその範囲及び勘定科目を限定しておき、さらに、一定金額以上の支払は行わないといった規定を定めておきましょう。 【参考文献】
駒井伸俊(2018)『引きやすい!必ず見つかる!勘定科目と仕訳の事典/第3章3-1流動資産 小口現金(こぐちげんきん)』ソシム株式会社
下記では、定額資金前渡制度(インプレスト・システム)での小口現金の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-現金4⃣小口現金制度(定額資金前渡制度)を採用している』株式会社清文社
前提条件
A社は定額資金前渡制度(インプレスト・システム)での小口現金制度を採用しており、下記の取引を行った
・X1年4月1日に預金より小口現金に100千円振替えた
・X1年4月5日に小口現金より交通費10千円を支出した
・X1年4月15日に小口現金で消耗品5千円分を購入した
・X1年4月25日に取引先へのおみやげを購入し小口現金で
 20千円支払った
・小口現金からの出金に関する記帳は、毎月末に行っている
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(小口現金への振替時)
借方 貸方
小口現金 100千円※1 預金 100千円※1
※1小口現金への振替額
預金から小口現金勘定に振替えます。
② X1年4月30日(月末時)
借方 貸方
旅費交通費 10千円※2
消耗品費 5千円※3
交際費 20千円※4
小口現金 35千円※5
※2X1年4月5日交通費
※3X1年4月15日消耗品
※4X1年4月25日おみやげ
※54月に小口現金から支出した合計額
月末時点で、小口現金出納帳を基に、出金の仕訳を計上します。
次のページでは、外国通貨の会計処理について具体的にご紹介します。