給与所得の年末調整の流れ(源泉所得税確定額の計算方法の概要)

【ステップ1:従業員に申告書を配布】

実施時期:10月中旬~

≪配布申告書≫
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

・給与所得者の保険料控除申告書

・給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者
 の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除
 申告

・給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金
 等特別控除申告書 兼 (特定増改築等)住宅
 借入金等特別控除計算明細書

【ステップ2:従業員から必要書類回収】

実施時期:11月

≪必要書類≫
①全ての従業員が提出
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

②対象の従業員のみが提出
・中途入社の従業員の源泉徴収票

・給与所得者の保険料控除申告書

・給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者
 の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除
 申告

・給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金
 等特別控除申告書 兼 (特定増改築等)住宅
 借入金等特別控除計算明細書

・上記に関連する控除証明書

【ステップ3:所得税額算定】

実施時期:12月

≪算定方法≫
①給与総額の集計
1〜12月に支払った下記の給与所得を従業員別に集計
・給料
・俸給
・賃金
・賞与
・歳費
・その他これらの性質を有する給与

※退職所得は含まれない

※”支払”基準であるため、翌1月以降に支払
 われる給与等は1月1日~12月31日分であっ
 ても対象外

②源泉徴収社会保険料を集計
1〜12月に支払った下記の給与所得から源泉徴収した社会保険料を従業員別に集計
・健康保険料
・厚生年金保険料など

③源泉徴収所得税額を集計
1〜12月に支払った下記の給与所得から源泉徴収した所得税額を従業員別に集計

④給与所得を算定

給与所得額
=給与総額(①の総額)-(給与所得控除(※1)
+所得金額調整控除)(※2)

※1:給与所得控除額は『No.1410 給与所得
 控除』の表で決定

※2:所得税の計算上は特定支出控除も控除
 対象であるが年末調整の対象外
  ⇒確定申告が必要

⑤所得控除額を算定
下記15種類の該当の所得控除を適用

※従業員から回収する申告書及び証明書で
 特定

≪年末調整で調整可能≫
(1)基礎控除
(2)社会保険料控除(②の金額)
(3)配偶者控除
(4)配偶者特別控除
(5)扶養控除
(6)寡婦控除(2020年に廃止)
(7)ひとり親控除
(8)障害者控除
(9)勤労学生控除
(10)生命保険料控除
(11)地震保険料控除
(12)小規模企業共済等掛金控除

≪参考:確定申告が必要≫
(13)医療費控除
(14)寄付金控除
(15)雑損控除

⑥課税所得額の算定
課税所得額
=給与所得額(④の金額)
 -(所得控除額(⑤の金額))

※1,000円未満切り捨て

⑦所得税額の算定
所得税額
=(課税所得額×所得税率※3-控除額※3)

※3:所得税率と控除額は「所得税の速算表」
 で特定

⑧基準所得税額の算定
基準所得税額
=所得税額(⑦の金額)-税額控除額

税額控除は下記22種類がある

(1)配当控除

(2)分配時調整外国税相当額控除

(3)外国税額控除

(4)政党等寄附金特別控除

(5)認定NPO法人等寄附金特別控除

(6)公益社団法人等寄附金特別控除

(7)住宅借入金等特別控除

(8)住宅耐震改修特別控除

(9)住宅特定改修特別税額控除

(10)認定住宅等新築等特別税額控除

(11)試験研究を行った場合の所得税額の
 特別控除

(12)高度省エネルギー増進設備等を取得
 した場合の所得税額の特別控除

(13)中小事業者が機械等を取得した場合
 の所得税額の特別控除

(14)地域経済牽(けん)引事業の促進区
 域内において特定事業用機械等を取得した
 場合の所得税額の特別控除

(15)地方活力向上地域等において特定建物
 等を取得した場合の所得税額の特別控除

(16)地方活力向上地域等において雇用者の
 数が増加した場合の所得税額の特別控除

(17)特定中小事業者が経営改善設備を取得
 した場合の所得税額の特別控除

(18)給与等の支給額が増加した場合の所得
 税額の特別控除

(19)認定特定高度情報通信技術活用設備を
 取得した場合の所得税額の特別控除

(20)事業適応設備を取得した場合等の
 所得税額の特別控除

(21)革新的情報産業活用設備を取得した
 場合の所得税額の特別控除

(22)所得税額から控除される特別控除の
 特例

⑨復興特別所得税の加算
最終年調所得税額
=年調所得税額(⑧の金額)×102.1%
 (100%+復興特別所得税率)

※100円未満切り捨て

【ステップ4:還付および追加徴収の源泉徴収】

実施時期:12月又は1月

ステップ3の③と⑨の差額を、給与支払い時に精算

※精算しきれない金額は以降の給与で
 順次徴収

【ステップ5:年末調整後の源泉徴収税額納付】
期限:原則⇒翌1月10日、特例⇒1月20日
年末調整は、例年10月中旬~翌1月に欠けて実施します。

全体の手続きの流れとしては、まず、従業員へ申告書のフォーマットを配布することからスタートします。

従業員は、直近の扶養の状況や該当する所得控除の状況等、必要事項を申告書へ記載して、必要な証明書とともに会社に提出します。

年内に中途入社しており、以前の勤め先から源泉徴収票を入手している従業員については、その源泉徴収票についても提出が必要です。

会社は、従業員の申告書と証明書及び中途入社者の前職での源泉徴収票と、自社が支払った給与所得金額・源泉徴収社会保険料額をもとに、確定の所得税額を算定します。

その確定所得税額と、給与所得支給時に源泉徴収した所得税額の差額を、年末調整額として12月又は1月支給給与で精算します。

精算した年末調整額は、源泉徴収所得税の納付期限(原則⇒翌1月10日、特例⇒1月20日)に、通常の源泉徴収税とともに納付します。
次のページでは、扶養控除等(異動)申告書について具体的にご紹介します。