個人年金保険の年金受取りの会計処理(年金受取人が法人・確定年金の場合)

【個人年金保険の年金受取りの会計処理(年金受取人が法人・確定年金の場合)】

その年金の支払通知を受けた日の属する事業年度に、受取年金額から、下記の計算で算定した、支払保険料の資産計上額及び年金支払開始日に責任準備金に充当された契約者配当金等の額の合計額(=年金積立保険料合計額)の取崩額を控除した金額を、益金計上。

『取崩額=年金積立保険料合計額×受取年金額
     ÷(年金年額×保証期間)』

【仕訳イメージ】
(現金預金)XXX (保険料積立金)XXX
        (配当金積立金)XXX
        (雑収入)XXX
年金受取人が法人である個人年金保険の場合、死亡給付金の受取人も法人であれば支払保険料の全額が、死亡給付金の受取人が被保険者であれば支払保険料の90%が保険積立金等で資産計上されています。

また、場合によっては、契約者配当金についても、配当金積立金として資産計上されており、年金支払開始日に年金の支払い原資として責任準備金に充当されます。

年金支払開始日におけるこれらの資産計上額を、『年金積立保険料の額』といいます。

年金支払開始日以降で、実際に年金の支払を受ける際には、年金受取額とそれに対応する『年金積立保険料の額』の取崩額との差額を、その年金の支払通知を受けた日の属する事業年度に益金として計上します。

個人年金保険には、異なる複数の年金の支払方法があり、その支払方法によって、この取崩額が異なります。

年金支払方法の内、あらかじめ定められた保証期間中、被保険者の生死に関わらず年金が支払われる方法を、『確定年金』と呼びます。

『確定年金』においては、年金の支払額と期間が事前に確定しているため、『年金積立保険料の額』の取崩額は、『年金積立保険料の額』を、年金年額に保証期間の年数を掛けて算定した年金支払総額で除した値に、受取年金額を掛けて算定します。
下記では、年金受取人が法人で、確定年金の場合の個人年金保険の年金受取りの会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第4章2⃣(2)』税務研究会出版局
前提条件
A社は全従業員を対象に個人年金保険を契約している。
・死亡給付金と年金の受取人はいずれも法人である
・令和2年3月31日に年金支払開始日が到来してた
・年金支払開始日に保険積立金10,000千円を資産計上して
 いた
・被保険者の生死に関わらず、令和2年3月31日以降、毎年
 3月31日に1,200千円の年金が10年間支払わ
 れる
①令和2年3月31日(年金支払開始日)
借方 貸方
現金預金 1,200千円※1 保険積立金 1,000千円※2
雑収入 200千円※2
※1支払われた年金額
※2年金支払開始日の保険積立金残高10,000千円
  ÷(毎年の年金支払額1,200千円×保証期間10年)
  
  ×年金受取額1,200千円
※3貸借差額
年金支払開始日の保険積立金残高を、年金支払総額で除して、受取った年金額を掛けた取崩額を保険積立金から取崩し、受取年金額との差額を雑収入に計上します。
次のページでは、個人年金保険の年金受取りの会計処理(年金受取人が法人・保証期間付終身年金の場合)について具体的にご紹介します。