年金支払開始日に支払われる個人年金保険契約の特別配当の会計処理

【年金支払開始日に支払われる個人年金保険契約の特別配当の会計処理】
年金受取人 会計処理

法人

■原則
通知を受けた事業年度の益金の額に算入

 【仕訳イメージ】
 (配当積立金)XXX 
      (雑収入)XXX

※益金の額に算入した契約者
 配当の額を一時払保険料
 
 充当した場合は、取り崩す
 迄資産に計上

■例外
生命保険会社から年金として支払うこととしているもので、年金受取人に支払方法の選択権がない場合は、通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入しないことができる

※原則・例外いずれも、契約
 者配当に付される利子の
 
 は、その通知を受けた日の
 属する事業年度の益金
 
 算入

被保険者

法人の益金の額には算入しない
個人年金保険の保険料の額は、保険事故の発生割合、保険料の運用益、生命保険会社の経費の額の見積もり等の予定率(基礎率)に基づいて決定されています。

実際の運用状況がこれらの予定を上回った場合、保険会社はその乖離分を契約者に分配することで調整します。

このような分配を、契約者配当といいます。
個人年金保険の契約者配当の会計処理は、その支払のタイミングが年金支払開始日前か以後かで異なり、さらに、年金支払開始日以後に支払いを受ける個人年金保険の契約者配当には、年金支払開始日に支払われる特別配当と、年金支払期間中の契約者配当があり、それぞれ会計処理が異なります。
特別配当は、通常、10年以上の長期継続契約に対して支払われるもので、個人年金保険の場合は年金支払開始日に割り当てられ、その受取人は年金受取人とされています。

そのため、年金受取人が法人である場合は、原則として、その支払通知があった日の属する事業年度の益金の額に算入します。

ただし、年金受取人が法人であっても、保険会社が年金として支払うこととしており、年金受取人に支払方法の選択の余地が無い場合は、通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入しなくてもよいとされています。

特別配当は、基本的には年金(契約年金又は増加年金)として支払うこととされていますが、それ以外の支払方法の選択オプションが用意されていない商品と、用意されている商品があります。

選択オプションが無く、年金としてのみ支払うとされている場合であっても、その旨が保険約款で明確にされいているわけではありません。

そのため、原則法では、その支払通知があった日の属する事業年度の益金の額に算入するとされています。

ただし、事業方法書にその記載があり、年金受取人が年金として支払いを受ける方法以外を選択する余地の無い特別配当については、通知のあった日の属する事業年度の益金の額に算入しなくともよいとされています。

年金受取人が被保険者である場合は、被保険者の雑所得の収入金額となり、契約者である方針には課税関係は生じません。
上記により、益金の額に算入した契約者配当の額を一時払保険料に充当した場合は、年金の支払開始等で取り崩すまで資産に計上します。
契約者配当の額に付される利息の額については、原則・例外いずれの会計処理を適用している場合であっても、その通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入します。
下記では、年金支払開始日に支払われる個人年金保険契約の特別配当の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章1⃣』税務研究会出版局
前提条件
A社は全従業員を対象に個人年金保険を契約している。
・令和2年3月31日に、特別配当の支払1,000千円の通知を受
 けた
・契約者配当については、配当積立金として積立てられる
・年金受取人は、法人である
・年金の支払開始日は令和2年3月31日である
【原則法】
① 令和2年3月31日(契約者配当通知受取時)
借方 貸方
配当積立金 1,000千円※1 雑収入 1,000千円※1
※1契約者配当金通知額
原則法の場合は、契約者配当の通知額を配当積立金で資産計上すると同時に、相手勘定で雑収入を益金計上します。
次のページでは、年金支払期間中に支払われる個人年金保険契約の契約者配当の会計処理について具体的にご紹介します。