令和元年7月7日以前に契約した介護保険(保険料一時払以外)の支払保険料の会計処理
【支払保険料の会計処理】
契約者 | 被保険者 | 保険金の 受取人 |
支払保険料の会計処理 |
---|---|---|---|
法人 |
役員・ 使用人 |
法人 |
支払保険料の内、損金算入額のみを保険料等で損金計上。
支払額との差額は、前払保険料等に計上。 |
役員・ 使用人 (普遍的加入である) |
役員・ 使用人 の遺族 |
支払保険料の内、損金算入額のみを福利厚生費等で損金計上。
支払額との差額は、前払費用等に計上。 |
|
役員・ 使用人 (普遍的加入でない) |
役員・ 使用人 の遺族 |
被保険者の給与となる
※役員報酬の場合は定期同額給与 |
法人が自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者として、令和元年7月7日以前に契約した介護保険の内、一時払以外の支払保険料の会計処理は、被保険者となる対象者の範囲と、保険金又は給付金の受取人が誰かにより異なります。
保険金又は給付金の受取人が法人である場合、支払保険料の内『直審4-52(例規)直審3-77平成元年12月16日法人又は個人事業者が支払う介護費用保険の保険料の取扱いについて』で規定されている損金計上額までを、保険料等で損金計上し、残額は積立保険料として前払保険料等で資産計上します。
保険金又は給付金の受取人が被保険者である場合、支払保険料の内、同じく上記の規定に基づいて算定した損金計上額までを、福利厚生費等で損金計上し、残額は積立保険料として前払費用等で資産計上します。
ただし、保険金又は給付金の受取人が被保険者の遺族である場合で、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合は、支払保険料は、当該役員又は使用人に対する給与となります。
このとき、被保険者が役員で、法人が負担する保険料が毎月おおむね一定である場合は、定期同額給与となります。
特定の役員または部課長その他特定の使用人のみを被保険者とした加入でないことを『普遍的加入』といいます。
普遍的加入の詳細な要件については、下記のページをご参照下さい。
保険契約における普遍的加入とは
ただし、保険金又は給付金の受取人が被保険者の遺族である場合で、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合は、支払保険料は、当該役員又は使用人に対する給与となります。
このとき、被保険者が役員で、法人が負担する保険料が毎月おおむね一定である場合は、定期同額給与となります。
特定の役員または部課長その他特定の使用人のみを被保険者とした加入でないことを『普遍的加入』といいます。
普遍的加入の詳細な要件については、下記のページをご参照下さい。
保険契約における普遍的加入とは
【各期間の保険料損金算入額・資産計上額の算定方法】
対象期間 | 会計処理 |
---|---|
被保険者が60歳になるまで |
■損金計上額 支払の対象となる期間に応じた保険料×50% ≪仕訳例≫ (保険料)xxx (現金預金)xxx (前払保険料)xxx |
被保険者が60歳になった後 |
■損金計上額(①+②) ①支払の対象となる期間に 応じた保険料 ②前払取崩額 =60歳到達時点の保険料資産 計上累計額÷15年 ≪仕訳例≫ (保険料)xxx (現金預金)xxx (前払保険料)xxx |
各期における支払保険料の損金計上額の算定方法は、被保険者が60歳に達するまでと、達した後で異なります。
被保険者が60歳に達するまでの期間においては、支払保険料の内、支払の対象となる期間に応じた保険料に50%を掛けた金額を損金として計上し、残額は前払保険料等で資産計上します。
ここで『支払の対象となる期間に応じた保険料』とされているため、数年分の保険料をまとめて支払った場合等には、いったんその保険料の全額を前払金として資産計上し、その支払の対象となった期間の経過に応じて、上記の取扱いを行います。
そして、被保険者が60歳に達したのちの期間においては、その期間における『支払の対象となる期間に応じた保険料』の全額を損金として計上すると同時に、60歳到達時点の保険料資産計上額を15年で除した金額を取崩し、損金計上します。
被保険者が60歳に達するまでの期間においては、支払保険料の内、支払の対象となる期間に応じた保険料に50%を掛けた金額を損金として計上し、残額は前払保険料等で資産計上します。
ここで『支払の対象となる期間に応じた保険料』とされているため、数年分の保険料をまとめて支払った場合等には、いったんその保険料の全額を前払金として資産計上し、その支払の対象となった期間の経過に応じて、上記の取扱いを行います。
そして、被保険者が60歳に達したのちの期間においては、その期間における『支払の対象となる期間に応じた保険料』の全額を損金として計上すると同時に、60歳到達時点の保険料資産計上額を15年で除した金額を取崩し、損金計上します。
【参考文献】
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第5章7』一般財団法人大蔵財務協会
直審4-52(例規)直審3-77平成元年12月16日法人又は個人事業者が支払う介護費用保険の保険料の取扱いについて
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第5章7』一般財団法人大蔵財務協会
直審4-52(例規)直審3-77平成元年12月16日法人又は個人事業者が支払う介護費用保険の保険料の取扱いについて
介護保険に関する税制は、たびたび改正されており、適用される会計処理は、その介護保険を契約したタイミングや、払込方法、解約返戻金の有無により異なります。
介護保険にに関する税制の改正履歴と、適用される会計処理の総まとめは、下記のページをご参照ください。
介護保険の税制の改正履歴と会計処理の総まとめ
介護保険にに関する税制の改正履歴と、適用される会計処理の総まとめは、下記のページをご参照ください。
介護保険の税制の改正履歴と会計処理の総まとめ
下記では、令和元年7月7日以前に契約した介護保険(保険料一時払以外)の支払保険料の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。
【参考文献】
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第5章7Q&A45』一般財団法人大蔵財務協会
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第5章7Q&A45』一般財団法人大蔵財務協会
前提条件 |
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A社は全従業員に対して、下記の条件で介護保険を契約している。
・平成22年3月31日に契約を開始した ・保険加入時の被保険者の年齢は55歳であった ・毎年3月31日に1年分の保険料2,000千円を後払いする ・保険金の受取人は法人である |
① 平成23年3月31日(保険料支払時)
借方 | 貸方 |
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保険料 1,000千円※2
前払保険料 1,000千円※3 |
現金預金 2,000千円※1 |
※1支払保険料
※2支払保険料2,000千円×50%
※3支払保険料2,000千円-当期保険料計上額1,000千円
※2支払保険料2,000千円×50%
※3支払保険料2,000千円-当期保険料計上額1,000千円
支払保険料に50%を乗じた金額を当期の損金として計上し、残額は前払保険料として資産計上します。被保険者が60歳に到達する平成27年3月31日まで同様の会計処理を行います。その結果、平成27年3月31日時点の保険料資産計上額は【1,000千円×5年=5,000千円】となります。
② 平成28年3月31日(保険料支払時)
借方 | 貸方 |
---|---|
保険料 2,333千円※6 |
現金預金 2,000千円※4
前払保険料 333千円※5 |
※4支払保険料
※5保険料資産計上累計額5,000千円÷15年
※6当期分支払保険料2,000千円+前払保険料取崩額333千円
※5保険料資産計上累計額5,000千円÷15年
※6当期分支払保険料2,000千円+前払保険料取崩額333千円
当期分支払保険料を全額損金計上すると共に、資産計上した保険料累計額を15年で除した金額を、前払保険料から取崩し損金の額に算入します。以降、15年が経過する迄、同様の会計処理を行います。
次のページでは、令和元年7月7日以前に契約した介護保険(保険料一時払)の支払保険料の会計処理について具体的にご紹介します。