傷害保険を払済傷害保険へ変更した場合の会計処理

【払済保険とは】

払済保険とは、保険料の払い込みを中止して、その時点での解約返戻金を基に「保険期間」が同じ生命保険を購入する方法をいう。

保険期間は変更前の保険と同じだが、基本的には、保障額が下がってしまう。
払済保険とは、保険契約者が経済的事情等で保険料払込が不可能になった場合などに、その時点での解約返戻金を一時払保険料に充当することで、「保険期間」が同じ生命保険を購入する方法をいいます。

払済保険に変更することで、支払いをストップしても、保険期間にわたり保障を継続することができますが、保障額が下がってしまうことが一般的です。
【傷害保険を払済傷害保険へ変更した場合の会計処理】
原則/特例 会計処理

原則

変更時点の契約返戻金相当額と保険料の資産計上額の差額を、変更日の属する事業年度の益金又は損金の額に算入。

変更後の傷害保険に対して契約返戻金相当額で保険期間の全部の保険料を一時払いしたものとして会計処理。
 
 【仕訳イメージ】
 (前払保険料)XXX (雑収入)XXX

特例

下記の条件を全て満たす場合は、変更前の保険契約に係る資産計上額継続可能

 ①同種の払済保険への変更で
 ある
  (傷害保険から傷害保
 険への変更)

 ②特例が付されてない保険契
 約である

 ③既従の資産計上額を保険事
 故の発生又は解約失効
  等に
 より契約が終了するまで計
 上している
既契約の傷害保険を、同じく傷害保険の払済保険に変更した場合は、原則として、変更時点における解約返戻金相当額とその保険契約に係る資産計上額の差額を、払済保険に変更した日の属する事業年度の益金又は損金の額に算入する洗替経理処理を行います。

そして、変更時点において変更後の保険契約に対して契約返戻金相当額で保険期間の全部の保険料を一時払いしたものとして、変更後の保険契約の種類に応じて会計処理を行います。

この時、変更後の保険契約は、変更時の元契約の残存保険期間を保険期間とし、変更時の被保険者の到達年齢を加入年齢とします。

ただし、既に加入している生命保険の保険料の全額(特約に係る保険料の額を除く。)が役員又は使用人に対する給与となる場合は、この限りではありません。

また、変更後の保険契約が既契約と同じく傷害保険(特約が付加されていないものに限る)であり、既従の資産計上額を保険事故の発生又は解約失効等により契約が終了するまで計上している場合は、その会計処理が容認され、上記の洗替処理及び一括払処理を行わなくてもよいとされています。

2019年7月8日改正前迄は、定期保険及び第三分野保険はこの特例処理の適用対象とされていませんでしたが、2019年7月8日改正により対象として追加されています。
【参考文献】
法人税基本通達9-3-7の2
平成14年2月15日付課法2-1「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明について(情報)
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第1章2(2)』一般財団法人大蔵財務協会
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章2⃣』税務研究会出版局
下記では、傷害保険を払済傷害保険へ変更した場合の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第1章2(1)Q&A16』一般財団法人大蔵財務協会
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章2⃣』税務研究会出版局
前提条件
A社は全従業員を対象に傷害保険を契約している。
・令和2年3月31日に既契約の傷害保険を払済傷害保険に変更
 した
・払済保険への変更の会計処理は特例法を適用する
① 令和2年3月31日(払済傷害保険への変更時)
仕訳なし
特例の会計処理の要件を満たしている場合は、既契約の傷害保険の資産計上額がそのまま継続されるため、会計処理は行いません。
次のページでは、払済保険へ変更した傷害保険を復旧する場合の会計処理について具体的にご紹介します。