個人年金保険契約の契約者配当の会計処理の概要
【契約者配当とは】
契約者配当とは、契約者に分配される、保険料算定の際の予定率と実績の率の差により生じた余剰金をいう。契約者配当の財源は、下記の3つが挙げられる。
①利差益:保険料の運用利回りが想定を上
回った場合の差
②死差益:実際死亡率が予定死亡率より低
い場合の差
③費差益:実際事業費用が予定事業費より
少ない場合の差
契約者配当とは、契約者に分配される、保険料算定の際の予定率と実績の率の差により生じた余剰金をいう。契約者配当の財源は、下記の3つが挙げられる。
①利差益:保険料の運用利回りが想定を上
回った場合の差
②死差益:実際死亡率が予定死亡率より低
い場合の差
③費差益:実際事業費用が予定事業費より
少ない場合の差
個人年金保険の保険料の額は、保険事故の発生割合、保険料の運用益、生命保険会社の経費の額の見積もり等の予定率(基礎率)に基づいて決定されています。
実際の運用状況がこれらの予定を上回った場合、保険会社はその乖離分を契約者に分配することで調整します。
このような分配を、契約者配当といいます。
実際の運用状況がこれらの予定を上回った場合、保険会社はその乖離分を契約者に分配することで調整します。
このような分配を、契約者配当といいます。
【個人年金保険の契約者配当の会計処理】
発生時期 | 要件 | 会計処理 |
---|---|---|
年金支払開始日前 |
下記の要件をどちらも満たす場合
①年金受取人が 被保険者 ②法人が契約者配 当金の支払請求 をしないことが 被保険者との契 約で明らか |
法人の益金の額には算入しなくてもよい |
上記以外 | 通知を受けた事業年度の益金の額に算入 | |
年金支払開始日 に支払われる特別配当 |
年金の受取人が法人 |
■原則
通知を受けた事業年度の益金の額に算入 ■例外 生命保険会社から年金として支払うこととしているもので、年金受取人に支払方法の選択権がない場合は、通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入しないことができる |
年金受取人が被保険者 | 法人の益金の額には算入しない | |
年金支払期間中 の契約者配当 |
年金の受取人が法人 | 通知を受けた事業年度の益金の額に算入 |
年金受取人が被保険者 | 法人の益金の額には算入しない |
個人年金保険の契約者配当については、その支払を受ける時期によって会計処理が異なります。
年金支払開始前に支払いを受ける契約者配当は、基本的には、生命保険会社に積立てられて年金支払開始日に責任準備金に充当され、以降の増加年金となることが予定されています。
そのため、この場合の契約者配当は、法人が年金の受取人である場合には年金受取時の収益になり、被保険者が年金の受取人である場合は法人に課税関係が生じないようなイメージを持ってしまうかもしれません。
しかしながら、保険契約上は、契約者である法人が支払請求することで、年金支払開始日前に契約者配当金の支払いを自ら受けることができる法律関係となっていること、個人年金保険の契約者配当金の原資は主に受取利息とも言える利差益であることから、支払通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入する方法が、原則的なルールとなっています。
ただし、年金受取人が被保険者であり、かつ、法人がこの契約者配当の支払い請求をしないでその全額を年金支払開始日迄積立てておくことが、法人と被保険者との間の契約(労働協約等)により明らかな場合は、この契約者配当を法人の益金の額に算入しなくてもよいとされています。
そのため、この場合の契約者配当は、法人が年金の受取人である場合には年金受取時の収益になり、被保険者が年金の受取人である場合は法人に課税関係が生じないようなイメージを持ってしまうかもしれません。
しかしながら、保険契約上は、契約者である法人が支払請求することで、年金支払開始日前に契約者配当金の支払いを自ら受けることができる法律関係となっていること、個人年金保険の契約者配当金の原資は主に受取利息とも言える利差益であることから、支払通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入する方法が、原則的なルールとなっています。
ただし、年金受取人が被保険者であり、かつ、法人がこの契約者配当の支払い請求をしないでその全額を年金支払開始日迄積立てておくことが、法人と被保険者との間の契約(労働協約等)により明らかな場合は、この契約者配当を法人の益金の額に算入しなくてもよいとされています。
なお、年金支払開始前に支払いを受ける契約者配当の額に付される利子の額については、上記の契約者配当の額を益金の額に算入しない場合を除き、その通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入します。
年金支払開始前に支払いを受ける契約者配当の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
年金支払開始日前に支払われる個人年金保険契約の契約者配当の会計処理
年金支払開始日前に支払われる個人年金保険契約の契約者配当の会計処理
個人年金保険が10年以上の長期継続契約である場合、通常、年金支払開始日に特別配当が支払われます。
特別配当の受取人は年金受取人とされています。
そのため、年金受取人が法人である場合は、原則として、その支払通知があった日の属する事業年度の益金の額に算入します。
ただし、年金受取人が法人であっても、年金支払開始日ではなくその後の期間において年金として支払うことを保険会社が決定しており、年金受取人に支払方法の選択の余地が無い場合は、通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入しなくてもよいとされています。
年金受取人が被保険者である場合については、被保険者の雑所得の収入金額となり、契約者である法人には課税関係は生じません。
年金支払開始日に支払いを受ける特別配当の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
年金支払開始日に支払われる個人年金保険契約の特別配当の会計処理
年金支払開始日に支払われる個人年金保険契約の特別配当の会計処理
年金支払期間中に支払われる契約者配当については、年金支払原資である責任準備金の運用益そのものであるため、年金受取人にとっては、まさに受取利子そのものであるといえます。
そのため、年金受取人が法人である場合は、その通知があった日の属する事業年度の益金の額に算入します。
年金受取人が被保険者である場合は、法人に課税関係は生じません。
年金支払期間中に支払われる契約者配当の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
年金支払期間中に支払われる個人年金保険契約の契約者配当の会計処理
年金支払期間中に支払われる個人年金保険契約の契約者配当の会計処理
なお、年金支払開始日以後に益金の額に算入した契約者配当を一時払保険料(買増年金積立保険料)に充当した場合は、年金の受取時等、資産計上した保険料等を取り崩すまでは、資産に計上します。
また、年金支払開始日以後に支払われる契約者配当の額に付される利子の額については、その通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入します。
【参考文献】
法人が契約する個人年金保険に係る法人税の取扱いについて(直審4-19)
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章1⃣』税務研究会出版局
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第3章3』一般財団法人大蔵財務協会
法人が契約する個人年金保険に係る法人税の取扱いについて(直審4-19)
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章1⃣』税務研究会出版局
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第3章3』一般財団法人大蔵財務協会
次のページでは、年金支払開始日前に支払われる個人年金保険契約の契約者配当の会計処理について具体的にご紹介します。