年金支払開始日前に支払われる個人年金保険契約の契約者配当の会計処理

【年金支払開始日前に支払われる個人年金保険契約の契約者配当の会計処理】
原則/特例 会計処理

原則

通知を受けた事業年度の益金の額に算入
 
 【仕訳イメージ
     (積立配当方式)】
 (配当金積立金)XXX 
       (雑収入)XXX

※契約者配当に付される利子
 の額は、その通知を受け
 
 日の属する事業年度の益金
 に算入

※契約者配当を一時払保険料
 (買増年金積立保険料)に充
 
 当した場合は、年金受取時
 等の取り崩し時まで資産
 
 計上

特例
※下記の要件をどちらも満た
 す場合のみ適応可

①年金受取人が被保険者

②法人が契約者配当の支払請
 求をしないことが被保険
 
 との契約で明らか

法人の益金の額には算入しなくてもよい
個人年金保険の保険料の額は、保険事故の発生割合、保険料の運用益、生命保険会社の経費の額の見積もり等の予定率(基礎率)に基づいて決定されています。

実際の運用状況がこれらの予定を上回った場合、保険会社はその乖離分を契約者に分配することで調整します。

このような分配を、契約者配当といいます。
個人年金保険の契約者配当の会計処理は、その支払のタイミングが年金支払開始日前か以後かで異なります。

年金支払開始前に支払いを受ける契約者配当については、基本的には支払通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入します。

ただし、年金受取人が被保険者であり、かつ、法人がこの契約者配当の支払い請求をしないでその全額を年金支払開始日迄積立てておくことが、法人と被保険者との間の契約(労働協約等)により明らかな場合は、この契約者配当を法人の益金の額に算入しなくてもよいとされています。
年金支払開始前に支払いを受ける契約者配当は、基本的に保険契約者が受取人となりますが、生命保険会社に積み立てられて年金支払開始日に、責任準備金に充当され、以降、年金受取人への年金として支払われることが予定されています。

ただし、契約上は保険契約者が支払請求をすることもできるため、原則の会計処理では、保険契約者である法人の益金としなければならないとされています。

しかしながら、年金受取人が被保険者で、かつ、法人がこの契約者配当金の支払い請求をしないでその全額を年金支払開始日迄積立てておくことが、法人と被保険者との間の契約(労働協約等)により明らかな場合については、法人がその支払いを受けることなく、年金支給開始日にその保険契約の責任準備金に充当され、被保険者に対する増加年金としての所得となるため、例外的に法人の益金としないことが認められます。
なお、個人年金保険は、危険保険料の割合が僅かであること、及び、年金支払日までに法人の収益とならない多額の特別配当があることから、養老保険等で認められている契約者配当を資産計上している保険料から控除する会計処理は、認められていません。
契約者配当の額に付される利息の額については、益金に算入しない場合を除き、その通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入します。

また、益金の額に算入した契約者配当を一時払保険料(買増年金積立保険料)に充当した場合は、年金の受取時等、資産計上した保険料等を取り崩すまでは、資産に計上します。
下記では、年金支払開始日前に支払われる個人年金保険契約の契約者配当の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章1⃣』税務研究会出版局
前提条件
A社は全従業員を対象に個人年金保険を契約している。
・令和2年3月31日に、契約者配当の支払1,000千円の通知を
 受けた
・契約者配当については、配当積立金として積立てられる
・年金受取人は、法人である
・年金の支払開始日は令和20年4月1日である
【原則法】
① 令和2年3月31日(契約者配当金通知受取時)
借方 貸方
配当積立金 1,000千円※1 雑収入 1,000千円※1
※1契約者配当金通知額
契約者配当金の通知額を配当積立金で資産計上すると同時に、相手勘定で雑収入を益金計上します。
次のページでは、年金支払開始日に支払われる個人年金保険契約の特別配当の会計処理について具体的にご紹介します。